嫉妬するドラゴン
就職の儀を終え、無事魔法使いとなったレイ。
彼女父の職業である魔法使い。
その人は凄い実力の持ち主であったようだが、きっとレイはそれを超える魔法使いとなるだろう。
成人となったレイのステータスを確認する。
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レイ=アシュリー(魔法使い)
レベル41 状態:健康
HP : 420/420
MP : 500/500
攻撃力 : 50
魔法力 : 450
防御力 : 50
魔法防御 : 90
かしこさ : 350
素早さ : 70
器用さ : 300
スキル : 魔法質向上
上級魔法解放
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魔法使いの恩恵もあり、もはや魔法力は俺に迫る数値を叩きだしている。
最近はいろいろなことにも挑戦しているからか、かしこさと器用さもグンと上昇している。
防御力に関しては今まで通り低値なのでしっかり守っていかないといけないな。
魔法に関しては俺もそのうち抜かされるのではないかという危機感がある。
まあそれはそれで喜ばしいことではあるが、なんとも尖ったステータスだ。
しかしこのような凄い魔法使いが誕生したかもしれないというのに、レイには殆どの人が関心を抱かない。
そう、今イスティナ全土の話題といえば『勇者の誕生』。
これ以外のことがまるで空気かのようになってしまっている。
「みんな、勇者勇者とばかりじゃな」
「まあそりゃ、伝説の存在って言われてるぐらいだしね」
「ふむ、それなら我もそうではないのか?」
都市を歩く俺たち。
ファフニールは都市の人々が勇者の話題ばかりしているのが不服のようだ。
『我をかまえ』という欲求を感じる。
しかしファフニールがドラゴンだと打ち明けようものなら、どんな騒ぎになるのかこいつはわかっているのだろうか。
「我はドラゴンだ。なんて絶対に言いふらさないでくれよ?」
「やはりだめか?」
「ああそんなことをしたら、みんなファフニールから離れていってしまうよ」
「ふむ、なら仕方がないのじゃ……」
ファフニールはすっかりこの都市に馴染んでいる。
それどころか一部ではアイドルのようなものだ。
そんな中、こいつも自分の本当の姿を打ち明けたいのだろう。
本当の自分で堂々とみんなと接していきたい。
俺の言葉をすんなり受け入れるその裏には、そのような感情があるのだと感じられる。
未だにファフニールがドラゴンだと知っているのは俺とレイのみ。
あの場にいた兵士含め、他の者はドラゴンはおとなしくこの地方から去ったと信じている。
今ならもしかしたらとも思わなくはないが、やはりリスクが大きい。
打ち明けない方が両者にとって吉であろう。
「私とロビンはちゃんとファフニールの本当を知っているし、受け入れているわ。今はそれで我慢して」
「よいのじゃ! 我はこの都市の人がみんな好きじゃからな。今はレイと主人だけで十分じゃ」
この1年いろいろなことはあったが、この3人の絆は日々深まっている。
それはまるで本当の家族といってもいいのかもしれない。
『勇者様がカルタナに来るらしいぞ』
ふとある男性たちの会話が耳にはいってくる。
勇者が来る?
俺はその会話に耳を傾けた。
どうやら勇者が各地を巡行するらしい。
そこにはもちろんカルタナも含まれているとのことだ。
世界に繁栄をもたらすといわれている勇者。
そのような大きな役割を担う存在にどのような人物が選ばれたのだろうか。
俺もかつては勇者になるかもしれないといわれていた。
だからか、余計にその人物像が気になる。
「むぅ……勇者め、我の地位を奪いにくるのか!」
ファフニールは当然敵対心をむき出しにしている。
眉をひそめたその強い瞳。
こんな可愛い姿であるのに、今にもビームが出そうである。
「勇者はどのような人なのかしら。私と同じ歳なのよね?」
勇者も当然、就職の儀で選定される。
それが今回の成人式で選ばれた。
ということはもちろんレイと同じ歳ということになる。
これだけ話題になっている勇者。
人物像が気になるとは言ったが、まったく知らないわけではない。
ある程度の情報は俺にもはいってきている。
イスティで誕生したその勇者はある有力貴族の娘ということ。
正義感が強いらしく、学校でもみんなを率いる存在だったということ。
だがやはり噂ではなく、実物を見てどのような人物であるか考えたい。
俺たちも例にもれずそれぞれ勇者に興味を持ちながらその日を待った。
そして約2週間の後、遂にその勇者はカルタナに姿を現した。




