エミリーの親友
この【エミリーの親友】で第1章は完結です
ただ、この話で新たな女性が登場します!
父ケビンも昼食を取るために帰宅し、家族揃ってやっと食事を取ることができた。ケビンは子供達全員と一緒にテーブルを囲むことができ、喜びを感じているが…その子供達の様子が何かおかしい。自分や妻フローラと目が合い会話をするが、子供同士で目を合わせて会話をしようとしないのだ。
それはそれぞれの思惑があった。
エミリーは恋愛相談中に眠気が襲い、どうやって部屋へ戻ったのか覚えていない。聞きたくても誰かが知っているのかわからないため、恥ずかしくて聞けない。
アルクは自分のせいで弟妹が寝不足で迷惑をかけたことを知っている。だから昼食中は無駄話をせず、早く食事を済ませて休んでほしいと考えていた。
クリスはジェイクとエミリーが部屋に戻った時のことを聞きたかったが、家族が全員揃っているこの場で尋ねる話では無いと考え、黙って様子を伺うだけだった。
ジェイクに至っては夜の出来事がまだ脳裏から離れずにいた。ただ寝不足もあり下手なことを口に出すと、兄クリスに殺されると思ったので何も言えなかった。
ケビンは奇妙な雰囲気の昼食を感じたが、父として聞きたいことも多く、子供たちに質問を振り始めた。
「アルク、これからの予定は?」
「今日は特にないな」
「クリスは?」
「僕も予定は入れてないよ」
「エミリーは?」
「私は…あっ!!」
何かに驚いたように思い出した。
「大変、今日は約束の日だわ!」
「誰かと約束をしていたの?」
「うん!ミシェルと会うの」
「ミシェル?誰だ?」
「兄さんたちは会ったことが無いと思うよ。高等教育時代の学友だったオークランド家の令嬢だよ」
アルクとクリスは驚いた。オークランド家はブライト家と同じ公爵家であり、莫大な富を築いている。もちろん、騎士団で守っている領地もあるほどだ。ホワイト家は支援を受けているブライト家だけでなく、オークランド家とも繋がりがあったことに対し驚いたのだ。
「エミリーから【親友ができた】と聞いて、初めて家に呼んだ時は私も驚いたわよ。馬車2台に執事、メイド数人と一緒にいらっしゃったのよ!」
当時の状況を説明する母の姿にケビン、エミリー、ジェイクは思い出し笑ってしまった。
「そうそう、ミシェルはいつも通りの外出スタイルで来たのよね!」
「あの時はご近所さんも何の騒ぎだと驚いていたな〜」
「ハンナも強烈だけど、ミシェルも生粋のお嬢様で強烈だったな!」
当時の思い出を4人は語ったが、アルクとクリスはその時既に騎士団へ入団しており、エミリーの親友の存在、オークランド家の繋がりのことを知らないままだった。
「オークランド家のお嬢様か…それは約束を守らないといけないね、エミリー。彼女とは何処で待ち合わせをしているの?」
「え、待ち合わせって…ここよ?」
「ここって…我が家か!?」
先程から驚きの連続だ。帰郷しているこのタイミングで初めて会うとは思いもよらなかった。ただ、エミリーから「今は私に合わせているから心配要らない」と説明され、不安は残るものの信じることにした。
「僕はまだお会いしたことがないけど、挨拶しても良いのかな?」
「もちろん!アルクお兄ちゃんも一緒に、ね?」
「ああ、挨拶しないのは兄として失礼だからな」
「うん、ありがとう!」
エミリーは満面の笑みで応えた。ただ、両親は仕事へと戻り、ジェイクも「寝不足だからもう一度寝る」と自室へ行ってしまった。ただし、本音は別のようだ。
昼食後のティータイムの準備中
【コンコンコン】
玄関からノックが聞こえ、嬉しそうに迎えに行くエミリー。同じ轍は踏まなかったのだろう。何事もなく来客を迎え入れ、戻って来る足音が聞こえた。
リビングの扉が開くと、茶色の髪にグレーの瞳の女性が恥ずかしそうに立っていた。
彼女がオークランド家令嬢のミシェル。そして、後ろにはお付きのメイドが立っていた。
アルクとクリスは彼女の前へ足を進め、右手を胸に当て挨拶をした。
「お初にお目にかかります、ミシェルお嬢様。ホワイト家長男のアルクです。現在は騎士団の副団長を務めております」
「同じく騎士団にて副団長補佐を務めております、次男のクリスです。お会いできて光栄です」
アルクがミシェルの右手を取ろうと手を差し伸べたその瞬間「ごめんなさい」と声を上げ、彼女はエミリーの後ろへ隠れてしまった。
