チーム結成
「戦力を拡大させるまで差別派の攻撃を耐えられるかどうかが鍵になる、そういうことなんですね」
誠一郎がそう言うと天王寺杏奈の目が驚いたとばかりに見開かれる。
「ここには二重の結界が張られていてそう簡単には中に入れないようになっています」
「だけど差別派のリーダーの男には普通の結界は意味がありません」
と地面に目を向けると
「それはどういう意味ですか?」
そう誠一郎が聞くと天王寺杏奈は顔を上げて
「日本支部のリーダー、大城御霊の固有武装は断魔の手という物でこの固有武装で触ったものに対して向かう魔力を弾くという物です」
いいですか。
「奴には魔法や魔力を通した固有武装は通じないんです。しかし」
「方法はある」
と誠一郎が言葉を繋ぐ。
「まさか、もう攻略法を導きだしたのですか?」
杏奈が尋ねると
「いいえ。しかし渡り合う方法はあります」
それはすぐには効果が出ないが攻撃を耐えられれば戦える可能性が出てくるものだった。それは、
「まずはあなたが信頼できる人かどうか確かめさせてください」
「解ったわ。それじゃあどうすればいい?」
「杏奈先生、クラス委員長の朝井くんの目の前に立ってください」
杏奈は朝井の前に立った。確かめる方法、それは相手の心を読む固有武装を持つものが杏奈の心のなかを読むことだった。
「ありがとうございます。嘘をついていないことがわかったので渡り合う方法を教えます」
そう言ったとき、ホームルーム終了の鐘が鳴ったため
「チャイムが鳴ったためこの話の続きは帰りにします」
そういうと、ホームルームを終了し教室から去った。
授業を乗り越えて帰りの時間になった。誠一郎はホームルームの時間では終わらなかった差別派と渡り合う方法について説明した。
誠一郎が言った意味を解釈するとこうだ。
誠一郎はすべての体術を習得していて、その体術を使ってリーダーの男を倒すというものだった。
「そんなので本当に成功するの?」
不安そうに聞いてきた。
リーダーには魔法や魔力を通した固有武装は通じないということで固有武装無しで素手で戦うということだった。
「問題ありません。リーダーについては僕の方でどうにかします。そして覇王剣祭の開催を早めてくれますか」
それは何故か、と杏奈が聞くと、
「この学園はいつ攻められてもおかしくない状況です。なので早めに覇王剣祭を終わらせて学生もいざとなったら戦えるようにしておくことがいいと思います」
「解ったわ。今すぐ相談してみるね」
杏奈はそう言うと学園長室へと向かった。
学園長室
そこには学園長、神崎舞姫を呼んだ張本人の天王寺杏奈の姿があった。
「神崎先生、いいえ学園長、お話があるのですが少しよろしいですか」
杏奈が学園長を呼んだ理由、それは先程誠一郎と交わした約束のことを学園長に相談するためだった。
「何ですか?天王寺先生」
「あの、実は先程クラスで覇王剣祭の開催を早めて欲しいと赤城くんから言われました」
どうするか杏奈が問おうとしたとき学園長が口を開いた。
「貴女には言っておいた方がいいわね」
実は
「もう既に新旧平等派の上の方から覇王剣祭の開催を早めるようにとお話があったんですよ」
「えっ?そうなんですか」
と驚いたように杏奈。
「明日、臨時集会を開きます。そのときに覇王剣祭のことについては言いますよ」
そして
「さらには、差別派に居場所が割れたということで学園都市を移動することになっています」
もう話は終わりかと聞いてきたので杏奈は話を切り上げると学園長室から姿を消した。
学園長室から姿を消した杏奈はすぐに電話を始めた。
「もしもし、誠一郎くん。私だよ、天王寺杏奈。さっきの覇王剣祭の開催を早めることについてだけど」
言葉を発する前に誠一郎が質問をする。
「どうでした?うまくいきました?」
「勿論だよ。来週発表してゴールデンウィーク明けの月曜日から予選が始まるみたいだよ」
「流石天王寺先生、仕事早いですね」
杏奈はそんなことは最低限必要なことだから誉められるようなことではないと思った。
「まあ、そういうことだからチームの名前とメンバーについては考えておいてね」
