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「をぎゃあああああああ!」
「わっ?」
私はソレを見て、思わず悲鳴をあげた。
あまりの大声にるーきゅんのしっぽの毛が逆立って、一瞬動きが止まる。
彼は現在、超巨大なオレンジ色のハリネズミっぽい魔物と交戦中なので、これはまずかった。
攻撃リズムを崩されたるーきゅんが忌々しそうに舌打ちして、飛んできた針の掃射(わたしのしってるハリネズミは針を飛ばさない!)から、バックステップを繰り返して身をかわす。
不幸中の幸い、四つ角の中央、しかも体育館並の広さのある場所だったので、逃げ場がなくて串刺しという最悪の事態は免れた。
うぅ、ごめんよ。きっと、「あの針を撃つ瞬間、ヤツの急所はガラ空きになる。そこを狙え!」的なタイミングだったんだろうに。
しかしああいう台詞を読んだり聞いたりするたびに思うのだが、必殺技を出すと丸出しになる急所ってなんなんだ?
イキモノとしては不完全だし、人造物だったらもっと不完全だろう? どう考えてもリコール対象だ。
「何っ? なんなの!」
不機嫌を隠そうともせずに、るーきゅんはキツい口調で私を問いただした。
「アイツが次に自分から腹を見せるまで、1時間かかるんだからね! あんまりくだらないことだったらはったおすよ!」
あ、やっぱり針飛ばす時がチャンスのパターンだったんだ? 弱点はお腹か。わかりやすいな。妙に手足が短いと思ってたけど、お腹を出さないためだったのね。
それはうん、マジで悪いことをした。反省しているのではったおすのは勘弁してください。くだらないっちゃくだらないけど結構私にとっては切実でしてね?
「るるるるるるーくくん、そいつのせなか、せなかっ!」
さっきまで針が生えていた場所は、ピンクがかってつるりと……していてくれたらうれしいんだけど、クレーターだらけのでこぼこした表面を見せている。うげぇ、これも気持ち悪い。
だがしかし、私に先ほどの悲鳴をあげさせたのはソレではなくてだな。
「背中に、なんかついてる!」
そう、私は先ほど見てしまったのだ。ハリネズミモドキが針を射出する前準備に、ぶわっと背中を膨らませたときに!
肌色の、目も足もない、うねうねと動く、おぞましい何かを!
「ハァ? 寄生ミミズがなんだってのさ!」
「その名を口にしないでっ!」
やめろよ鳥肌たっちゃったじゃないか!
ダメなんだよ、どうしても。
肌色なだけならいい。目がなくてもいい。足がなくてもいいんだけど、この三つが揃うとどうしてもダメなのだ。足がすくんで冷や汗がでて指先が冷たくなってしまうのだ。
自分でも覚えていない幼少期に、なにかあったんだろーか。
だいたい、なんであの、み……に限って、地球のとほぼ変わらない外見なんだよ!
「ごめんほんとアレだけはダメなんだ。今も足がすくんじゃって動けない」
「ハア?」
我ながら冗談のようだが、金縛りにあったように動けない。そして、この位置で動けないとなるとるーきゅんの戦闘の妨げになる。
ほらみろ、緊急事態じゃないか!
「胸張って言わないでくれる。ムカつく」
「ゴメンナサイ」
こうしている間にも、ハリネズミモドキはチョロQのような突進を繰り返している。今はるーきゅんがターゲットになっているけれど、いつ私が標的になるか。ってこっち気付いたああああ!
「る、るるるるる!」
「あぁもうっ!」
「ふぎゃ」
るーきゅんは間一髪で私を肩に担いで、ハリネズミモドキの進路から跳びのいた。そしてそのまま走り出す。あー、一カ所にとどまってるとひき殺されちゃうよね、やっぱり。
でも贅沢言うならお姫様抱っこのほうが、ってごめんなさいじょうだんです。
「あんなザコ相手に逃げまわるとか、不様すぎてキレそうなんだけど。その上そんな抱き方で、両手ふさがれたまま走れって、拷問?」
「ごめんなさいごめんなさいおもくてごめんなさい!」
「うんまぁ、フツーに重い」
や、確かにるーきゅんから、「そんなことない。軽すぎてびっくりした。天使みたいだ」な~んて優しくキラキラ微笑まれた日には驚きで心臓麻痺起こす自信があるけども。
でも、「フツー」で止めてくれたらなぁ、と思ってしまう乙女心!
「このまま走って振り切る訳にはいかない?」
「この先、ちょっと面倒なのの巣があるんだよねぇ」
なるほど、それなら倒してから進んだ方がいいな……。
「もうさ、アンタのアレでやっちゃってくんない?」
「い、イヤだ。今目を開けたら『み』の字が視界に入るし」
「そんな苦手なんだ……。目ぇ閉じたままじゃダメなわけ?」
「ルーク君、アレは私の必殺技だよ? 一発芸的な。それを、目を閉じたまま出すなんてもったいない真似できないよ」
「どうでもいいよっ!」
あぁ、そうだろうさ。るーきゅんにはわからないだろうとも。
いくつもいくつもカッコイイ技持っててさ、それぞれにカッコイイ名前がついててさ。気合いのためだか知らんが、いちいち技名を叫んでるような連中にはわかるまい!
私だってたまにはすっきりしたいんだよっ! という、サポート系の人間の気持ちなんざ、わかるわけがないんだ……!
とはいえこんな事態を招いたのは私なんだから、わがままばっかり言っていられない。とりあえず邪魔にならないように、どこかに放り投げてもらおう。
そろそろと薄眼を開け、よさそうな場所がないかと目を走らせた私の視界に、何かが映った。
なんだあれ。
目をこすってもう一度同じ場所を確認する。
うむ、妖精さんと子狐だ。妖精さんと子狐がこちらにむかって手を振っている。なんか、おとぎ話みたいだ。
「こちらへ!」
「がんばれがんばれ~」
……どうやら援軍が来たようだよ、るーきゅん。(ぺしぺし)




