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ふぅ、やってやった!
いっやぁ、なんかすっごいすっきりしたわぁ。冒険者のみなさんがいちいち技の名前叫ぶのって、こういう感覚なんだな。
ちょっと、いや実はかなり恥ずかしかったけど、それを上回る解放感があった。満足した!
私の叫び声にあわせて、「折れぬ牙」の皆さんに下がってもらって空けたスペースに、若草色の巨大ロボットが現れる。
私の切り札「オシリス」である。
きゃー、ほんとに召喚したってかんじぃ。ほんとはただ単に取りだしただけなんだけど。
オシリスは、身長5メートル12センチ、重量4.03トン。
男性的な美人さん顔の、人型ロボットだ。細身のその姿は優美と言ってもいいと思う。
見た目はエジプト神話の神様っていうより騎士様っぽい気がしなくもないんだけど。
「ほう、これが例の、守護者のレプリカですか」
イジェットさんがサイクロプスと盾越しににらみ合っているというのに、ワンさんはこちらに目が釘付けである。いくつになってもオトコノコはロボットが好きだというのは本当なんだな!
……ちょっと違うか?
「レプリカと呼べるほど機能の再現はできなかったみたいです。ほぼ、ハリボテのフィギュアだって聞きました」
そう、このオシリスはなんと、ギルドの冒険者連合軍を半壊させた、あの悪名高きガーディアン達の、成れの果てなのである。
激しい戦闘によって破損していたその屍(と呼んでいいのかな?)を集めて、使えそうなパーツをつぎはぎして、1体だけ再生したのだ。
繋ぎ合わせて再生したから「オシリス」。ご丁寧に、若草色にペイントまでして。
どう考えても地球出身者の仕業である。
他の世界出身の「落とされモノ」さんと比較すると、地球人はやたらめったら名前をつけたがる傾向があるらしい。まぁ、名前が付いてると安心するよね。未知のモノって感じがしなくて。
「が、がーでぃあんっ? ぼくたちをおそったりしませんか?」
ヴィトちゃんがさっと私の陰に隠れた。例の戦いから何十年もたっているというのに、その恐怖伝説はまだ健在らしい。
冒険者ギルドにとってもトラウマみたいな存在だからなぁ。
「大丈夫、そういうことをしないように、ギルドもちゃんと対策考えたんだよ」
よし、じゃぁ見せてあげよう。
モニターグラスを装着して、コントローラーを取り出す。グラスを装着した人間の動きをトレースさせることも可能なんだけど、縦横上下の移動なんかはコントローラーの方が楽なんだよね。
もちろん、地球人には馴染みの深い、家庭用ゲームのコントローラー仕様で作ってもらいましたが?
「オシリスは、自分では勝手に動けないの。だから、私がコントロールするんだよ」
「『ぼうしょく』さまがですかっ?」
「しかし、それは危険なのでは? あなたがギルドを裏切らないという保証は……」
「おい、ワン! いい加減こっちに集中しろ、火力が足りねぇ!」
イジェットさんがとうとう痺れを切らしてワンさんを怒鳴りつけた。
うんまぁ、気持はわかる。物理系メインアタッカーのリオウさんがいない状態なのに、後ろでおしゃべりされたら、そりゃぁ、なぁ。
「そうですわ、ワン! チャージが間に合いませんの。早く魔力を集めてくださいまし!」
「ふぅ、知的好奇心を満たす間も与えてもらえないとは」
ワンさんはやれやれと肩をすくめると、目を閉じて何やら唱えだした。やっと自分の役割を思い出したらしい。
よし、じゃぁそういうわけで、私もやるぞぉ!
「『オシリスさん、やっておしまいなさい!』」
起動用パスワード(引き渡しの際に、日常生活では絶対使わない言葉をって言われて、とっさに浮かんじゃったんだ……)を叫ぶと、オシリスの目に光が宿った。
まずはコントローラーで動作確認。
赤いボタンでパンチ、黄色で膝キック、緑で防御姿勢、青でジャンプ。
ホントはこの組み合わせで派手な技がでるらしいのだが、格闘ゲームがあまり得意ではないので、そこは省略。
「ヴィトちゃん、あのね。私、みなさんほど目も耳も勘も運動神経も良くないんだ」
この言い方だと、いいとこなしだな、私。あー、荷物運びは得意だよ?
「だから、本当は素早い敵が苦手なの。ヴィトちゃん、ヤツが来たら教えてね!」
オシリスを私達の真後ろに移動させ、コントローラーをしまってモーショントレースに切り替える。
試しに、かる~く屈伸運動をすると、オシリスも一緒に膝を曲げたりのばしたり。よし、いいな。
私は胸の前で手を構え、その時を待った。
今回はあえて、オプションの盾やらブレードやらは持たせない方針で。
だって、使いこなせないから意味ないしぃ。
「『ぼうしょく』さま、きますっ!」
ヴィトちゃんが空の一点を指す。
「こっちにきてる?」
「はい!」
そりゃよかった。オシリスをみてビビって方向転換されたら追いかけっこになるからな。
鳥がオシリスの胸元まで降りてきた。よし、いまだっ!
ばっちいいいいいいいいん!
ぴぎゃあああああああああ!
蚊を潰す要領で、手のひらを合わせた。
「とっ、たかな?」
「え、え?」
悲鳴が聞こえたし、たぶん捕まえた、はず。どきどきしながらそうっと手を広げる。
モニターには……プレスされた鉄の塊のようなものが写っていた。
「あー……」
引きずりおろして押さえつけるだけでいいって言われたのに、私ったら。
「倒し、ちゃった?」
てへ。