お互いに帰りの挨拶をすると通話を終えた。
「誘う人はエリスしかいないな。今日のうちに了承をもらって明日から練習に入れるようにするか・・・」
最後に誠一郎はそう呟き家路に着いた。
家に着くとエリスは家にいた。それは別におかしくはない。何故なら、F組のホームルームのときに誠一郎が天王寺杏奈に新旧差別派について質問してその答えが長引いてしまい、その後もいろいろと天王寺杏奈と話をし、話が込み入ってしまい遅れたということだ。
「ちょっと話があるんだけどいい?」
先程、天王寺杏奈から来週には覇王剣祭団体戦が始まると連絡があり、それに出るためにはチームを作ることが必要だった。
家に行く前に誠一郎は西門正春に声をかけたがもうペアが決まっていたらしくチームに入れることはできなかった。ルームメートで咲羅とは違い話す機会が恵まれているエリスを誘うことにした。
「なんですの、話というのは」
訝しげに問いを放つとその答えが帰ってきた。
「実は再来週から覇王剣祭がはじまるんだけど、団体戦でパートナーとして出てほしいんだけどいいかな」
「勿論いいですわ」
だけど
「こちらからもひとつお願いがあるんですけどいいですか」
誠一郎は先を促す無言を放つ。するとエリスは
「覇王剣祭の個人戦にも出たいから誠くんも個人戦に出て。そして誠くんと戦いたいんですの」
エリスに団体戦に出て欲しいとおねがいしたのだ。だからエリスのお願いを断れない、そう思った誠一郎は
「解ったよ」
俺だけがお願いを聞いてもらえるのは不公平だからなというと
「それじゃあ交渉成立ですわね」
「よし、エリスが団体戦に出てくれることも決まったし夕飯でも食べに行きますか」
「行きましょう」
そう言うと二人はいつも食べに行くファミレスに向かった。
ファミレスに着くとそこには西門正春がいた。よく見ると知らない男子もいた。
「正ちゃんじゃないか」
すると声を掛けられた正春はこっちを振り返ると誠一郎の姿を目にして驚いたように
「やあ、誠一郎。ここで会うなんて奇遇やね」
「そうだな。お前もここでご飯食べてたんだな」
「まあな。ここの飯、むちゃ美味いもんな。誠一郎たちもここに食べに来たということは、ここの味が気に入っとるってことやもんな」
何故か自慢げに話しているため、正春に、なんでそんな自慢げなのか聞いてみると
「だってここの店、石路明博がシェフやってるトコだし」
ここの店は石路明博がシェフとして働いている店だ。石路明博は世界有名シェフランキングで毎年ベストテンに入るほどの腕前を持っているのだという。
「そうだったんだ、正ちゃんオススメの店ならここを選んだ甲斐があったよ」
「そういえば昨日さ、校長に再来週から覇王剣祭が始まるって連絡があったんだけどさ」
と誠一郎。
覇王剣祭とは1年に1回、夏休み明けから冬休み前にかけて覇王学園で行われる学園最強を決める行事だ。それを上からの指示でゴールデンウィーク明けから夏休み前に変更したため、もうすぐ予選が始まることになったのだ。
「その話はもうしってるよ」
と正春。誠一郎は
「何故その事を知ってるんだ。その話は先生達しか知らない情報の筈だけど」
そう言って、一瞬で後ろに下がり距離をとる。
「そんなに警戒しなくてええよ。ちびっと前に差別派が攻めてきたのは覚えとるだろ。差別派と戦ったあと、副校長からその話を聞いたんだよ。学生が差別派と戦えるようにということで早めにやるんだってさ」
副校長ならそのことを知ってるか、と一人で納得する 。
「それで覇王剣祭がどうかしたのかい?」
正春がそんなことを聞いてきた。覇王剣祭には個人戦と団体戦があり生徒は個人戦か団体戦のどちらか1つに出場できる。勿論二つ出ることも可能だ。
「俺とエリスは団体戦に出るんだけど、正ちゃんは誰と出るの」
そう聞くとエリスが口を挟む。
「ちょっとまってよ、決めたでしょ。出るのは団体戦だけじゃない、個人戦も出るって」
「あ、ああそうだったな」
ごめんごめん、と軽く謝り
「で、どうなんだ」
と誠一郎は正春に答えを求める。すると
「わしはあいつと出るよ」
といい右後ろに顔を向けた。