1話-④
無人駅、切符の買い方すら人に聞かなければ分からないような駅なのに、聞くような人もいないのでお手上げである。電車が来るのかも疑問である。
そんなある種不気味とも言える場所に、より一層不気味さを加えているのは、錆びたコインロッカーが十数台も並んでいるからかもしれない。
そのコインロッカーの一つを前に、女性が佇む。
ビールが効いているのか、美しい笑顔が少しばかり不気味である。
鍵を差し込む、鈍い音を立てて、開いた。
ざらざらと、まだらに茶色い取っ手を掴み、引く。
中には、可愛らしいテディベアが悲し気な表情で座っていた。
「会いたかったわ」
殺し屋のメールアドレス。それとは別に、こんな都市伝説をご存じだろうか。
そのテディベアを抱いた者は、一番憎む人物をこの世から消し去れる。
そんな、他愛もない噂である。
そう、他愛もない、ただの噂である。
「会いたかったわ。死神テディベア」
テディベアを優しく抱え上げ、そっと抱く。
ちなみに前述の都市伝説には、少し訂正が必要である。
テディベアの首に巻いてあるスカーフの首根っこに、小さなメモが挟んである。
そのことは、正面から優しく彼を抱かなければ、気がつくことは不可能である。
メモの中には、一見、意味のなさげな数列が並んでいる。
その数列に規則を見出だし、正しく理解した時、その者は、一番憎い人物を殺すことが出来る。