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49年越しの春は近く?

 やはりというべきだろうか、各地で魔物の襲撃事件は少しずつ増えていった。

 勇者や各地の軍がそれに対処しているが、それでも魔物の勢いは増す。

 ついに軍が対処しきれずに壊滅する村がではじめるまで事態は悪化していった。


 『魔王が誕生した』

 

 ――ついにそんな言葉があちこちから出るようになった。


 「ほれほれ! そんなものか!」


 ファフニールがオーガの群れと力比べをしている。

 人間の2倍ほどの大きさを持つ赤鬼に似た魔物に対しても、やはり苦戦することはない。

 ばったばったとなぎ倒すその少女、一緒に対処に当たっている兵士の口がみっともなく開く。


 「ファイアレイン」


 魔法使いとなったレイの上級魔法が展開される。

 闘技大会で戦った魔法使いとは比べものにならないその大きな赤い火球。

 そこから散り散りと降ってくる炎の塊。

 それはまるで流星群のごとく降り注ぎ、数の多いコボルトの群れをみるみる焼き尽くす。

 

 俺も負けてはいられない。

 俊足を活かし、このダマスカスの短剣で立ちはだかる魔物を斬る。


 最後に俺の前に立ちはだかるはミノタウルスキング。

 牛の顔を持つ巨人の魔物であるミノタウルスのキングである。

 その頭部の二本の湾曲する長く立派なツノは雷を集めることができる。

 今もツノの間を繋ぐように青い電気の線が発光している。

 一度それが放電されれば厄介だ。


 「シャドウ」

 

 ミノタウルスの両手には人間から奪ったのだろう斧。

 人間ならば両手で1本の斧であろうが、それをそれぞれの手に持っている。

 もう1つの攻撃手段であろう。

 しかし姿を見失い、迷ってしまったのではもう遅い。


 跳び上がった俺はその隙だらけの体を八つ裂きにする。


 「これで終わりかな」


 着地するとともに斬った何十という箇所から血しぶきがあがり、その巨体は地に伏せた。


 「どうじゃ! 見たか我らの力を!」


 全滅した魔物の群れに対して自慢げに言い放つファフニール。


 ここカルタナでは離れた村から順に都市への避難がはじまっている。

 今いるこの村でもすでに避難が完了しており、人的被害はなかった。


 「ロビーン!」


 肩で1つ息をしたところへエルシーが飛びついてくる。


 「やっぱりロビンは強いねー!」


 そんなことを言いながら胸に顔を擦りつけてくるこいつの頭を、いつもどおり撫でてやる。

 

 「えへー」


 「しかし、ロビンだけでなく、レイさんとファフニールちゃんもあんなに強いとはな」


 ロランも来て、少し離れて2人で話している彼女らを見ながら、感心したように言ってくる。

 確かにレイたちが戦っている姿をこいつらは見たことがなかったか。

 俺たちは今回、ロランの部隊も含まれる小隊とともに討伐に当たった。

 まあほとんどは俺たちで倒してしまったわけだが。


 「おぉ! 主人の友人ではないか」


 レイとファフニールもこちらに寄ってきた。

 

 「やあ、レイさんにファフニールちゃん。2人ともすごく強くて驚いたよ」


 「そうじゃろ? もっと褒め称えよ!」


 褒められえて自慢げになるファフニール。

 えっへんという言葉が出てきそうだ。


 「ロビン、とても楽しそうね?」


 「え?」

 

 俺のほうをジトーっと見て言ってくるレイ。

 ん? なんだかかなり怖い目をしている。

 怒っているのだろうか。

 だが、どうしてだ?


 「ロビンはエルシーのものだからね!」

 

 エルシーが抱き着いたまま顔だけレイの方を向いて言い放ち、また擦りついてくる。

 

 「ふーん。そういうのがいいのね?」


 その様子を見て言ってくるレイの言葉には、怒気が混ざっている気がする。

 そしてエルシーはエルシーでわざとらしく擦りつける力を強くしていく。

 そこで俺は1つの答えを導き出す。


 「ち、違うんだ。別にこういうのがいいっていうんじゃ――」


 「むぅーっ!」


 エルシーを引き剥がし誤解を解こうとする。

 不服そうに頬を膨らませるエルシーだがここは我慢してほしい。

 

 「さ、戻るわよ。ファフニール」


 「あっ、わかったのじゃ! それじゃあな。主人の友人よ」


 「ああ、また」


 俺の言い訳を聞くこともせず背を向けて歩いていってしまった。

 どうしたというんだ、もしかして嫉妬?

 前に実家に来た時もまんざらでもなさそうに照れていたし……。

 いや、だがな。


 「あんまり移り気でいるとそのうち刺されるぞ?」


 ニヤけた顔で寄ってきて、肘で俺をついてくるロラン。

 別にそういうつもりではないのだが……。


 前世ではこういう色恋に関しては全くといっていいほど縁遠い存在だった。

 もちろん好きになった人がいないわけではない。

 しかし前世の俺がモテるはずもなく、振られるとわかりきった告白などできるはずもなかった。


 でも、もしもレイが本当にそう思ってくれているのなら――俺のこの思いを伝える日も近いのかもしれない。

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