表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

不定期

1話


私は登板 花玲(トウダ カレン)。進永高校に今期入学だ。15歳。身長は163cm、体重は……秘密ということで。見た目はそうだな…肩甲骨まで長い黒髪、顔は…中の中ぐらいじゃないだろうか。

当然友達はいない。寂しいやつとか思わないでほしい。家は横浜市のとある一軒家。母と父が昔ローンで建てた家だ。


あぁ、高校もきっと楽しくないのだろう。何が楽しくて競争が強く根付いた教育施設に行かなきゃならないのだろう。親の面子を保つために通うようなものだ。実につまらない。高二病?うるせ。


そして、クソみたいな朝がやってくる。朝から母の朝飯と自分の分を作る。白米にあさりの味噌汁、納豆と沢庵。朝はとりあえずこれだけでいいだろう。

母は暴力と罵声をしてくる事以外は普通の母親だと思う。食費もケチらず月に5万渡してくれる。無駄に外食もせず外遊もしない。好みの味付けにさえすれば美味しいとも言ってくれる。そう、普通の母親なのだ。


朝7時、母はまだ起きてこないため1人で食事を取り、母の分は再度温めラップを上から被せる。そして私は自分の部屋に行き進永高校の制服を着る。濃い紫のベスト、青と緑のチェックのスカートにふくろはぎを覆う黒い靴下。そして、白い大きなマスクを付けていく。マスクだけは外せない。


8時までぼーっと時間を過し、8時5分に家から出る。家から進永高校まで20分といった所だ。人と話すのは苦手、だからあえて遅くに行く。早く来すぎて教室で待つと挨拶されることが多いからだ。だから遅く行く。

私の家は駅から近く5分で着き10分を駅で、4分で学校に着く。残りの1分は保険だ。


今日の晩御飯どうしようかなど考えていたら学校に着く。やはり近くて良いと思った。

校門には生徒会の腕章を付けた人達が新入生、在校生にクラス表を配っていた。軽く会釈しながら受け取りクラス表を見る。8組12番だった。


学校は4階建てで1階が職員室2階が3年生、3階が2年生、4階が1年生だ。4階…なんともめんどくさい。指定の下駄箱に靴を入れ、上履きをリュックから取り出し軽くほおり投げてから履く。

パンッ!と気持ち良い音に反応して周りの人がこちらを見るがお構い無しに階段を登る。


4階に着いて8組を探す。廊下の一番端のクラスだった。落ちこぼれクラスとか無いことを祈ろう。めんどうな人とは関わりたくないものだ。


立ち止まり話しこむ人に謝りながらも人をかき分け自分のクラスの前に行く。

人が騒いでいる。

視界からの情報が遅れてるのではないかと思うほど世界が遅く見える。

心臓の鼓動が先程からうるさい。

呼吸が荒くなってくる。

聴覚がシャットダウンし一気に不安が襲ってくる。

どうしようどうしようどうしよう。思考という行為すらも許されない不安定状態。

突如として打ち破りしは二回肩を叩く行為。

振り返ると冴えないようで人を落ち着かせるような雰囲気を出している男がいた。

「あの、入れないんだけど」

眠いようで早く席に着きたい空気を出していたので道を譲る。

男が入ると心を落ち着かせ私も続いて入る。

どこかしこから

『あいつ誰』

『キモすぎ』

『だっさ、帰れよ』

と聞こえた。

もちろん私の幻聴に過ぎないのだが。


前の男に続き黒板に貼られていた座席表を見る。クラス表を流し見したせいかクラスの人数が多く感じた。正直もう少し少なくてもいいんじゃない?などと思いながら登板の文字を探す。

縦6列横7列、後の方の番号の1列は縦4人の計40人だ。右の列の上から番号順に席を振られており、私は12番で縦右から2列目の最後尾。少し嬉しくなった。端に近い列で最後尾は最高でしょ。

