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アルク

アルク・ホワイトについてのお話になります


ただ【彼女の名はエミリー】と【クリス】をまだご覧になっていない方は、先にご覧いただいた方が理解が深まると思います!

 ホワイト家の長男、アルク・ホワイト

 

 彼はクリスの2歳年上で、双子とは10歳も離れた兄になる。その為、エミリーが家に迎えた日のことをより鮮明に記憶しているのは、兄弟の中ではアルクが一番だった。



 10月26日の夜10時頃だった

 弟のヘンリーは部屋で既に就寝していたが、アルクは日中に読みかけだった本を布団の中で読んでいた。少年だった彼には伝記物の結末が気になって仕方がなかった。

 しかし、部屋の外から何やら慌ただしい音と声が聞こえてきた。両親の声だが…何か様子が変だ。イレギュラーなことが起きたことだけはわかった。

 興味と不安の感情が入り混じったアルクは、音を立てないようそっと部屋から出て、ドアの隙間からリビングを覗いた。


 衝撃だった。母フローラが赤ん坊を抱き、父ケビンは嬉しそうな眼差しで2人を見つめていた。

『赤ちゃんが…生まれたんだ!』

喜びでアルクも赤ちゃんを見にいこうとする瞬間だった。


「大変だけど、お腹の子とも仲良くしてね」


フローラが赤ん坊に語りかけた声が聞こえた。

『お腹の…子?』

アルクの頭の中は混乱した。お腹にはまだ赤ん坊がいることが母の言葉から推測できた。さらに両親から事前に伝えられたことを思い出した。


【春には赤ちゃんと出会えるよ】


 これが一番の矛盾だった。春どころか今はまだ秋だ。いくら何でも早すぎる。

『あの赤ちゃんは一体…』

混乱したアルクはリビングには入らず、そのまま寝室へと戻った。その日の夜は本の続きなど気になるはずがなかった。布団の中で赤ん坊や両親のことで悩んでしまい、その日の夜はなかなか寝付けなかった。


 翌朝、アルクは寝坊した。あれは夢だったかと思い急いでリビングに向かうと…そこにはソファに腰掛けた母親と抱かれた赤ん坊、そして先に起床したクリスの姿もあった。夢ではなかったのだ。


「お兄ちゃん見て!赤ちゃんだよ!!僕たちの妹だって、可愛いね〜」


 クリスは満面の笑みで妹を見つめていたが、アルクは戸惑った。昨日の話が夢ではないのならば、この赤ん坊は本当の妹ではない可能性が高いからだ。アルクが考えているところに、クリスはフローラに要望した。


「ママ!お兄ちゃんが起きたから教えてよ!!」


 これだけ聞いてもアルクには何のことだかわからなかったが、母は「もちろん良いわよ」と伝え

2人をソファに座らせ話を始めた。


「赤ちゃんがどうして早く家に来たか…よね?」

「うん」


 アルクはハッとした。クリスも赤ん坊が生まれるのは春だと覚えていて、それを自分が起きる前に質問したとわかったのだ。


かあさん、俺も同じ質問をしようと思ったよ」

「そう。アルクも春に赤ちゃんが生まれることを覚えていたのね?」

「うん」


 フローラは2人の顔をじっと見つめて伝えた。


「この子は春に生まれる子とは違う子なの…まだお腹の中に赤ちゃんがいるわ」


【違う子】という表現を使い、春に生まれる子については偽っていないことを伝えた。


「ごめんね、アルク、クリス。パパとママが春と言ったのにまだ秋だから、嘘をついたと思って混乱しちゃったよね?」


 これだけではアルクは到底納得できない。お腹に子がいることだけはわかったが、じゃあ目の前にいる赤ん坊は何なのだと…無表情で母親を見つめた。


「な〜んだ、良かった!パパもママも嘘つきじゃなかったんだね!」

「もちろん!そしてこの子は、私達ホワイト家の新しい家族よ」


 アルクと違い隣にいたクリスはフローラの返答で満足したようだった。またクリスの言葉でフローラも喜んでいた。聞きたいことも多いが、これ以上悩みたくないのも本心だ。

 クリスに誘われるがまま、アルクも赤ん坊を顔を覗き込んだ。目がクリクリして心から愛らしいと思った。


「…可愛いな」

「でしょう?もう天使みたい!」


妹を見つめる2人の姿にフローラも幸せでいっぱいだった。


「妹を守ってね、お兄ちゃんたち」




 エミリーがホワイト家に来てから12年になる年のことだった。アルクは騎士団の入団試験に見事合格し、大学卒業後は騎士として任務を任されることが決まった。

 アルクが家族に入団が決定したのを伝えたその時だった。エミリーが部屋に閉じ籠ってしまったのは…何が気に入らなかったのか検討もつかなかった。


 クリスにエミリーを任せている間、アルクは自室にて考えにけていた。

 アルクと双子とは10歳も年が離れているため、彼らが初等教育を始める頃には、自分は既に高等教育を習っており、知識量も体格共に大きな差があった。

 だから、兄弟の中では誰よりも先に秘密を知ってしまった。


【エミリーは血の繋がりがない妹】

【間違いを起こすと家族が崩壊する】


 

 双子はアルクを兄としてではなく、もう1人の父親として認識していると感じた。自分もそう思われた方が楽だった。どう接したら良いか自分自身を分析した。

・ジェイクのように思ったことを直ぐ顔や言葉に出すと喧嘩の原因にしかならない、却下。

・クリスのように紳士ジェントルマンのような振る舞いはできるが、甘ったるい台詞は性格上無理。

・表情や行動には表すが、言葉数は出来るだけ最小限でコミュニケーションを取る。

 これだ、最後の方法をとっていれば、まるで寡黙な父親みたいだ。

 エミリーもアルクに対しては必要最低限のスキンシップとコミュニケーションしか取らない。そんな関係だからこそ、自分の入団を何故喜んでくれなかったのか…益々悩むばかりであった。


「ふっ、俺が12歳の妹に振り回されるとはな」


22歳にして恋人以外に振り回される日がくるとは予想できなかったようで、思わず一人で笑ってしまった。

アルク編も長いけど、今日中にアップ出来て良かったです!これはホワイト家6の謝罪の気持ちです…

※ホワイト家6後書き参照



そして初投稿から遂に評価をつけていただきました…本当嬉しいです!どなたか存じませんが、ありがとうございます


普通の普通でもそれが私の創作活動の源になりますから!

そしてついにアクセス3桁突破しました

ご覧になった方も80人超えたと知り、至福でございます。

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