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オールドファッションⅡ  作者: 僕と久保
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It's All Right With Me


 終業のチャイムと同時に少女――アンジェラはうんと伸びをした。疲れと怠惰の混じった欠伸を噛み殺し、煩わしい勉強の余韻を蹴り飛ばす。教科書を鞄に詰める中、横合いから元気な声がかかった。


「ねえアンジェラ、今からみんなでカラオケ行かない?」


 クラスメイトだ。仲のいい同級生に対し、アンジェラは申し訳なさそうに手を合わせる。


「ごめん、今日は家の手伝いあるし……」


 アンジェラは現在、中学一年生だ。本人は勉強に対して意味を見出していないが、弟子入りする際オールドと約束してしまったが故に勉強はしている。約束では、高校までは通うことが決められていた。

 アンジェラ本人は一刻も早く独り立ちできるように学校へ行く時間も仕事をしたいのだが、オールドはそれを頑なに認めようとしなかった。曰く、「普通なこともできて初めて仕事人として完成する」そうだ。アンジェラ本人はその意味を測りかねていたが、そうでもしないと弟子入りできないため、渋々従っている。何度か高校進学はいらないと言ったが、オールドは頑として認めなかった。変なところで頑固なのだと、思ったことは記憶に新しい。

 アンジェラが断るのを見て、クラスメイトは残念そうに眉の端を下げた。

「おじさんの手伝い? も大変なのね」

 殺しの収支の計算があるしね。とは、口が裂けても言えない。クラスメイトはルツボの中とはいえ比較的表向きの人間ばかりだ。そこで人殺しの手伝いをしているとは、言いにくい。言ったところで、メリットがないことは目に見えていた。

 それにしても――とクラスメイトが呟く。

「年の離れたおじさんと一つ屋根の下って、なかなかすごいことするわよね。アンジェラも」

 そうした話題は願ってもない思春期だ、放っておかないわけがない。しかしアンジェラは、あははと笑って手を振った。

「そういうのじゃないわよ。思ってるようなドラマなんてないわよ、あたしとオールドの間には」

 クラスメイトと道中一緒に歩きながら、適当な道で分かれる。クラスメイトから何か面白いことはないのかと聞かれるも、特にこれと言ってドラマ性はなかった。

 ――まあ、人殺しまくるくらいかしら。二人で。

 言葉を呑み込み、一人帰路へ。今日は道具の整備と、オールドからナイフテクニックを教わる日だ。混沌区域を横切りながら、そろそろ今月の領収書を整理しようとも考える。

 一回くらいオールドから一本取れるようになりたいなと考える中、視界の端によたよたと歩く女性が目に入った。その背後からは銃を持った男が、淡々と追っている。銃を持つ男はルツボにいれば飼い犬と同じくらいよく見るが、何やらただならない事情があることだけは見て取れた。

 好奇心が、かりかりとくすぐられる。


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