間違いがないかちゃんと席を確認して自分の席を目指す。すると私の席には先客がいてそこには前髪で顔が覆われている女の子がいた。


気が付いてないらしく私は、

「すみません、私ここの席なのですが、貴女はお隣の席ではないでしょうか。」

と声をかけると。


「え、す、すみません…。悪気はなかったんです、許してください。」


と怯えたように言うのでこちらが悪ように思えてしまってくる。とりあえず労いの言葉を言い丁寧に席を誘導する。その時に彼女の顔が赤くなっているような気がしたがきっと彼女は必死だったのだろうと無視して私は席に座る。ほんのり温かい。……なんか寒気がした。ちなみに彼女は右隣だった。18番か


30分、チャイムが鳴る。暫くの静寂の後近くからヒールで歩く音が聴こえる。数秒後教室の扉が静かに開かれる。立っていたのはアニメや小説などでよく見る腰まで長い手入れの行き届いた綺麗な黒髪で背が高くおまけにメガネ美人ときた。女性教師は教卓の前に立ち口を開く。


「あ〜。なんだ、担任のウエサト ミサキだ。え〜。とりあえず1年よろしく」


「漢字は〜…」とボヤきながら黒板にキレイな字で上里 希咲と書かれた。率直に良い名前だ、とても似合っている、と思えた。


パッパッと手を払いキレイになったのを確認してから面倒くさそうに頭を掻く。髪が崩れないように丁寧と。髪型崩そうよ。それか結んで。


「まぁ、そうだな、うちの学校は入学式なんぞやらない、始業式や終業式、集会などははTV放送だ。あと喜べ、大掃除はやらない。業者を呼ぶ。」


喜びからかクラス全体がざわつく。うるさい。


「とりあえず自己紹介から始めようか。うん、そうしよう。どんなことでもいいぞ〜。あ、1番から順に番号順な?」


間を開けてから1番の人が立ち上がる。相変わらず顔の前にモザイクがかかってる。


「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜…。」


名前は…覚える気がないので真面目に聞かなくてもいいだろう。問題があるなら後で覚えよう。面倒ということはない。いやあるけど…。

順々に自己紹介をしていって私の番が来た。

私は元気よく…

「初めまして!仲里中から来ました!名前は登板 花玲といいます!登板は登る板と書いて登板で花玲は花に玲生の玲で花玲と書きます!

趣味は読書!なんでも読みます!オススメがあるならぜひとも紹介してくださいね?特技は…えっと……えへへ…特技と言える特技がありません…。好きな食べ物はカレーとリンゴです!あ、入りたいなーって部活がまだないのでここオススメだよ!って所があったら教えてください!私は頑張ることがとりえなので!これから1年間よろしくお願いしますね!皆さん!」


よし、決まった。完璧だ。これぞ花も恥じらう良き乙女だろう。…とりあえず元気さえあればコミュニティという名の情報ネットワークから疎外されることはない。あとは良いように使われないようにガードを固めるだけ。そんなことを考えていると隣の席の女子生徒の番だ。


「えっと…その…」チラッと視線を送る。

仕方なく頑張れっ!と拳を握り軽く震わせて応援(多分)アピール。一瞬彼女から明るい空気を感じた。嫌な予感しかしない。


「私は…相見 莉奈 (ソウミ マリナ)と申します…。都竹中から…です…。趣味…読書と…ゲームを少々…。特技…ありません…。食べ物…苺です…。部活は希望しません…。よ、よろしく…!お、お願いしまつ…!」


女子生徒は顔を赤らめて席に座る。周りから『なにあれ〜だっさー。』『キモすぎ。』

見た目の陰キャラ感や無駄な間で最初から印象がガタ落ちしてしまっていた。

番号順に淡々と話して最後に先程の男子生徒だ。


「え〜っと、なんだっけ?!」惚けたときに教室に笑いが起こる。うるさい、黙れよ。


「あ、名前からか。俺はワタナベ ヒサト。渡るに難しい邉で渡邉、寿に仁義の仁で寿仁だ!趣味は…ボランティアだな、うん。特技は、俺もねぇわ…。食べ物とかは端折っていいか、うん。部活とかは目星つけててボランティア部に入ろうと思ってるぜ!人が少なねぇらしいからなんとなくで過ごしたくねぇってやつ!是非とも俺と入って青春過ごそうや!」


話的にはムードメーカーのようだ。私とキャラ被りで大きな声で元気よく話していた。…大人しめに話しておけば良かったと後悔。

そして、気になるのが先程から左隣の女子生徒…相見さんがこちらを見続けているのか視線を感じる。私からは合わさった気にはならないが相手からしたら今目が合ったよね?となるので視線をあえて女性教師…上里先生に向ける。


