20・御領主様のお宅訪問
2章の章タイトルはネタバレ防止の為、後で付けます。
ただ、2章は大分長いのでいつになるかは未定です。
「ナスカよ。人間は小さな土地に小さな家を建てて暮らしていると聞いていたが、この門とやらの先に家が見えないぞ、どういう事なのだ?」
「ああ。この家だけは別だ。この国の三公爵の一人で広大な領地を治める領主の家だからな」
「家は庭の竹林の先にあるが、家自体も豪邸だぞ」
「街の中心にあった一番大きな建物に寄っただろ、あの建物が領都の庁舎なのだが、あそこにも併設された別宅を持ってる人だ」
「ほう。なんか偉そうな奴なのだな。嫌な奴なのか?」
「いや、偉ぶらないし良い人だぞ」
「一応偉い人ではあるから余り失礼な事は言うなよ。お前の都民プレートの登録もその人にお願いするんだからな」
「うむ。わかったのだ」
俺達は今、街外れにある領主の本宅を訪れている。
人の街を移動するには身分を証明する為のプレートが必要になる。
身分証明は街を訪れた際にも、街を出る時にも必要だ。
既に成人しているマリとメソは冒険者ギルドに登録していて、冒険者プレートを持っている。この冒険者プレートも身分を証明するものだ。
まだギルドに登録出来ない俺は、出身地を示す市民プレートを発行してもらっている。
俺の村民プレートは最初に訪れた人間の村であるファスルト村で発行してもらった物だが、ファスルト村はこの領主の系統、部下に当たる男爵が治める土地で、領土的にはセコードと同じマルサン公爵領である。
なので何の問題もなく身分を証明する事が出来る。
初めて人間の街を訪れたタツキに都民プレートを発行してもらう事も、今回この街を訪れた理由の一つだ。
身分を証明出来るプレートがないと、今後、人の治める街を移動するのに非常に不便になってしまう。
タツキの実年齢は48歳なのでギルド登録が可能なのだが、見た目は俺と同年代にしか見えない。ギルドでの説明が難しいので領主に頼む事にした。
種族の成長速度が遅いので仕方ないのだ。
俺達は真っ直ぐにこの本宅に来たわけではない。
セコードの街を訪れた俺達はまず最初に冒険者ギルドに向かった。ルルの従魔登録をする為である。
何度もこの街を訪れていて、領主とも繋がりがある俺達は難なく入管を抜けられた。タツキも俺達の連れという事で問題はなかった。
冒険者ギルドでルルをマリの従魔として登録し、次に領主に会う為に庁舎を訪れた。
庁舎で今日はまだ本宅の方だと聞き、この街外れまでやって来た訳である。
「領主様に取り次いで頂けますか?」
見知った門番にそう問いかけると、通ってよいという事なので門をくぐる。
思っていた以上に俺達は信頼されている様である。
門を抜け、竹林を左手に見ながらグルリと回り込むと屋敷が見えてくる。
春には立派な筍が採れる竹林で、俺も何度かご馳走になっている。
竹林から屋敷までも距離があり、敷地中央の丁度馬車1台が通れる幅の砂利道を歩く。
道の両側には、庭の家庭菜園と呼ぶには余りに広大な畑が広がっている。
畑では3人の庭師とは呼べない百姓姿の男が作業中だった。
その内の一人が、作業の手を止めて近寄ってくる。
「おう!ナスカ!」
「久しぶりだな。マリとメソも良く来た」
「お久しぶりです。相変わらず野良仕事ですか御領主様」
「御領主?領主とは貴族であろう、この者が領主なのか?」
「ああ、まあ驚くのも無理ないが、こういう人なのだ領主様は」
どっからどう見ても普通の百姓にしか見えない格好だ。
タツキが驚くのも無理はないが、よくよく見れば百姓とは思えぬがっしりとした体格である。
身長は190センチを超え、筋肉質で引き締まった身体。精悍な顔に金髪の壮年の男なのだが、服装が全てを台無しにしていた。
「この子はタツキといいます。山育ちなので口の利き方にはご容赦下さい」
「今日は領主様にお願いがあって参りました」
「ああ、堅苦しい事はいいから先に屋敷に行っててくれ」
「道具を片付けたら、私も直ぐに行く」
そう言って小走りで畑に戻って行く。
その後ろ姿からも、貴族っぽさや威厳は全く感じられない。
先に屋敷に着くと、執事から応接間に案内される。俺達は各々席に着いて出された紅茶を飲みながら領主を待つ。
「おう!で頼みってのは何だ?」
流石に着替えてはきたけれど、フランクな態度は変わらない。格好だけ領主らしくなっても台無しだな。
正月の休みボケがなかなか抜けない。




