表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちら冒険者ギルド別館、落とされモノ課でございます。  作者: 猫田 蘭
第一部-2章<守護者と魔物と巨大ロボ>
PR
26/64

 目の前でぴこぴこしている二対のけもみみ。

 少し視線を落とせば、ふしゃふしゃのしっぽがふわ~ん、ふわ~んと揺れている。その下では、細長くて、でも手触り良さそうなしっぽがふりん、ふりん……。


 見ているだけでとろけそうになる光景である。


「ちょっとヴィト! いつまでルークレストにおぶわれてますの! 泣きやんだなら自分で歩きなさい!」

 これで、るーきゅんの周りをふよふよしながらきぃきぃわめく羽虫……おぉっと失礼、妖精さんさえいなけりゃなぁ。


 ヴィトちゃんはぎゅっとるーきゅんの首にしがみついた。降りる気はないらしい。

 ま、この状況なら、万が一もなさそうだし。

 ちらりと右を見れば、凶暴そうな巨大ビーバー。左を見れば、小学生くらいのお子さまに見える小人さん。(ただし、一番の年長者)そして後ろには長い槍を携えた顔色の悪いエルフ。


 そうです、「折れぬ牙」のリーダーで重戦士のイジェットさんと、魔法技術士のワンさん、そして「無刀(むじん」ことリオウさんです。

 なんでも、わざわざお迎えに来てくださったそうで。


 この遺跡、上に登るのは徒歩オンリーだが、降りるだけなら転送装置があるのだ。もちろん全て、ギルドの手によって設置されている。

 冒険者達がその階をある程度攻略したあと、よさそうな場所をじっくり吟味してから設置部隊を派遣するので、あまり到達者がいない階には設置されていない。


 せっかくなんだから登りも作ればいいと思うのだが、例によって色々あるらしい。

 表向きは、無謀な冒険者が実力に見合わぬ階へ飛んでいったりしないように、ということになっている。まぁ、バカなことをする連中というのはどこにでもいるわけで、あり得ないとは言い切れないよな。


 ちなみに、「折れぬ牙」がいたはずの六階層には、まだこの装置はない。ということはこのヒト達、精鋭(+ヴィトちゃん)だけで五階層まで降りて、そこから装置使って四階層に降りたのか?

 あーぁ、いらない気遣いだったのに。るーきゅんと二人きりでよかったのに。


 いやこれはけっして「でぇとでぇと~」なんて浮かれた理由ではなくてだな。

 このパーティー、人間大嫌いで有名なんだよおおおおおお!

 うぅ、沈黙が痛い。


 せめてもの救いは、ヴィトちゃん自身は「落とされモノ」ではない、という点だろうか。

 ヴィトちゃんのような「落とされモノ」の子孫達は、直接迫害された体験がないので、人間への反感は一般に「無い」とされている。


 まぁ実際は上の世代から何か言われているとは思うが、それでもだいぶマシなのだ。

 しかし、私個人に関して言えば、「暴食」の都市伝説のお蔭で別なマイナス修正がついているという……。くっ、つらいぜ。


 しかもこのヒト達、私を迎えに来たんじゃないから。るーきゅんを見たくて来ただけだから。

 例の、「厄介なの」の部屋で合流して(なんかすごく、焦げたような嫌な臭いに満ちてたなぁ)すぐ、私などには目もくれず、るーきゅんにむかって自己紹介した時点でよくわかったよ!


 だというのにるーきゅんときたら、ヴィトちゃんのことはおんぶしてあげたものの、他のメンバーに対しては挨拶すらしないんだもんなぁ。

 名乗られて、「あっそ」。終了。


 るーきゅんんんん!


 い、いや、これはるーきゅんが悪いというよりはフィレメト家の教育はどうなっとるんだという話だよ!

 きっと例の予言で舞い上がって、とにかく剣の腕だけ磨かせたに違いないんだ。ご挨拶という、一番大事なことを教育し忘れたに違いないんだ。


 だがまてよ、もしもるーきゅんが、さわやかにご挨拶できて人当たりがよくて誰にでもオープンに親切な子だったら、私は彼をこんなに愛でられただろうか?

 私は彼の、親密度があがるまで「あっそ」以外言わないところとか、ヒトを小馬鹿にしたような態度とか、わかりにくく優しいところにキュンとキたのではなかっただろうか!

 ……う、う~ん。保留。(そしてこのまま、投げっぱなしでいいや)


 と、とりあえず今は前進する事だけに集中するんだ! 大丈夫大丈夫、前だけ見てれば。目の前には楽園があるんだから大丈夫。まだいける。(自己暗示)

「ルークレスト殿っ!」

 うひょぅ、びっくりした!

 突然真後ろから大声がして、私はぴょこっと飛びあがった。そのまま何食わぬ顔で足を動かし続けるものの、左から「ぷすっ」と鼻から空気が抜けたような音が聞こえた。わ、わらわれたああああ!


「ルークレスト殿、頼みがある」

 この、やけに大きな声の主はリオウさんである。テレビだとやたらポーズつけてるのと撮影の角度が素晴らしいのか、(痛)カッコイイヒトに見えたんだけど、実物はなんか、うん。もうちょっとお顔に肉をつけてくれるとうれしい。「無駄な肉の削げた精悍な顔立ち」通り越して、栄養失調に見えるからさ……。


 さすがにうるさかったのか、るーきゅんが立ち止まってくるりと振り返った。

「なに?」

 うわぁ、ウザそう。

「後日、お手合わせ願いたい!」

「やだ」

 きっぱり。


「ならば、ギルドを通した依頼としてならばどうか」

「断るよ。ギルドだってその方が喜ぶだろうし」

 そうだよ、なに言ってんのリオウさん。二つ名を持ってるリオウさんが死んじゃうような依頼、ギルドが許すわけないじゃん。(るーきゅんが負けるとはこれっぽっちも思っていない)


「くっ。ならば……。次に出る魔物をどちらが速く倒せるか、勝負だ!」

「一人でやればいーじゃん」

 るーきゅんは取りつくしまもない。

 そもそも、遺跡内部の魔物は常に満タンというわけではないので、既に「折れぬ牙」がお掃除した後をてくてく歩いている分には、魔物にあたる事なんて……。


   おおおおおおおおおおおおおおおおおおん!


 ……運が悪ければ、もちろんある。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