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盗む、盗む、盗む

 「再生能力か……やっかいだな」


 短剣も折れた、もう武器はない。

 ならば魔物から盗んできたこの膨大なスキルを使うまで。


 「キルシックル」


 両手に生えた切断力の強い鎌を武器とするカマキリに似た魔物『マンティス』のスキル。

 その魔物より盗んだスキルがこのキルシックル。

 スキルを使用すると影が右手より三日月様の大鎌を形成する。

 

 足を踏ん張り、一気に力を解放する。

 素早さカンストの速度を以ってバジリスクの懐へ飛び込む。

 当然、反応できるはずもない。

 懐へ飛び込み横へ起き上がって見えている胴体へ鎌の刃を当て一回転。

 勢いのままそいつの後方で着地すると同時に音を立て砂埃が立つ。


 バジリスクを上下に両断。

 さらにレイのファイアボールも追撃する。

 さて、どうだ?


 砂埃の中で赤い光が輝く。

 視界が良好になると目の前にはバジリスク。

 やはり切断したはずの体がつながっている。


 駄目か。


 声にならないバジリスクの威嚇の声と共に牙が迫る。

 何度突っ込んできても俺には当たらない。

 横飛びで回避し、ついでに口を再び鎌で横に裂く。


 「盗む」


 裂いた感触の後、鎌を解除して影の手を顕現させて《盗む》を使用する。

 容易にその手はバジリスクの体を掴みとる。


 バジリスクはそのまま這いずり、俺との距離を取った。


 その間に持ち物アイコンを確認する。

 スキル《絡みつく》を盗むことに成功したようだ。


 バジリスクがこちらに向き直る頃にはもう裂いたはずの口が再生している。

 いたちごっこだな。


 再生能力のある敵の攻略法はどうだったかな。

 再生できない急所を攻撃する? それとも再生を使えないほどまでズタズタにする?

 さて、ゲームのそれがここでも役に立つか。


 いや、それよりもまずはこいつからまだ盗むことができるはずのスキルを盗む。

 この魔物の特徴から《絡みつく》以外にも盗めるものがあるはず。

 

 この魔物の攻撃パターンは少ないらしい。

 とりあえず近距離攻撃しかない。

 そのおそらく強力であろう毒牙で攻撃をするか、長い体で締め付けるか。

 この2択くらいしかないのだろう。


 そしてやはりバジリスクはその体を砂漠に這わせ向かってくる。

 俺の体を中心として回るようにその体を動かし、できた円をどんどん小さくする。

 

 「そんな攻撃じゃ効かないって」


 俺はまた跳び上がってその包囲を脱して、置き土産に《盗む》。

 さらに着地と同時に再び《盗む》。

 2回とも影はバジリスクを捕らえ、何かしら盗むことができたらしい。


 攻撃が当たらないことに魔物もいらつくのだろうか。

 その奇声の音量が上がっている気がする。

 でも、だからといって考えなしの突進が俺にあたるはずもない。


 斬撃が駄目ならこれならどうだ。


 「オーガスタンプ」


 上空から太く大きな握り拳でバジリスクを押し潰す。

 太い大きな角の生えた人型の魔物『オーガ』から盗んだスキルだ。


 長く太い体もその圧力に耐えられず綺麗にくの字に折れ、砂煙が上空高く舞う。


 「盗む」


 ついでに《盗む》も使用。

 しかしこれはバジリスクの体をすり抜けたようで、影が獲物を掴むことなく消える。

 ――もう盗めるものはないらしい。


 持ち物アイコンから先ほど盗んだ物を確認。

 スキル《毒牙(強)》、スキル《再生》が追加されていた。

 上等。

 特に再生のスキルは使い勝手が良さそうだ。


 さて問題は、だ。

 このバジリスクをどうやって倒すか。

 砂煙が消えるとやはり再生されたバジリスク。

 打撃系攻撃でも駄目らしい。


 「ウィンドエッジ」


 俺の後方から風の刃がバジリスクの頭部の冠を掠める。


 「ロビン! もうそろそろMPが切れるわ」

 

 レイのMPはもう少ないらしい。

 正直想像に比べてそこまで強くはないこの魔物。

 ギゼノンがこの魔物によって砂漠地帯になったというのは盛られた伝説だろう。

 だが、倒しきるのは中々容易ではない。


 この再生能力をどうにかしなければジリ貧だ。

 さあ、どうするか……。


 俺は弱点はないかバジリスクの体の隅々まで見渡してみる。

 俺が攻撃した部分は切り傷や打撲の跡はない。

 完全に再生されているな。


 「――ん?」


 こいつの王冠、先が欠けている所がある?

 あそこは今レイのウインドエッジが掠めたところか。


 「なるほどね」


 確か再生する時、毎回この冠が赤く輝いていた。

 能力を使う際の現象だとは思っていたが……。

 なるほど、この冠こそが再生能力を(つかさど)る心臓部。

 

 ならば話は簡単だ。


 「バットンウィング」


 黒く、少しサイズの大きい蝙蝠(コウモリ)の様な魔物『バットン』。

 そいつから盗んだスキル《バットンウィング》は飛翔のスキル。

 影が俺の背中で蝙蝠のような羽を形成する。

 

 「さて、いくぞ。バジリスク!」

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