「はい、終わったな〜。ま、最後に私もやっておくかな。うん。先程も言ったように上里 希咲だ。歳は〜……いくつだったかな…。あ、25歳だ。数学を担当している。趣味は男漁りで特技は…相手の感度の高い場所が直ぐに分かる!いい特技だろ!因みに独身だ。誰か将来立候補してくれ。相手はしてやるぞ。あ、営みの方では無いからな?決してそれはない。」


一言で言えば、こじらせ処女だ。多分破瓜の痛みも感じたことない余裕ぶるタイプだろう。

私…?私もこじらせるかもしれない。いや、そもそも私なんかを愛してくれる人など現れる筈がない。多分独身のまま死ぬだろう。


「ま〜。とりあえず、自己紹介も終わったし……何やろう。ん〜、分からん。よし!渡邉ぇ!お前何か発案しろ!」


無茶振りだ。多分いつもこんなことをするのだろう。なぜって、後ろの扉のガラスから先生がうんうん頷いているのだから。


「俺か!あー、そうだなー。あれだよ!先生!役割決めだ!学級委員とか係だよ!」


「なるほど、それがあったか。よし、渡邉、お前学級委員1号な。はい、けって〜。」


「おーい、渡邉さーん、君が学級委員らしいぞ〜。ま、頑張れ!渡邉!」


渡邉という男子生徒が一人芝居をしている。周りの人達はクスクスと笑っている。


「お前だ、馬鹿者。よし、2号は誰だ〜?」


上里先生は辺りを見回す。そして、相見さんと目が合う。相見さんが慌てて目を逸らす。相見さんとやら、もう君の負けだよ。頑張れ。


「よし!2号は相見にけって〜!2人とも頑張れよ!」


見た目が大人しそうな上里先生が予想以上に面倒な人だと心の中で留めた。そして相見さんはあからさまにキョドる。そしてこちらを見つめてくるが無視をかます。面倒だから。


「あ、あの!」いきなり声をあげるものだから周りの人の視線が一気に相見に注がれる。そして近くの席だから私も視界に入る訳で当然私にも視線が注がれている。もはや最悪の文字しか浮かばない。彼女は


「私……登板さん…とが…いいので……渡邉君とは…その…やりたくないというか……あの…ごめんなさい…。」


なんだこいつは、人類悪だ。人も巻き込みやがって。人の気持ちを考えろまでとは言わないが少しは察してほしい。そして上里先生が一瞬目を見開いてニヤニヤとしだす。絶対勘違いを起こして頭の中お花畑だろう。


「そうかそうかー。登板がいいかー。渡邉、喜べ貴様は今から解任だ。登板!お前が学級委員1号だ。喜べ、内申上がるぞ、やったな。」


あぁ、最悪だ。なんでこうなるのだろうか。相見とやらなんで私なんかを。面倒な。とりあえず一学期だけだろうから我慢しよう。


「はい!承りました!誠心誠意頑張らせていただきます!相見さん、よろしくね?」

あぁ、自分がキモくて吐きそうだ。


「は、はい…!私も…頑張ります…!」


満面の笑みを浮かべてこちらを見ているのだろう。傍から見れば微笑ましい光景だろうが私には相手の表情が分からない、だから声で察する。だからこうゆう役職は向いてないと再認識される。


「じゃ〜あとは係決めか、んー、面倒だな。押し付け合いとかされて長引くのはもっと嫌だからな。とりあえず私決めとくか。うん。それがいい!よし、じゃあ今日は決めない。」


