ハンナ襲来
ホワイト家の現在の話に戻ります
ですが、兄の登場の前に家族ではない2人が出てきます。
兄は…次の予定です
母フローラから貰った水を一気に飲み干したジェイクはまた話を始めた。
「兄さんたちはいる?」
「まだよ。でも2人とも到着が仕事の後になると連絡があったから、もう少し後だと思うわ」
「お兄ちゃんたちは慌てて帰って来るイメージは無いかも」
「そうね〜ジェイクに比べるとスマートよね」
「おい!!」
からかう母と姉に対しツッコミを入れるしかないジェイク。ジェイクが大学の講義後に急いで帰宅したのは、家族が久々に集まる日と知っていたからだ。3人で店の片付けを終え、自宅へ移動する。
エミリーがホワイト家に来た頃に比べ、家が2倍ほど広くなった。国内の雑貨屋だけではなく、海外からの雑貨や生地も扱うよう事業を広げた。店の規模を大きくしたい…と考えていたタイミングで隣の家が空き家になったので、買収し面積を広くすることに成功した。
【ドンドンドン】
玄関先からドアを叩く音が聞こえた。
「パパ?それともお兄ちゃんたちかな?」
エミリーは迷いもなくドアを開けると、外にいた人物によって扉が勢いよく開けられた。エミリーの体は外へ出てしまい、膝を着いて転んでしまった。それと同時に1人の女性が自宅に入った。
「ジェイク!私を置いていくなんて…酷いではありませんか!!」
金色の髪をなびかせた女性が、室内にいたジェイクに対し怒鳴り始めた。
「女性を一人で帰らせるとは、紳士のなさることではなくてよ」
「ハンナ…俺、今日は無理だと君にも伝えたよ」
「それはいつ仰ったの?」
「先週」
「私は覚えておりません」
「はぁ…頭痛い。そこ、エミリーが転んでいるから、とりあえずどいて」
ジェイクはエミリーに手を差し伸べ、体を起こした。エミリーを見向きもしない女性の名はハンナ・ブライト。取引相手であるブライト家のお嬢様だ。
「エミリーはそこで何をされているの?」
「ハンナ!エミリーは君のせいで転んでしまった。まず謝ることが先だろ?」
「どういうことかしら?私はただドアを開けただけですわ!悪いところは何もなくてよ」
「ハンナ、それは…」
ジェイクが怒り、ハンナは謝る気が全く無いことは会話や空気で伝わった。エミリーはやり取りを遮るように話しかけた。
「いいのよ、ジェイク!浮かれて油断していた私が悪いから…」
「ほら、彼女もそう仰っているでしょ?私のせいで転んだわけではなくてよ?」
「だから!そういうことじゃなく…」
「お嬢様ぁ〜!!ハンナお嬢様ぁ〜!!」
3人の会話とは別に道路に置かれた馬車の前で叫んでいる老人がいた。ハンナの執事ヘンリーだった。
「お嬢様、本日は約束の日です!ご帰宅を!」
帰宅と聞いて不機嫌な顔をするハンナだが大きく溜め息をついた後、ジェイクの顔だけを見て話しかけた。
「本当は我が家へ一緒にお越しいただく予定でしたの…とても残念ではありますが、本日は諦めますわ」
「本日は…ね」
「あ、そうでしたわ!ヘンリーあれを」
「はい、ただ今お持ちします」
あれだけでわかるのは、流石ハンナの執事。彼の手元には白い封筒が3通あった。
「これらは明後日ブライト家で行われる正式な招待状でございます!どうぞ、お受け取り下さい」
3通全てジェイクに渡された。
「ん?どうして俺に3通も…?」
「よくご覧になって?」
宛名を見るとエミリーと2人の兄の名前は書いているが、受け取ったジェイクの名前は無かった。
『どういうこと?』と悩んでいたがすぐ解決した。
「明後日のエスコートはジェイクにお願いしたと伝えておりますの!」
「ジェイク様は招待状が無くても、当日は必ず場内をご案内致します!ご安心下さいませ」
満面の笑みで伝えたハンナ。執事もにこやかに具体的な説明を始めた。ブライト家のパーティーを断るつもりは一切無かったが、歓迎の態度の裏に何か隠された真実があるのではないかと、疑心も持ち始めた。
ジェイクとエミリーは参加の意思表示をして、ハンナたちを見送った。
お気付きの方も多いと思いますが
ハンナは恋をしていますね