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対抗心

この話から第二章が始まります!


そしてブライト家のハンナ以外の名前も出てきます。


兄弟の中で出番が多いのは誰でしょう?


 遂に迎えたブライト家の社交界パーティー当日。朝から待ちきれない様子のエミリーと「憂鬱だ」と不機嫌な顔で呟き続けるジェイクがいる。その姿を比べると陰と陽だ。ただ、刻々と時間が迫り身支度をしなければ間に合わなくなる。


 エミリーはクローゼットからドレス一式が入った箱を出してきたが、どうも様子がおかしい。何かに戸惑っている。クリスが真っ先に気付いて声をかけたが、箱に目線を落とすだけだった。


「どうしたの?開けて僕にも見せてほしいな」


クリスからの要望でゆっくり箱を開封した。そこにはバラと霞の刺繍が施され、エミリーの瞳と同じ緑色のドレスが収まっていた。しかし、それには兄弟全員、目を疑った。刺繍が入っているドレスは市場ではとても高く、ホワイト家で簡単に購入できる代物ではないと見ただけで判断できる。


「これはミシェルからか?」


アルクが尋ねるが、エミリーは首を振るだけだった。床を見るとドレスを開けた時に落ちたと思われるメッセージカードがある。ジェイクは「見るぞ」と一声かけて文字を読み始めた。



親愛なるエミリー

あなたとお会いできることを

心より楽しみにしております


レオン・ブライト



「レオンだって!?」


驚きの声を発したのは、いつもは優しいクリスだった。


 レオンはブライト家の長男でハンナの兄。クリスとはかつての学友で今も親友として交流がある。しかし、彼からエミリーに贈り物をしたと全く聞いていなかった。


「これはいつ届いたんだ?」

「10日前の仕事中に…」

「俺が大学でいない時だな」

「レオンとは交流はあるの?」

「…私は特別無いの」


【私は】と付けたのは、兄弟3人は支援を受けている関係もあり、馬術や剣術の練習中にレオンと会う機会も多々あるが、エミリーは違う。彼女はマナーと教養を学んでいたが、ブライト家の部屋で講師とワンツーマンで、レオンとは全く顔を合わせていない。理由が不明だった。


「このドレスはブライト家からの支援として贈ったかもしれないね。今日はブライト家にとって特別な日だから、断らずに着てみて…ね?」


エミリーの目線に合わせてクリスが優しく説得した。その言葉にうなずき、急いで着替えに走った。エミリーの姿が見えなくなると、兄弟は険しい表情で話を始めた。


「ねえ、兄さんたちはあのドレスがブライト家からの物だと思う?」

「俺は違うと思う」

「うん。咄嗟にフォローしたけど、個人的に贈った可能性が高いね。レオンは意味を知ってて、エミリーに贈ったのかな…」

「厄介だな」


誰もブライト家からの贈り物だと思っていなかった。



 エミリーが部屋に戻ってからもう1時間は経とうとしているが、まだ部屋から出て来ない。しかし、馬車の出迎えの時間もあるため少し急がなければならない。「様子を見てくるよ」と声をかけクリスはエミリーの部屋へ向かった。


【コンコンコン】

「お願い助けてー」


 クリスのノックと同時に部屋の中から助けを求める声が聞こえた。何事かと思い「開けるよ」と声をかけ、すぐに中に入った。そこには髪型がボサボサになり、泣きそうなエミリーがいた。ドレスは一人でも無事に着られたようだが、髪型は無理だったようだ。


「お兄ちゃん、助けて!」

「はは、任せて」


 クリスが笑顔で応えれたのは理由がある。クリスは兄弟の中で器用で繊細な為、エミリーの髪を結うは彼の役目で苦ではなかったからだ。


『耳横の髪は少しだけ垂らして、他はアップにしてティアラを付けてみようか』


髪型のイメージが湧き、髪を上げた…その時だった。首に少し赤くなっている部分を見つけた。


「エミリー…この赤みは?」


エミリーの左側の首筋を指し尋ねた。


「あ、赤み?いつの間に??どうしよう…腫れている?」

「腫れては無いけど…」

『虫ではないな』


 クリスは勘付いた。それはキスマークの可能性が高く、エミリーに対し独占欲を働いた奴がいると推測した。首のキスマークは付けた男の独占を意味する。つまり、この数日の間にエミリーは誰かの者になったと考えた。


「エミリー、この赤みがいつ頃付いたか覚えがある?」

「ううん、全く…痒みも痛みも無いの」

『エミリーが無自覚の時に付けたのか…無効だな』


 クリスの顔にはもう笑みはない。怒りの感情の方が強かった。自分の知る限りエミリーと接点が多かったアルク、ジェイク、又はドレスを贈ったレオンしかいない。ただ証拠も確証も無いので、問い詰めることは出来ない。

 考えている間にアップスタイルの髪型は完成して、エミリーから感謝の言葉を受け取った。しかし、目障りな赤みは消したかったので、化粧台から白粉おしろいを手に取り、一時しのぎではあるが隠した。


『これだけでは…印を付けた奴が優位なのは変わらないな』


 白粉を台に戻すと、椅子に座っているエミリーの前で膝を着き、彼女の手を取り話し始めた。


「エミリー、馬車に乗る前に少し話をしても良いかな?」

「うん、大丈夫よ」


真剣な眼差しで見つめるクリスに対し、不思議な気持ちではあったが応えた。


「僕は最後にエミリーを愛しき令嬢に変える魔法をかけるよ」

「うふふ、素敵!まるで絵本の中の魔法使いみたいね!お願いします」

「それではゆっくり目を閉じて…次に僕が【3】を言い終えたらゆっくり目を開いて」

「うん!」


エミリーはゆっくり目を閉じて、クリスの声に耳を傾けた。


「1、2…」


 とても不思議な時間だった。3のカウントが聞こえてこない。そればかりか、2を言い終えた後からエミリーの唇に温かみを感じる。何かがおかしい。ゆっくり目を開くとエミリーは突如、赤面した。目の前にはクリスの顔がある。この状況からクリスが自分の唇に口づけをしたことに気付いたのだ。恥ずかしさと戸惑いから両手で口を隠そうとした瞬間、クリスに両腕を掴まれ阻止された。


「どう…し…て…」

「僕は伝えたよ?エミリーを愛しき令嬢に変えるって。君は僕にとって愛しい存在だ」

「だって…クリスお兄ちゃんは…私の…」

「兄だけど、今日はパートナーだよ」

「でも、パートナーでもキスは…」

「しなくても良かった?でも、エミリーを誰かへ譲れるほど俺は寛容じゃない!」



 エミリーの思考は止まってしまった。誰にでも優しくて慕っていた兄クリスがどうしてこうなってしまったのか…それは、どのようにクリスにエスコートされ、馬車に乗ったのかもわからないほどだった。

 ただ道中、エミリーの異様な姿をアルクとジェイクが見つめる中、クリスだけはエミリーと肩を寄せ微笑んでいた。


 ブライト家にはもう間もなく到着する。

章のタイトルはブライト家ですが

この話はホワイト家の出来事ですね…



そして2章1話にして早くも起爆剤が…

今回はクリスです


ここまでを先読みした友人から

「クリス贔屓」と言われたのは懐かしい思い出…

彼の裏性格設定ですか?【二重人格】

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