名案を思いついたように目を輝かせながら言う。どんだけ長引かせたくないんだよ。


「んじゃ!後は帰りだな〜。よし!早く帰れるぞ〜♪今日みたいな日が続けばいいのにな!」

などとバカ丸出しな発言をしている。先生だが。先生がこの発言をしているのだが。


タイミング良くRHR終了の鐘が鳴る。

そして先生が大きい声で


「きりーつ!」

いきなりの事だったのでクラスの全員が一斉に立つ。


「気を付けー!」

皆が背をはる。


「礼ッ!」

一斉に礼をする。


「ほいじゃ、さいなら〜。」

……最後ので台無しだった。


そして一気に騒がしくなる。煩くてしょうがない。早々に帰ろう。と思ったとき、女子生徒A、Bの2人から話しかけられる。


「登板さんって可愛いね〜。」

「元気の塊みたいで話しやすいし」

なんだろう、皮肉か?皮肉をわざわざ言いに来たのだろうか?どのみち面倒なのには変わりない。

「ん〜そうでもないよ〜?私も貴女みたいに小顔に産まれたかった!あと私みたいな性格だとうるさすぎとか言われやすいんだ〜。」


ちょっとウザく言ってみたが相手には気にもされず話を続ける。他愛もない話を終え、今度こそ帰ろうと思った。

だが、隣人の相見さんが今度は話しかけてくる。なんでこうも続々と来るのだろう。他の人はこれを毎日やっていて疲れないのだろうか。大変そうだ。


「ね、ねぇ、登板さん…。い、い、一緒に…!帰りませんか…?ちょうど帰る様ですし…。良ければなのですが…。はい…。」

段々と萎んで行くのが分かる。


「うん!いいよ〜。私も相見さんとは話したかったんだ〜。」あぁ、自分がキモい。

明らかに喜んでますオーラをだしているのが分かる。…犬みたいだ。


「あ、ありがとうございます…!で、では、いきま…しょう…?」


「うん、相見さん。」

笑顔を取り繕う。まだ一人芝居を続けなければいけないようだ。


それから、帰り道。他愛もない話や、相見さんの身辺のこと、相見さんのこと、お互いの住まいの事を話した。住所以外の情報は死守した。そして意外にも相見さんは私の家の近くのようだった。嫌な予感しかしない。

駅から出て一拍置いてから話を再開する。


「登板さんの…めーる…あどれすを…教えてください…ませんか…?」

困った。いや、困りはしないのだが私は携帯類を所持してない。なぜなら今まで使う機会など到底なく、要らない存在だと思っていたからだ。

「あ〜。ごめんね!私そもそも携帯?持ってなくてさ〜。お母さんが少し厳しくてね。」と少し笑いながら言うと


「じゃ、じゃあ、お手紙など…どうでしょうか…?」

どうしても私と連絡を取りたいらしい。こんな子だったかな…?


「うん!それならいいよ〜!」


「あ、ありがとうございます…!嬉しい…。」

相見さんは歓喜溢れた声を出す。


「ところで…その…朝…一緒に登校しませんか…?」


いきなり話を変えてきた。登校…一緒にとか話さなくてはいけないし早く出ようとするのも面倒だなぁと思ってしまう。


「ん〜…。ごめんね?私って出るのが遅いんだ〜。」これで諦めてほしい。


「大丈夫です…!全然…いけます…!」

なにが大丈夫なのだろうか。

断ろうとしたがタイミングよくちょうど私の家の前に着く。


「あ、もう着いてしまいましたね…また明日…!いえ、また…明日の朝…!」

手を大きく振ってから彼女は急いで走っていってしまった。朝から彼女といるとなると胃が重く感じる。


時刻は12時ぴったり。お昼はどうしようか。スクランブルエッグにお茶漬けという微妙な組み合わせでも誰も文句は言わないだろう。

そして今日の夕食は麻婆豆腐とサラダと鮭で決定。


家に入ると案の定、母も父となりそうな人もいない。乱暴に靴を脱ぎ捨てずに下駄箱にキチンとしまう。出したままだと怒られてしまうから。制服からラフな部屋着に着替えちゃちゃっとお昼を済ませる。


食後30分間は転がらないように気をつけバランスボールに乱暴に体重を押し付け座る。


ただそれだけでため息が出てしまった。

しかし今日一日疲れてしまった。環境が変わるってだけでこんなにも疲れてしまうのは想像もできなかった。

新社会人のニュースをこの前見たが新社会人はどんな地獄を味わっているのだろうか。

エスパータイプではないのでまぁ、大変だなぁ。と他人事のようにしか思えないけれど。


テキトウに金曜日の夜にやっていた映画を録画したモノを流す。フレッディという一人の愛を求めた殺人鬼の話だった。

しにそ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