夏の夜長
晩餐後のお話です
晩餐でお腹も幸福感も充分満たされた。それでも、話題が尽きることはない。家族の団欒は夜が深くなってもまだまだ続く。クリスが家族の為に淹れた紅茶を手に取り、程よく喉を潤してくれるのがまた幸せだ。
「今日の茶葉はアッサムだから、濃い目のミルクティーにしたよ」
繊細な作業は同じ兄弟でもジェイクにはできない。淹れる時間だけでなく、茶葉やミルクの微調整は家族の中ではクリスの腕前がピカイチだ。
「ふぁああああ」
大きな欠伸声が響いた。父ケビンの声だった。彼はもう54歳になり、年齢と仕事疲れで眠気が襲っていた。
「父さん、今日も仕事で疲れただろ?そろそろ休みなよ」
「そうだな…明日も早く出かけないといけないから、俺はそろそろ寝るよ」
まだ帰らぬ長男を待てないことが心残りではあるが、ケビンとフローラは立ち上がり我が子たちへ声をかけた。
「おやすみ、みんな」
「おやすみなさい」
3人は寝室へ向かう両親を見つめた。姿が見えなくなるなり、自分たちも寝室へ…というわけにはいかない。まだ長男が帰宅しないので、誰かが起きて待たないといけない。
「さぁジェイク、お兄ちゃん!まだまだお話しましょうね」
これは【1人だけが待つのでは無く、3人一緒に起きて長男を迎えよう】と解釈する。1人で待つには寂しいし、もしかすると眠気が襲うかもしれないが、3人一緒ならその可能性は低い。だからエミリーは両親が寝ても団欒を続けようと誘ったのだ。
ジェイクは露骨に嫌な顔をしたが、すぐ下を向き溜め息をした。これは起きて待つしかないと諦めたからだ。
クリスはエミリーの顔を見つめ笑顔で答えた。
「どこまでもお付き合いしましょう、お嬢様」
夜は長い。3人が寝落ちする前に長男が帰ってくるのか…それは誰にもわからない。
今晩にアップした【団欒】が会話ばかりでしたので【夏の夜長】が少なく感じてしまうかもしれません。
そして皆様、お待たせしました!
次話でついに長男登場します