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それは剣士としての誇りか、それとも狂人の狂気か

 黒きオーラの塊が空を切り裂き俺に迫る。 

 避けることはできない。

 俺は短剣を両手で頭上に構え、防御態勢に入る。

 刹那、その漆黒の剣の衝撃がドシリと俺のもとへ届いた。


 なんていう強さ、押しつぶされそうだ。

 その重さに押され、片膝をつく。

 それでもなんとか振り落とされた衝撃に耐える。

 

 「うおおぉぉおおおぉ!」


 足に力を入れ、徐々にそれを押し戻す。

 体勢を立て直し、その大きな剣を短剣で振り払うとそれは消失した。


 後に残るはその斬撃の凄まじさ。

 俺の前や後ろの地面には大きな亀裂が一直線に伸びている。

 それは観客席のもとへも届かんとするほどのものだ。


 「耐えるか、これを」


 剣士のスキル《烈剣天翔》。

 それは剣にオーラを纏わせ、大きくして斬撃を放つ技。

 しかし通常このよう大きなものではなく、この男だからこそ成せるものと言える。


 これまでとはレベルの違う強者。

 この男が前の試合であのような行為をしなかったら俺は称えていたであろう。

 だが、それはもうできない。

 俺は試合を終わらせるためにアルダシール目掛けて飛び込んだ。


 「強い、お前は強いぞ――ロビン=ドレイク!」

 

 俺の短剣を度々身に受け、その度に顔を歪ませながらもこの男の眼光は決して死にはしない。

 ニヤリ、ニヤリとしては俺をまっすぐに、鋭く睨む。


 一旦距離を置く。

 まだまだという表情のアルダシールだが、体が悲鳴をあげているのは目に見てわかる。

 もう漆黒の剣を持つのも精一杯と構えることができない様子。


 「もう降参したらどうだ?」

 

 もう勝負は決しているといってもいい。

 それ程にダメージの差が歴然である。

 しかし俺がそう諭すと彼は天に向け大きく口を開け笑った。


 「ハハハハハ! 馬鹿言っちゃいけねえな!」


 息を吹きかえしたかのようにしっかりと構えるアルダシール。


 「殺す気で来い、でないとこの俺を倒すことはできんぞ」


 ――彼の言うことは間違いではなかった。

 ここにきて集中力を増したかのように俺の攻撃が防がれる。


 どこにそんな体力が残っているのだ。

 もう満身創痍だったはずだ。


 「ライトニング」


 完全に見切られている。

 超高速の《ライトニング》も次々その剣が斬り払う。


 「いいぞ、いいぞ! こんなに命を燃やすのは久しぶりだ!」


 《ライトニング》の後ろから一気に詰めて短剣を振るうが、その超反応で防がれる。


 「五月雨突き」


 そこからの反撃、まだそんな力が残っているのか。

 短剣で何十発とも言える連続突きを全て短剣で防ぎ切り間合いをとるために後ろに跳ぶ。


 「オーガスタンプ」


 それと同時に置き見上げと《オーガスタンプ》を使う。

 大きな影の拳がアルダシールの頭上から彼を叩き潰さんと振り落とされる。

 予想できなかったのだろう、今まですさまじかった彼の反応が一瞬遅れる。

 

 オーガスタンプが地面に叩きつけられ、あたりに砂埃が舞う。


 「やったか」


 砂埃から人影が姿を見せる。

 まだ立つというのか。


 視界が良くなり、剣を地面に刺して体を支えて立つアルダシールがくっきりと姿を現す。


 「ハァ……効いたぜ、なんなんだ? その力は」


 「さあね、俺にもまだわかってないよ」


 彼はゆっくりと剣を抜いてふらつきながらも構える。

 

 「もういいだろ? その体じゃ俺には勝てない」


 「何度も言わせるなよ、殺す気でこなければ俺は倒せない」


 本当に最後までこの男は諦めないようだ。


 「わかった。それじゃあ、とどめだ」


 「来い!」


 金属音が何重にも重なって響き渡る。

 俺は短剣で縦横無尽に飛び回りアルダシールを斬った。

 もう防ぐ力は残っていない。

 全ての攻撃がまともに彼の鎧を打つ。


 遂にガクッと両膝をつくアルダシール。


 「キルシックル」

 

 その首元へ俺は影の大鎌をあてがう。

 

 「終わりだ、降参しろ」


 「降参? しないと言っているだろう。殺せ」


 「それはしない。もう勝負はついた」


 俺がそう言い放つとアルダシールは狂ったように大きく笑う。

 それは本当に不気味な笑いでこの状況の俺が恐怖を覚えるほど。


 「剣士にとって敗北はな――」


 ゆっくり、ゆっくりと彼は剣に体重をのせて立ち上がる。

 どうするつもりだ? 本当にまだ戦うというのか?

 俺はその光景に思わず大鎌を引く。


 そして突き刺さった剣を引き抜いた彼は俺の目をじっと見て、不気味な笑みを見せる。


 「なっ!」


 そのまま漆黒の剣を自分の首元へ持っていくアルダシール。

 ――まさか!


 「死を意味するんだよ!」


 一気に剣を引き、首より血しぶきを上げる。

 そしてドサッとその体が地面に落ちる。


 本当に自害してしまった。

 地面に転がる彼の目にはもう生気はない。

 しかしなんとも満足そうな顔をしており、それはまさに狂気と言えるもの。


 それは剣士としての誇りある最期か、それとも狂気の末路か。

 俺には理解できないなにかが確かにこの男はもっていたのだろう。


 そして歓声が俺を称える。

 やはり人の死に関して何も思わないのか、その場は最高潮に盛り上がっている。

 それは俺にとって今までの気持ちいいものではなかった。

 要望がありましたので次回はこれまでのあらすじを投稿しようと思います。

 いままでの話のおさらいとして読んでいただいてもらえると嬉しいです。

 もちろん、今までの話は覚えていると言う方はとばしていただいても大丈夫です。

 

 また要望などありましたらどんどん言っていただけると嬉しいです。

 これからも頑張っていきますので当作品をよろしくお願いします。

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