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こちら冒険者ギルド別館、落とされモノ課でございます。  作者: 猫田 蘭
第一部-2章<守護者と魔物と巨大ロボ>
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「ええいっ、止めてくれるな!」

 リオウさんはとうとう、イジェットさんの首に掛かっていた何かを奪い取った。

 笛、か? ホイッスルタイプの。


 あ、そういえば笛型のパーティー用アイテム(宴会用にあらず)って、なんか聞いたことあるぞ。確か半径3キロ以内の魔物を呼び出す魔法具ではなかったか。

 ちょー高い上に一回こっきりの使い捨てアイテムだったよな?

 まぁ、アレは最後の切り札というか、パーティー全滅の危機にリーダーが吹いて囮になるためのアイテムだし、使ったら十中八、九、その……、ね? な代物だからなぁ。


「おやめなさい、リオウ! 破産してしまいますわ!」

「もっとほかにとるべき方法があるはずです。今は耐える時ですよ、リオウ!」

 キリルさんが心配する通り、平均より裕福なパーティーのメンバーとはいえ、一冒険者が個人の予算で買うものではない。たぶん、預金が吹っ飛ぶ。


 その笛を。リオウさんは。

「ぷひ~ふるるるるるるるるる」

 ふいたあああああああああ!


 しかも力みすぎたのか、なんか空回りしてる。うわもったいねぇ!

 笛はそのまま、リオウさんの手の中でもろもろと崩れ、雪のように溶けた。へー、アレってああなるんだ。この先一生見ることのない貴重なもん見たわぁ。


「ふはははは! 見ろ、私の覚悟を!」

 なんだろう。リオウさんが残念な悪役にしか見えなくなってきた。

「無茶しやがって……!」

 イジェットさんは男泣きに泣いている。いやもうそれどころじゃないだろ。吹いちまったもんはしょうがないから、迎え討つ準備しようよ。


「あ、あの、『ぼうしょく』さまはぼくといっしょに、このなかで……」

 大人達の頭悪そうなやりとりをよそにせっせと作業をしていたヴィトちゃんが、私をちょいちょい、と呼び寄せた。

「じめんのまるのなかに」

「あ、うん」

「ぜったい、でないでくださいね」


 私がその円の中に入ったのを確認すると、ヴィトちゃんはなにやらくいくい、と手を動かした。トラップの最終仕上げらしい。

「ぜったいぜったい、でちゃだめですからね!」

「うん、死んでも出ない」

 うかつに出たら即死すると見た。


 どす~ん、どす~んと重低音がこちらに近付いて来る。

 吠え声からするとほ乳類っぽかったんだけど、遺跡の魔物って信用ならないんだよなぁ。虫系じゃありませんように。せめて「み」の字じゃありませんように!(あ、いや、色が違ってたら案外平気かもしれない)


 どす~ん、ごごごご、どす~ん、ごごごご


 あぁ、地面まで揺れ始めた。これはきっと大きくて重い敵だ。

「来るぞっ」

 イジェットさんが私とヴィトちゃんの前に立ちはだかって、ご自慢の楯を地面に突き刺し、膝をついて構える。

 ワンさんも、私とヴィトちゃんのいる円の外周に、何やら粉をふり始めた。結界、みたいな?


「私達は手出しをしませんから、こちらのことは気にせず存分にやってくださいまし!」

 キリルさんがイジェットさんの楯の陰から顔を出し、無責任なエールを送り始める。やめろ、あおるんじゃない!


 やがて現れたのは、5メートルはあろうかという土人形ゴーレムだった。

 いや、ゴーレムって呼んでいいのかな? 顔の造形が中途半端にリアルでエグイから、大きなゾンビに見えなくもないんだが。


「ルークレスト殿もご存じだろう? こいつの再生の速さを。倒すにはそれを上回るスピードで身体を抉り、(コア)を取り出す他ない! これほど我らの勝負にふさわしい敵があろうか!」


「あっそ。じゃぁまず、アンタやってみせてよ。譲るから」

 るーきゅんは心底軽蔑しきった目でリオウさんを睨みつけると、一歩下がった。

 あーぁ、好感度がマイナスになってるよ。ご機嫌も急降下だよ。

 彼はああ見えてプロ意識が強いからなぁ。公私混同が許せないんだな。


「ほら、とっとと倒しちゃってよ」

 るーきゅんは腕を組んだままゴーレムを顎でしゃくって、リオウさんを促した。

「む、しかしそれでは勝負に……」

 ええい、いい加減悟れよ。

「あぁ、そうですね。タイムトライアルみたいなのがいいと思います」

 仕方がない、ここは私が。


「お二人ともとにかく早いので、どちらがとどめを刺したか、見ている方にはわからないかもしれないでしょう? タイムトライアルならケチがつきませんよ」

 もっとも、次にアレがPOPする頃にはるーきゅんはここにはいないだろうけど。

「む、それもそうか……。ならば、参る!」

 リオウさんはやっと納得して、槍を構えた。ふぅ、手間のかかる。


 ゴーレムはゆっくりと、足を引きずるようにしながら近付いてくる。敵を見て猛ダッシュするタイプではないようだ。

 そこへ、リオウさんが突撃していった。


 さすがに老舗パーティーの花形メンバーなだけあって、リオウさんは強い。というか、身体能力がおかしい。なにせ高飛びの要領で、ゴーレムの肩あたりまで一気にジャンプしたからな。

一体あの身体はどうなってるんだ……?


夢幻十字斬(ファントム・クロス)!」

 おぉ、いきなり大業ですか。まぁ、タイムトライアルだもんな。出し惜しみするわけないよな。

 首を十字に切り裂かれたゴーレムは、苦悶の表情……は最初からそんな感じだ、とにかくうおぉぉぉぉん、と悲鳴をあげて、ぶんぶんと首をふった。

 痛覚、あるんだ?


雷光貫通ライトニング・ニードル!」

 振り払おうとするゴーレムの腕を避けて、リオウさんが次の技を出す。

雷光貫通ライトニング・ニードル! 雷光貫通ライトニング・ニードル!」

 あとはもう、作業のようだった。とにかく振り払われないように注意しながら雷を纏った槍に体重を乗せてゴーレムに突き刺す。

 うん、掘削作業だな、ありゃ。


「らいとにんぐぅ……」

 何回目になるのかわからないライトニングニードルをリオウさんが打ち込もうとしたところで、ヴィトちゃんがビクリと身体をふるわせた。

「り、りーだー!」

「ち、新手か」

 イジェットさんが、楯をひっこぬいて立ち上がる。キリルさんも銃を構え、ワンさんは静かに目を閉じた。トランスに入るのか?


「3匹、来てるね」

 るーきゅんも少し警戒した様子で剣を抜いた。


 1匹は「折れぬ牙」の見学組、2匹目はるーきゅんが相手をするとして。

 ……3匹目は?


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