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こちら冒険者ギルド別館、落とされモノ課でございます。  作者: 猫田 蘭
第一部-3章<エルフとギルドと魔女の檻>
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  六階層に入ったところで、私達はちょっと早めのキャンプを張った。あと半日足らずで辿りつける距離らしいので、無理せずに英気を養っておこうって事で。

 ついでに、ルートの打ち合わせをするのである。


 この遺跡の第六階層の探索は、実はまだ半分ほどまでしか進んでいない。

 ただ今絶賛探索され中エリア、なのだ。


 回収対象がある場所は、今回初めて「折れぬ牙」が見つけたお部屋で、当然るーきゅんさえ足を踏み入れたことがない。

 まぁ、このメンバーなら大丈夫だとは思うんだけど、万が一はぐれたときにどこに向かえばいいのかを打ち合わせておくのが、正しい冒険者の姿であるらしい。(と、ここ数日で悟った)


 冒険者さんってのは、ほんとに気の休まらない生活してんだなぁ。帰ったら改めて、ミサさんに教え込まないと……。

 あ~ぁ、ミサさん今ごろどうしてるんだろ。シバさんちに迷惑かけてないといいんだけどなぁ。それとも息子さんとキャッキャうふふしてるんだろーか。あぁうらやましい。

 私が帰る頃には、能力発現してるといいなぁ。できればこう、食うに困らない程度に使える能力。


 テキパキとキャンプ支度を終えた私達は、壁に寄り掛かって(これも、基本中の基本らしい)座りこんだ。それぞれ夕食を手にしている。

 ちなみに、私の今夜のごはんはお茶漬け。なんか、新作って書いてあったから買ってみたんだ。

 レトルトパックの注ぎ口に水を入れて、真ん中をぷちっと押すとあら不思議、あったかいお茶漬け完成! ただし、パックの吸い口から直接食べましょう、って熱いよ! 改善の余地ありだよ!


「部屋を見つけたのはヴィトですのよ」

 よくわからない果物味のおかゆ(妖精さんサイズ)を片手に、キリルさんがドヤ顔で説明を始めた。

「ルークレストは、南西エリアの無限回廊をご存じ?」

 るーきゅんはこくんと頷いた。……なぜ私には聞こうとせんのか。そりゃ確かに、私は冒険者さんじゃないけどさぁ、予習はしてきてるんだよ?


 確か、一回入ると三日間くらいくるくるくるくる同じところを歩かされる仕掛けだよね? 一定の距離を歩くと、最初の地点に戻されるっていう。

 なんか、イメージ的に回転寿司のレーンを逆走してる感じなんだけど。


「最近この遺跡の六階層探索は、どのパーティーも行き詰まり気味でしょう? 私たち、思い切って初心に返ってみることにしたのです。それで、あの場所に行ったのですけれど」

 ただの時間の無駄だと、最近は誰も寄りつかなかったその無限回廊の中で、ヴィトちゃんはふと違和感を感じたのだという。


「ちょうど、ぼくのあたまくらいのばしょに、ちっちゃなあながあったんです!」

 それは、ピンで刺したくらいの小さな穴だったが、一定時間歩くと出てくるその穴が、ヴィトちゃんはどうしてもどうしても気になってたまらなくなり、パーティーの足を止めた。


「それで、おもいきってはりをさしてみたんです! そしたらぷしゅ~ってひらいて! たっちぱねるがでてきたんです!」

 そのタッチパネルの暗号だかなんだかを学者組が解析して押してみたところ、壁がぱくりと割れて隠し部屋が現れた、と。ふむふむ。


「ヴィトちゃんすごいね! お手柄だね!」

 ぱちぱちぱち、と拍手すると、ヴィトちゃんははにかんで「きゃ~」と顔を隠した。か、かわいい。

 ヴィトちゃんの頭をぐしゃぐしゃとなでながら、イジェットさんがにぃっと笑う。一応もふもふ分類なのに笑っても怖いってどういうことなの。


「しかもだな、聞いて驚け。なんとその部屋は『神殿』だったんだ」

「へぇ?」

 あ、るーきゅんが! るーきゅんが興味を示した、すごい!

 確かになぁ、新ルート発見とか隠し部屋発見ってのはそれだけでギルドからかなりの報酬が出るくらいだからね。つまり、冒険者さんにとってはそれほど重要な情報ってことなんだよね。


 しかもそれが魔物が寄りつかない聖域とくれば、その価値は計り知れない。

 発見報酬と、公開同意料と、使用料と……。すげーや、「折れぬ牙」のみなさん、もう一生安泰じゃないか?

 まぁ、四階層でのあの事件がどの程度響くかにもよるけど。


 実はあの事、まだ報告してないんだよね。

 遺跡内での電波使用料ってバカ高いから、一日一回、生存報告くらいしかできなくってさぁ。あとでレポートに書いて提出しなきゃいけないんだけど、さて、どの程度書くかなぁ……。


 ここ数日で絆されちゃった上にヴィトちゃんが気がかりでなぁ。

 でも、例の鳥のことは報告しなきゃいけないし。オシリスの使用理由も言わないわけにはいかないし。るーきゅんにも悪いし。

 うぅ。


「しっかしなぁ、検証だの回収だの命じられたお蔭で、今回はあいつらにも不便掛けちまったなぁ」

 イジェットさんが携帯食料(駆け出しの頃の気持ちを忘れないために、彼はあえてレトルトを拒むのである)を噛みちぎりながら、残り少ないお酒をちびりちびりやりだした。


 なにを隠そう、私が持っていたお料理用のお酒である。ジーさんのお話をしてあげるついでに献上したら、だいぶ態度が柔らかくなった。

 そうすると不思議なもので、キリルさん、リオウさん、ワンさんの態度も軟化して、いつのまにか「暴食殿」ではなく「ミズキ殿」と呼ばれるほどに打ち解けた。


 え、エライヒトへの貢ぎ物効果ってしゅげぇ……!

 いやまぁ私、ヴィトちゃんとだけでよかったんだけどね。

 特にキリルさんとはどうもウマが合わん。絶対るーきゅんをねらっているに違いないんだあの羽虫娘っ!(ぎりぎり)


「明日は、ミズキ殿に手料理でも振る舞ってもらうかな」

「久々の出来立てのメシか……」

「あちらには確か、まだ一本だけブランデーが残っていたはずですから、つまみになるものが良いですね」

「ルークレスト殿は飲まれるのか?」

「……ん。フツー」

 男性陣が酒盛りの計画をたて始めたっ?

 え、何このヒト達。あのさ、しつこいようだけど私護衛対象。炊事係りじゃないから。


 ん~、でもこのヒト達、一週間以上遺跡の中にいるんだよなぁ。確かにレトルトには飽きてる頃かもしれない。

 レトルト、美味しいんだけどさ。なんかこう、やっぱり違うんだよねぇ。

 いやぁほんとこの数日で、ご飯は味だけじゃなくて器や盛りつけも大事なんだなってバッチリ学習させてもらったよ。


 ま、いいだろう。なんか適当に作るくらい。

 ヴィトちゃんや、愛しのるーきゅんの「ついで」だと思えばおやすいご用さっ。ついでにしちゃ、人数多いけど。

 私はそう思って、愛想よく「いいですよ」と頷いた。


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