始動
この街は、日常と非日常が重なった。なんとも奇妙な空間だと俺は思う。
10月、夏の雰囲気が徐々に消え、刻々と冬の気配が近づいてくるようなそんな穏やかなある日。俺が営むカフェの中の会話は、そんな穏やかさとは一変し、物騒な話が所々聞こえてくる。
「なぁ、聞いたか?あの話」
「聞いた聞いた、また出門ライダーズとサツの衝突だろ?もう何度目だよ」
「なんか最近になってやけに増えてきたな」
「出門ライダーズってあれだろ、暴走族集団」
「けどその他にも色々やってるらしいぜ。元が走り屋だったっていうだけらしい」
「今回の衝突で、交機が一人殺られたってさ」
「出門もやべえけどさ。エデンも最近動き出したらしいぜ」
「えっ、俺はメルトダウンとサツが裏で手を組んだって話を聞いたけど…」
「それはガセ情報だろ?けど、サツもあんまり信用ならねぇな」
この街は表の顔と、裏の顔がある。
表は、賑やかで楽しい平和な街。そして裏の顔は、いくつものチームが日夜争いを続ける物騒な街だ。
この街は遊びに来る分には楽しいところだが、人が住む場所ではないと俺は思う。人が住むにはあまりにも危ない所だからだ。
しかし、この街の人間はそういった抗争が当たり前であるかのように、非日常が日常になりつつある。それはとても恐ろしいことだと俺はそう感じる。
「マスター、カプチーノをおかわり」
そんな風に考えていると、カウンター席に座った客からオーダーが入った。なんというか客というべきかどうかは分からないが。
手際よくカプチーノを淹れ、差し出すと客はそれと、と言い
「掲示板に通達。今夜10時ミーティング。場所はカフェ『ミラノ』だそう」
そう、俺もまた非日常の世界の住人なのだ。
拙い文章ですが、少しでも目を通してくれた方、本当にありがとうございます。
感想を書いてもらえるととても嬉しいです。