第二話~少年の思考~
少年は考える事で逃げてきた。
『自分らしさとは何か』なんて気難しい事から『ゲームで勝つためにどうしたらいいか』なんてどうでもいいことまで、考える事でその問題が解消された気がして少し安心した。
そして今日も、暗い夜空の下で少年は考える。
ーーーなんで俺は幸せになれないんだろう。ーーー
買って欲しい物はある程度高価なものでも買ってもらえる、美味しい料理だって食べさせてもらえる、人と話す機会だってある。
でも何故、自分は満足出来ないんだろう。
そんなことを考えているうちに少年は目的地につき、いつもの乳酸飲料を手にレジまで行く。
「これ、あと肉まんもください。」
少年は店員が金額を言う前にお金を出すと、買った物を手に店を出た。
「ふー、ふー、はむっ... やっぱ熱い...」
饅頭を頬張りながら帰っていると、少年はあの日の蛾を見つけた、あの日の蝶のような蛾だ。
「覚えてる?」
少年がそう言うと、蛾はひらひらと電灯の上から降り、少年の肩に乗った。
「やっぱ気のせいじゃなかったか」
少年は石の階段に座り、その蛾に再び話しかける。
「言葉が分かるならさ、僕の悩み聞くだけ聞いてよ。」
「僕ね、裕福な家庭に生まれたのにとっても寂しいんだ、何でだと思う?」
するとその蛾は少年の肩からまたひらひらと飛び立ち何処かへ行ってしまった。
「・・・そうだね、僕は一人なんだ。君ぐらいしか相談する相手が居ないほどね。」
少年は饅頭を食べ終わると、また再び家に帰り始めた。
また一つ分からないことが分かった、そう自分に言い聞かせて。