覇王学園入学
わしの名前は、西門正春。君の名前はなに」
「俺の名前は、赤城誠一郎、これからよろしく。あとお前のこと正ちゃんって呼ぶわ」
「こちらこそよろしく。」
俺は正春と握手した。
目の前のツンツンヘアーの男は西門正春といい、京都府出身の一年生らしい。
固有武装を使えるようになったのは、今から一年ほど前だという。
「それで、なんで正ちゃんっていう呼び方なん?」
「正春って正しい春って書くんでしょ?正しいはしょうという読み方もあるから、正ちゃん。わかった?」
「そういう意味やったんやな」
やっと理解したわーみたいな顔をして言った。
「あんたのお父ちゃんってもしかして赤城栄二郎なん?」
「そうだけど」
まさか赤城栄二郎を知ってる高校生がいたとは。少し驚いた。
誠一郎の父親、赤城栄二郎は18年前に引退してから、姿を隠していてWOCでも行方はわかっていなかったみたいだ。
「そらすごいな。赤城栄二郎のぼんに会えたんもなんかの縁やな」
西門は興奮しながらそう言った。
「そういえば正ちゃんの固有武装ってどういうやつ?見せてくれよ」
「わしの固有武装?ええよみせたるわ」
そう言って西門は自分の固有武装を出した。そこにはペンデュラムがあった。
「それが正ちゃんの固有武装?名前は?」
名前を聞いてもわからないとは思ったが、一応聞いてみることにした。
「こら想現っていう名前の固有武装だよ」
「それってどんな能力をもってるの?」
教えてもらえるようなことじゃないとは思うが一応聞いてみた。
「そら教えられへんなあ」
やはり予想していた通りの答えだった。
「それじゃあ、君の固有武装もみせてくれへん?」
彼は俺が固有武装をもっていないことを知らないようだったから事実を教えることにした。
「俺って固有武装、まだもってないんだよ」
「は?」
びっくりして固まっている正春。
「いや、固有武装持ってないんだって」
「ほなどないやってこの学園に入学してきたん?」
その疑問は当たり前に誰でもが思うことだった。何故なら、この学園には固有武装を使える者が集まっていて使えない者は学園都市内の別の学校に行くからだ。
「それがおれにもわからないんだよ」
本当だ。俺の父さんと稽古しているとき、父さんに固有武装はうちにはないといわれていたからな。
「ほな今までの言葉そのまんま信じる訳にはいかないな」
それは確かにそうだ。素性のわからない相手に背中は見せられない。それなら、
「これならどう?俺の武器を正ちゃんに渡して、正ちゃんの固有武装の能力を俺に教える。それならいいだろ」
「そないならこっちもひとつええか?明日、追い出された女の子と決闘するんやろ。それをわしが一番みやすい位置に座り品定めする。それでどう?」
そうくるか。だが、自分のクラスには仲良くなれそうな人物がいないしそれ以前に断る理由もない。友達をつくるチャンスをそう簡単に棒に振るわけにはいかない。だから、
「わかった。それなら早くやろう」
こうして俺は武器を正ちゃんに渡し、正ちゃんの固有武装の能力を教えてもらった。
正ちゃんの武器の能力は自分の頭の中で考えたことを創造する能力だった。
「よしこれで交渉成立だ。それじゃあ飯食いに行こうぜ」
正ちゃんに了承をえられた。今から二人で飯を食いに行く。
飯屋からかえってきて、
「明日も早いからもう寝よう」
「そやな。ほなおやすみ」
俺と正ちゃんはもう寝ることにした。
明日はクラスと能力値の結果、適合者ランクがわかる。
放課後には決闘もあるから俺はすぐに寝た。
翌朝、目が覚めたらもう既に正ちゃんは起きていた。
「おはようさん、誠。昨日はよく眠れたかい?」
「ああ、お陰さまで」
眠い目をこすりながらこたえた。
「そうか。そらよかったよ」
正ちゃんは嬉しそうだった。
すごく優しいせいかくなんだなとかんじた。
「そういえば今日はクラスと測定結果の発表だったな。正ちゃんはどう?」
「わしのクラスはC組やったよ。あとBランクやったよ」
携帯をみるとそこにはC組と書いてある。
測定結果も見てみると適合者ランクはBランクになっていた。
他にも魔力量はB+、魔力制御はB+、攻撃力はB、防御力はCランクとなっている。自分のことではないがホッとした。
「誠、君はどうやった?もう発表されてるやろ」
「ああ、いま確認するよ」
そういって俺はクラスとランクを確認する。
クラスはE組。クラスにはおかしいところはない。問題はそのあとだった。
適合者ランクはFランクだった。
魔力制御はAランクだが魔力量、攻撃力、防御力はいずれもFランクとなっていて力が弱いとすぐに分かる。
「は?」
