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こちら冒険者ギルド別館、落とされモノ課でございます。  作者: 猫田 蘭
第一部-2章<守護者と魔物と巨大ロボ>
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「……みなさん生きてますか~?」

 ぐったりしている「折れぬ牙」のみなさん、そしてるーきゅんに、私はそっと声を掛けた。


 とりあえず危機は去った。


 いやー、あれから大変だったんだよ。

 まず何が困ったって、オシリスの電池切れね。いやもうほんとあいつ、恐ろしいほど燃費悪いんだよ。

 たぶん、こういう不便な仕様はわざとなのだと思われる。さっきちらっとワンさんが口にしたとおり、私が裏切らないとも限らないので。

 ギルドめぇっ!(ギリギリ)


 それから、ゴーレムの後ろから現れた三匹目。運の悪いことに、物理アタッカーの皆様に大変不人気なゴースト系だった。

 ゴースト系の何がイヤって、せっかく倒した魔物に乗り移ってしまうことである。しかも、ゴーストに限っては核を持たないので、焼きつくす以外に対策がないらしい。

 そんなゴーストが、丈夫さが売りのゴーレムに乗り移ってしまったのである。

……まだ本体、一応生きてたのに。死に体、と判断されたんだろーか。


 ゴーストが乗り移ったとたん、ゴーレムは別人のように(ヒトじゃないけど!)凶悪になった。

 再生スピードがさらにアップするわ、逆に破片飛ばしてくるわ、動きも素早くなってリオウさんの掘削作業が中断されるわ……。

 るーきゅんがせっかく核をむき出しにしても、リオウさんが「俺が俺が!」って感じで出てきちゃってさぁ。

 ダメだあのヒト。生粋の目立ちたがり屋さんなんだ。あと、バカ。


 そういう状況なのでるーきゅんはイライラしだすし、もう最悪のグダグダ。

 ああもう、オシリスさえ動けばっ! って思ったね。本気で歯ぎしりしたね!


 仕方がないので私は次の手段に出ることにした。オシリスのオプション装備、ビームライフルである。(てってれ~!)

 もちろんこのライフル、5メートルのオシリスが使うように作られているので重いよ、おっきいよ?

 それを、取り出したり引っ込めたりを繰り返してちょうど良さそうな角度に設置。ここまではまぁ、なんとかなった。


 大変だったのはそこからだ。

 よじ登ってセーフティーロックを手動で解除して、引き金はヴィトちゃんと一緒に渾身の力を振り絞っても引けそうになかったので、持ってて良かった乙女の必需品ウィンチ(色々と必要な場面が多いんだよ!)を巻き付けて、るーきゅんに避難勧告を出して……。

 え、リオウさん? 残念なことに仕留め損なったよ?


 ちょどその頃サイクロプス班も、キリルさんの必殺技「追尾する鋼ディア・フライシュッツ」ワンさん増幅バージョンが炸裂して、決着が付いていた。

「そっちも終わったみてぇだな」

「満足しましたか、リオウ」

「まったく、リオウの無茶にはあきれてしまいますわ!」


「あぁ、すまなかった。だが、ルークレスト殿と共に戦えて、満足した。言葉で語るよりもお互い解りあえたと思う。なぁ、ルークレスト殿」

「全然」

 おいおい、なぁにいい感じの友情物語で終わらせようとしてんだよ。

 言っとくけど、報告はするからな?


 老舗の花形パーティーだから、冒険者のイメージダウンを避けるために表だっては発表されないだろうけど、それ相応の罰は下るからな?

 たぶん罰金とギルドへの無料奉仕、それといくつかのペナルティーくらいは覚悟してもらうからな?

 まぁでも、今は水を差すまい。絶体絶命と思われた危機を脱したばかりなのだから。

 

 そんなわけで「とりあえずちょっと移動して、休憩しませんか?」と、提案しようとしたのだが。

 どこかから、妙な音が聞こえてきた。


   ぎ、ぎぎぎ、ぎぎぎぃぃ


 金属がこすれるような音。


   ぎぎぎぎぃ、ごりゅっ


「まさか」

 ポツリと、キリルさんがオシリスを見上げた。音はオシリスから、というか、オシリスの手のあたりから出ているらしかった。


「ねぇ、コアは?」

 るーきゅんが、ちらりとこちらに振り返る。

「あの魔物の核、取り出した?」

 そうそう、そういや遺跡の魔物って、核を取り出さないといずれ再生するんだよね~。丈夫だよね~。ね~……。

「ご、ゴメンナサイ」


 かくして、半分ほど再生していた鳥との死闘が始まった。

 唯一の救いは、ヤツが飛べるほどには回復していなかった事だろうか。


 何とか倒したものの、みなさんグッタリ。私も、へたくそな銃で援護したり(キリルさんからめちゃくちゃバカにされた。そんで、るーきゅんに叱られた)で、クタクタでした。


「『ぼうしょく』さま、あの、あんまりおちこまないで……。『ぼうしょく』さますごかったですよ? あのおっきいのでばっちーんて! それにえっと、びーむらいふるもすごかったです! ぼく、いせきでかべにあながあくのはじめてみました!」

 ヴィトちゃん。あぁ、ヴィトちゃん! かわいいっ!(もふっ)

「ありがとう、ヴィトちゃん」


 あーぁ、結局私が一番役立たずだったなぁ。

 ヴィトちゃんはちゃんと役に立ってたし。私一人を円の中に残して、さささっと結界から出ては的確にトラップを配置して戻ってくる、というやり方で。


 戻ってくると、毎回おみみがぴるぴるしていたところを見ると、怖がってはいたんだとおもう。

 でも、魔物がトラップに引っかかるたびにちっちゃく「よしっ!」「かかったぁ!」「よんれんさっ!」とかいいながら、しっぽふわふわさせてたからなぁ。

 まったくもって末恐ろしいもふもふである。


 その後、私がとうとうキリルさんとケンカしたり、ヴィトちゃんとアドレス交換したり、リオウさんに嫌味言ってちくちくいじめてやったり、イジェットさんにジーさんのお話せがまれたりと色々しつつ、数日過ごして。


 私達はとうとう、目的地である第六階層へ、たどり着いた。


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