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永遠の刹那。  作者: ブルー
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命は刹那の如く。

「進め!進め!殺せ!」

勝利の為に突き進む同士の声か、はたまた敵軍の咆哮か。

市街戦に突入した戦闘はまさに地獄であった、共に生き抜こうと誓った戦友は目の前で死んでいった。私もこうやって呆気なく死ぬのか。


命ある限りいつか死ぬ、むしろ死ぬからこそ命なのかもしれない。


いつの間にか俺は地面に這いつくばっていた、意識が遠のいていき徐々に迫り来るのは夢のような安らぎ。

このまま死ねば楽になるのかもしれない。

この戦争という理不尽の渦の中で、もはや自分の意思など関係無く、殺戮をして、されて。多くの敵を殺し多くの同士を失った。しかし、殺した敵も命ある人間であり、自らの意思など関係無く我らの同士を殺し、我らに同士を殺されたのだろう。

私の死に際もやはり呆気なかった。

魔法研究の実験材料にすらされない一兵卒が敵に蜂の巣にされて生きていたら奇跡である。

まだ微かだが意識がある私を敵兵が踏んでいく。痛みなんてもう感じなかった。

夢のような安らぎはもうすぐそこまで迫っていて意識が完全に乖離するまでもう長くはないだろう。


しかし、私は死にくなかった。この戦いに負けたくなかった。


安らぎ、そんなものはいらない。そもそも安らぎなんて私の人生に一度も無かった、安らぎを知らない者が安らぎを求めることは無い。あるとすればそれは好奇心のような下らない心からくるものである。

しかし、遠のいていく意識で迫り来る安らぎを拒むのは難しい、見えざる手で手足を掴まれて何処かへ引きずり込まれるような感覚、または重りを付けて水中で沈んでいくような感覚。

決して抗うことはできない。薄い意識の中でそう確信した、だから抗うような事はしなかった。

やがて戦争が始まる前の空のような青色が見えて安らぎに包まれた、水に浮かんでいるような感覚だ。

もう同士の声も敵の咆哮も聞こえない、黒い何かがゆっくりと近づいてくる。死神か、死神なのだなお前は…なら、俺を見逃してくれ。確かにここで浮かんでいるのは心地が良いが、我々は勝利しなくてはならない。


私は死にたくない。負けたくない。


散るからこそ花は美しい。いずれ尽きる命だからこそ懸命に生きるべき。

この類の物言いは実に不愉快である。

美しい花は永遠に咲いていれば良いのだ。

命だって永遠であればよいのだ。

しかし永遠などない。

1から10までカウントすれば散る花があるとすれば当然1から10までカウントすれば散るのだ。

ならばゆっくりとカウントすれば良いのか。否、不可能である。何故ならばそのカウントをするのは人間ではない。この世そのもの、世界だからである。世界は無慈悲だ、時間というカウントを止めることもゆっくり数えることもしない。


しかし、その世界を欺くことならできる。


我々の意思を集結させ、世界に対抗する魔法使いを創る、我々に勝利をと願い死んでいった同士よ。今その願いと執念をここに集結させよ。

そしてこの無慈悲なる世界を騙そう…。

死なないために、生き残るために、この戦争に勝利するために。


世界を欺き、カウントを間違えさせればいい。

何度も何度も時間を巻き戻し、永遠に1からカウントさせればいい。

綺麗な花を、共に勝利すべき同士の命を、勝利の為に殺す敵の命を、人の命を。永遠を。再現するのだ、そして幾度もの死と敗北を超えて勝利する。

その為に、世界に語りかける。


Count(世界よ、) from(一から) one(数えよ)


私、そして我が同士の命が失われる前から、我々の敗北の前から数えろ。

永遠に。


刹那の如き命を永遠に。


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