どうやらミシェルもエミリーと同じでまだ異性との交際が無く、手を触れたり目を合わすことに恥じらいを感じている。後ろにいたメイドは『エミリーさんのお兄様なら大丈夫』と信じていたようだが…その希望は打ち砕かれた。
「大丈夫よ、ミシェル!だって、私にとって自慢のお兄ちゃんだもの」
この言葉はミシェルを突き動かした。隠れていた体ゆっくりと出し挨拶をした。
「失礼しました。オークランド家の娘、ミシェルでございます。以後、お見知りおきを」
とても華麗な姿勢で挨拶をした。【さすが公爵家の娘】と言わざる得ないほどだった。ただ手を差し出すのはまだ無理のようだ。
彼女たちが家にやって来た理由は、明日のブライト家で行われるパーティーに関係していた。
同じ公爵家であるため、もちろんミシェルにも招待状が届いている。しかし、ホワイト家は貴族ではない為、エミリーの身に付ける宝飾品が手元に無く困っていた。そこに救いの手を差し伸べたのがミシェルであった。彼女は困っているエミリーを助けるべく、自分が所有する宝飾品を貸し出そうと考えたのだ。それは沢山財を持つオークランド家だからできる手段であった。
メイドが彼女のアタッシュケースを開けると、指輪、ネックレス、ティアラなど女性ならうっとりするような宝飾品が多数出てきた。もちろん全て一級品ばかりで、エミリーでは買えないような代物ばかりだった。
「このティアラは可愛いでしょ?」
「うん、とても素敵だわ!」
「このネックレスもエミリーに似合うわ!」
「本当?とても宝石が大きくて綺麗ね!」
「指輪は邪魔になりそうね、止めておきましょうか」
二人の楽しそうな声がリビングに響く。ミシェルがエミリーの肌や髪に宝飾品を直接当てながらアドバイスをするが、アルクとクリスは微笑ましい様子を見ることしかできなかった。
ミシェルはふと何かを思い出したかのように、2人の顔を見ながらエミリーに耳打ちをした。それを聞いたエミリーは深刻な顔を見せたのちに、相談を始めた。
「あのね、アルクお兄ちゃんかクリスお兄ちゃんに明日、ミシェルのエスコートをお願いしたいの」
まさかの相談だった。大抵、公爵家のご令嬢なら同じ公爵家の人物を見つけ、相手にお願いすることが妥当だろう。しかし、彼女の性格柄、それがまだできていないのだ。
「私たちのどちらかで本当に宜しいのですか?」
「はい…お願いします」
「女性からの誘いを断るわけにはいかないね。それではどちらをご希望されますか?」
「…お任せします」
【お任せ】とは一番返事に困るパターンだ。指名される方が助かるが「指名しろ」と言える立場ではない。暫く沈黙が続いた後、クリスが口を開いた。
「僕の考えになりますが…兄アルクのエスコートが一番かと思います」
「どうして?」
ミシェルではなく、エミリーが思わず聞いた。ただミシェルも理由はわからないようで、首を傾けた。
「僕はまだ副団長補佐で無名に近いですが、兄は副団長として国内でも有名です。あなたをエスコートするなら、無名な僕より副団長の兄が相応しく感じます」
その意見は正論のようで、近くにいたメイドも名前を出されたアルクも否定をしなかった。つまり、理に適っている。
「それでは副団長アルク様、明日は宜しくお願いします」
「はい、宜しくお願い致します。しかし、敬称も敬語も私に対しては不要でございます。」
「ええ、ではアルクさん?私にも敬語は不要です。エミリーの友達として、普段使いのように話をしてくださいね」
「努力しま…する」
アルクの変な敬語に一同は笑ってしまった。ここまでで言えることは、兄に対しミシェルは打ち解けてきたということだ。
「では、エミリーお嬢様のエスコートは僕がしますね」
「はい!お願いします、クリスお兄ちゃん」
宝飾品もパートナーも無事に決まり、明日はいよいよブライト家のパーティーだ。エミリーは初の社交界に心躍っていた。
初登場はオークランド家の令嬢ミシェルです!
彼女はハンナと違い強引でワガママな性格ではなく、気品でお淑やかなタイプです。
ちなみにメイドの名前はサマンサです。
【エミリーの親友】の文字が多くなってしまった…
まだまだ未熟さが出ますね
次章はブライト家の社交界がメインです
起爆剤あります!お楽しみに!