なんだどうしたと正ちゃんが携帯画面を覗きこんだ。
「え?」
二人揃って携帯を見て唖然とした。
「誠って固有武装もっとるんだよね」
「いや。持ってないけど。」
おい。昨日の話きいてなかったの。この事実にもまた呆然とする。
「そうか。もってへんなら納得いくわ」
「というか、なんでこんなランク低いの」
「昨日の話聞いてへんかったの。測定は固有武装を使った状態で検査を受けるって言っとたよ」
「そうか。ならいいか」
別にいいというわけではない。
「ほな学校に行こうか」
「ああ。もう行こう」
どんな生徒がいるのだろう。ワクワクしながら学校へと向かった。
始業式終了後
1年E組の教室
「やあみんな、おはよう!私は覇王学園の学園長、そして1年E組の担任の神崎舞姫です。気軽に話しかけてきてね」
学園長の神崎舞姫は若く見えるが実際は41歳のおばさんだ。
「そしてE組には適合者ランクが低い人が集まっています。だけど心配はいらないよ。受ける授業は一緒だからね」
室内はざわめきから安心した声に変わる。
「学園内には序列があります。この序列は1年に1回の覇王剣祭、一ヶ月に1回ある模擬戦の結果によって序列は変わることがあります。そして序列によって施設の受けられるサービスが変わってきます。昼からは、学級委員長と係を決めます。それでは解散」
クラスの面々はみんなどこかへいってしまった。
俺もクラスを出た。すると、
「学園長、話があります」
前に会った女の子がいた。
「なんですか?エリスちゃん。話があるなら外でしましょう。」
「君も一緒にくるんですのよ」
3人で歩いて学園長室にはいる。
「それで話というのは?」
学園長は話の先を促す。
「今日の放課後、そこの彼と決闘を行いますわ」
やはりそう来たかと思った。
「決闘を行うには、先生がついていないといけないわ。それでもいい?」
「はい。構いませんわ」
決闘を行うつもりしかないのだろう。エリスと呼ばれる彼女は即答した。
「それで相手は?」
「そこの彼ですわ」
「分かったわ」
もう話が決まってしまった。俺に拒否権はないのかよ、という悲痛な叫びは心の中に留めておく。
すると学園長がこちらに近づいてきて小さな声で
「災難ね赤城くん。でも私としては気になるなキミのこと」
な、何言ってるんだこの人!
「だってあの人に言われて学園に入れたけど、昨日の測定結果を見る限りでは固有武装は持っていないし、魔力制御が異常にできるだけのFランクなんだもの」
ぐぅ、ごもっともだ。返す言葉がない。
「キミにどんなことが出来るのか見せてもらうわ」
そう言うと歩いていった。
そして学級委員長は朝井という男に決まった。
「それでは明日から授業が始まります。明日から頑張りましょう」
今日はこれで終わりだ。
だけど一番大事なことがひとつ残っている。だから俺は闘技場に向かった。
そして闘技場。
俺が闘技場に着くと、もう既に観客席には西門正春が、下にはエリス=ラティアークと学園長神崎舞姫が来ていた。
「あら、おそかったわねぇ赤城くん」
「待ちくたびれてしまいましたわ」
時計をみると約束の時間を2、3分オーバーしていた。
「赤城くん、だっけ。君の父親って赤城栄二郎なんですって?」
「ああ、そうだけど。それがどうかしたのか?」
何故そんなことを知っているのか気になったが質問を飲み込んだ。
「それならどんな固有武装なのか楽しみですわね」
「・・・」
答える必要はないと判断し黙った。
「そう言えばキミってFランクよね」
「なぜそのことを」
「学園長に聞きましたわ。それで手加減の必要はないからと言われました」
ああー、ヤバイぞ。本気出さないとまける。
「だから本気出さないと負けますわよ」
こ、心の声を読まれた?
「分かりやすい人、顔にスゴイ出てますわ」
クッ、一言唸ると顔を真剣なものにした。
「二人とも準備はいい?それじゃあ固有武装を幻装形態に替えてね」
エリスは自分の固有武装、斬鬼を胸から幻装形態で出した。俺は背中の剣を抜いて構える。
先に宣言しよう。これは固有武装ではない。普通の剣だ。
「それがあなたの固有武装?みたことないわね」
もう一度言おう。これは普通の剣だ。固有武装ではない。
二人の間に沈黙が流れる。その瞬間、誠一郎から、ものすごい量の殺気が流れ出る。
・・・な、なにこの人、すごい殺気。この殺気は今まで向けられたどの殺気よりも強い。本当にFランクなの?
この殺気を正面からモロに受けているエリス・ラティアークは、恐怖で汗が止まらない。
「それでは今から赤城誠一郎対エリス=ラティアーク、模擬戦を始めます」
と声が聞こえた。
「模擬戦・・・開始!」
遂に模擬戦が始まった。
続く