ハンナ
社交界お披露目の約1ヶ月前の話です
ブライト家、家族全員出ています!
『私にはずっと気になる男性がおります』
両親と兄レオンにそう告げたのは社交界のお披露目デビューの日が決まった時のことだった。家族全員が突然の告白に驚いていたが、彼女専属の執事やメイドは全く動じていなかった。誰のことを言っているかは安易に検討がついた。
しかし、家族は常にハンナと共にしている訳では無いので、誰のことか想像出来なかった。
「ほう。では、その想い人は誰なんだ?」
「…ジェイク」
小声でハンナは答えた。父親の反応を試してみたかったからだ。
「ジェイク?どこのジェイクだ?」
【どこの】とは【どこの名家】と略して質問している。ハンナにもそれはわかってはいるが、彼は名家ではない。果たしてそれを正直に伝え、吉と出るか凶とでるか不安だが告白した。
「ジェイク・ホワイト。彼はアルク副団長の弟ですわ」
「ホワイトって…クリスの弟?あの双子の?」
「そうですわ」
「彼らは爵位を持たない男性だよ、ハンナには無理だ」
「恋に爵位など関係ありません」
兄妹で言い争いが起きたが、その一方で両親も互いに小声で何かを言い争っていた。ハンナとレオンは両親の意見を求めた。
「やっぱり問題あるよね?」
「問題ありませんよね?」
何か返答に困っている様子だった。普通なら悩むことなどない。名のある公爵家なら【問題外】ですぐ結論が出る。つまり【交際など許さない】だ。
しかし、2人の様子が違う。返事を焦らされてハンナの気持ちも収まらなかった。
「何が駄目ですの?お父様!」
「ホワイト家の双子の弟ということは…彼にはお姉さんがいるだろう?」
「ええ。姉のエミリーがいますわ」
「そうか。2人ともまだ我が家で勉強していたと認識しているが…それぞれの評価はどうだ、ヘンリー」
「はい、エミリー様もジェイク様も成績は優秀でございました。エミリー様は文学と芸術、ジェイク様は剣術と交渉術に長けておられます」
「まぁ、それは素晴らしいですね!」
話題が恋の相談が彼らの成績へと移行した。両親はハンナの恋話より双子のことを気にかけてしまった。その態度はハンナを深く傷付け怒らせた。
「違う…」
「え?」
「こんなの…違います!!どうしてエミリーの話が必要なのですか!?ジェイクだけ知れば良いではありませんか!おかしいです!!」
「そう?僕はエミリーの話を聞きたいけど?」
「お兄様は黙ってて下さいませ!!」
「はいはい」
凄い剣幕でレオンは黙るしかない。またハンナはやや泣きそうな顔で両親を見るだけだった。それは悔しさも込み上げていたのだ。そんな彼女の顔を見て母親はハンナの手を取り語った。
「ごめんなさい、ハンナ。でもお相手家族の情報収集はとっても大切なことなの。特に爵位のない家庭では私たちとの生活も全く異なるわ。それでも…あなたは彼と恋を実らすことが出来るかしら?」
「ええ、もちろんですわ!」
「そうか…それなら勝手にすればいいさ」
「ええ、お父様!勝手にしますわ」
母親はハンナの涙をそっと指で拭った。目の間には困難に負けない娘の凛々しい顔があった。【認める】とも【応援する】とも返事をしないところが、公爵家としての譲歩だろう。
『彼女たちの恋は辛く困難な道だわ』
『いずれ全てを知る時が来る』
両親の想いは全体を見通していた。ただ横で似たような恋愛感情を持つ息子には、不思議と気付けなかったようだ。
ブクマをしていただいた、あなた様!本当にありがとうございます。この場を借りてお礼申し上げます。
レオン回もアップしたいのですが、ネタバレは嫌なのでタイミングが難しいですね。




