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凍てつく赤黒き閃光

 ☆★


 「チッ……強いな……」


 ロランの第4戦目の相手はギゼノンの兵士。

 ケトが頭角を現してきた若き精鋭と評した十人隊長の男である。


 ここまで順調に勝ち上がってきたロランもその男に苦戦を強いられていた。


 「ハヤブサ斬り!」


 高速の3連撃。

 上段、中段、下段からと目にも止まらない速さでの剣撃がロランを襲う。

 

 「――くっ!」


 「五月雨突き!」


 「ゴハッ!」


 なんとか防ぐが下段からの攻撃でロランの剣は弾かれ、隙ができる。

 そこへすかさず放たれる突きの応酬。

 さすがのロランもかわすことも防ぐこともできず、その鎧を纏った身へもろに貰う。


 後ろに飛ばされ、尻もちをついて倒れるロラン。

 その衝撃で脳が揺れ、視界が乱れる。

 そこへ振り下ろされる剣。

 しかし、それはなんとかロランが剣で受け止める。


 力を入れて弾き返し、その間になんとか立ち上がる。

 しかし、ダメージはすでに相当なものを貰っている。

 痛みで汗が滲み、顔がゆがむロラン。

 

 突破口を見出そうとするも、考える隙もなく相手の剣が迫る。

 間一髪のところでその剣撃を防ぐが、攻撃は止まない。


 「ハヤブサ斬り!」


 ロランは防御の剣に関しては自信を持っている。

 それは圧倒的な存在であるロビンに打ち勝つために磨かれたもの。

 その化け物じみた相手の攻撃を防ぎ切り、反撃に出るためのものである。

 

 本来は体をも使い相手の剣の力を受け流すよう防ぐが、すでに体は思ったようには動かない。

 それでもロランはその剣のみでなんとかここまで持ちこたえる。


 先程は耐えきれなかったその攻撃もなんとかしのぐ。


 「やるな。まさかカルタナの一兵士がここまでやれるとは思わなかった」


 「ふっ。嫌味か?」


 状況は圧倒的に相手の方が優勢。

 その場面でそう言ってくる相手に鼻で笑って返すロラン。

 

 「いいや。素直な称賛と受け取っていい」


 一歩踏み込み、上段から勢いよく剣を振り下ろすギゼノンの十人隊長。

 それをまた両手でしっかりと剣を持って受け止めるロラン。

 受け流すことができない分、その衝撃が剣を伝って体に響く。


 「回転斬り!」


 上段からの攻撃を防がれ、そこから鋭く一回転。

 回転斬りへの連撃につなげる。

 

 「――ッ!」


 側面からロランの胴へと剣が痛烈に入る。

 その衝撃でとばされるロラン。


 「カルタナ兵のわりに良く戦った。降参しろ」 


 剣先を転がるロランへ向け、降参を諭す相手。

 その強さにロランは敗北を悟っていた。


 しかし、彼にそれは許されない。

 こんなところで負けるわけにはいかない。

 決勝に上がってくる親友にリベンジを果たさなければならないのだ。


 剣を突き刺し、それを支えに起き上がる。

 もう体は立っていることさえようやくといった感じだ。

 しかし彼の目は未だ熱さを残していた。


 「本当は、決勝まで取っておきたかったんだけどな――」


 「なに?」


 剣を引き抜き、よろめく体をなんとか踏ん張って相手を見て剣を構えるロラン。


 「ハアアアァァアアァァァ!」


 「なっ! なんだ?」


 ドクン! とロランを中心に異様な空気が広がる。

 この大きな太陽が燦々(さんさん)と照らす中、空気が冷えたような感覚。

 それを十人隊長は確かに感じ取った。


 空間が脈動している――そのような感覚が闘技場に伝わる。

 

 唐突なその寒気に今まで圧倒的に優勢だった十人隊長がたじろぐ。

 そこから見たロランは先程までのカルタナの一兵士ではなく、赤黒いオーラを纏った化け物。

 その危険な威圧感に思わず後ずさる。


 「な、なにが起きているというんだ?」


 未だ状況が把握できない十人隊長。

 そこへボロボロだったはずのロラン――化け物が襲い掛かった。


 ★☆


 闘技場に今までのような良い印象は薄れてしまったが、俺はロランを応援するために来ていた。

 相手は先のパレードの日、特別試合で見たギゼノンの十人隊長。

 強い相手とは知っていたが、まさかあのロランがここまで一方的に押されるとは。

 何度も剣でのダメージをくらう親友の姿は痛々しいものである。

 

 「ロラン!」


 決勝で戦うと言ったよな?

 なら、こんなところで負けるんじゃないぞロラン。

 お前なら絶対に勝てる。

 

 相手がギゼノン兵士であり、押されているため応援では完全にアウェー。

 だが、俺はフラフラになりながらも立ち上がるロランを応援する。


 「ハアアアァァアアァァァ!」


 ロランの雄叫びが観客席の俺のもとへも届いた。

 そしてそれと同時にあんなに暑かった空気が凍える。


 「ロラン?」


 なんだあれは?

 ロランに渦巻く赤黒いオーラ。

 それは確かにロランを中心にしている。


 「え?」


 ――それは一瞬だった。

 動くのもやっとという感じだったロランが消える。

 次にその姿が現れたのは十人隊長の後方だった。


 何が起こったんだ?

 響く何重もの甲高い金属音。

 そして鎧から血を噴出し、そのまま倒れるギゼノンの十人隊長。


 音が遅れてきたというのか?

 

 こんな芸当は普通にできるものではない。

 スキルを使ったとしてもあの状況からこのようになるなんて考えられない……。

 いったい何をしたっていうんだ、ロラン。

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