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こちら冒険者ギルド別館、落とされモノ課でございます。  作者: 猫田 蘭
第一部-1章<迷子と王子と籠の鳥>
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 ミサさんを訓練所まで送り届けてから、少しだけ寄り道して(焼きたてパンの匂いにつられて、つい!)出勤した私を待ち受けていたのは、平均より不機嫌そうな上司だった。(あぁ、不機嫌度の平均がどんどん上がっていく……)


「召喚状が来ています」

 差し出された紙をおそるおそる受け取る。なになに?


【ミズキ・アキノ。本日正午より、北西大陸ルヴェンナにて、特殊任務着任を命ずる。】


「あー、これってもしかして、昨日放映してた……?」

「見たんですか」

「えぇ、見ちゃいました」

 だって、数少ない娯楽番組だし。


「あ、それでですね。ミサさんがあんな生活イヤだって言い出しました。就職するにもまだ能力も発揮していないので、とりあえず学校に入学したいそうですよ」

「それは結構」


 つまり、あの番組見て「冒険者になりたい!」なんて言い出すとは限らないんですよ。むしろ「あぁ、おうちが一番だな」って実感するから。

 だから、そろそろ解禁してもらえないでしょうかね?


「では話が早い。その後『折れぬ牙』の連中が厄介なものを見つけてくれましてね。転送装置では送れそうにないので、あなたが回収するようにと」

「はぁ、なるほど」


「……わかっていますか? あの、魔物が跳梁跋扈ちょうりょうばっこする場所に行けと言われているのですよ?」

「あ、はい。今日のお昼からですよね。ってことは、昼食はあっちで食べることになるのかな?」

 行きつけのカフェのランチ、今日はチキンのシャンピニオンソースがけだった気がするんだけど。食べたかったなぁ。


 あ~そうそう、ミサさんは?

「ミサさんはどうしましょう?」

「シルヴァリエの家に預けます。もう、了承済みですから安心なさい」

「あぁ、すっごい喜びそう」

 息子さんがもう、豆シバそのものだからね。うらやましい、私がお邪魔したい!


「ルヴェンナまではともかく、第六階層までは歩いて行かねばなりませんよ?」

「あのあと更に潜ってたんですか? すごいですねぇ」

「護衛はつきますが、危険に違いありません」

「えぇまぁ、そうでしょうね」

「……良いのですか?」

 良いもなにも、命令されたなら従うしかないでしょーが。もともとそういう契約だし。


「じゃ、支度があるんで戻ります。お昼前にエリスさんとこ行けばいいですかね?」

「11時までに支度を終えて、ここに顔を出すように。荷物をチェックします」

 過保護! おとーさんか!

 あ、いやうん。未成年の頃は身元引受人だったし、しばらく一緒に住んでたから似たようなものか。そっか……。


「必要なものをリストアップしておきました。これ以外は全てあちらが用意します」

「はい」

「……何でも持って行けるからって、調子に乗ってはいけませんよ?」

「はいはい」

「はいは一回!」

「は~いっ」

 私はそそくさと別館から逃げ出した。


   *****


「う~ん……」

 自室の鏡に映る姿があまりにも微妙過ぎて、私は一人唸った。

 光沢のある真っ白なタイツに、同じ素材のタートルネック七分袖、身体のラインにピッタリなマイクロミニのワンピース。

 う、うん。ビミョウ。


 一見ただの布製の白い下着に見えるけど、これは体感温度を常に一定に保ち、なおかつ非常に防御力も高いという最高級インナーなのである。 鎖帷子くさりかたびら程度の防御力があって、しかも軽い。そして何より汚れにくい。


 シャツを着てぇ、ネクタイ締めてぇ、ロイヤルブルーの膝丈スカートを穿いてぇ、同じ色のフロックコート(……にしては裾がお尻の下あたりまでしかないけど、基本は間違いなくフロックコート)を羽織る。

 よし、だいぶ見られる姿になったな。


 何を隠そう、これが冒険者ギルド別館職員の制服なのである!


 まぁ、こんな大げさな制服普段は着ないけどな。今回のように、外での特殊任務に就くときだけ、着用を義務付けられてるんだよね。護衛対象としてわかりやすいようにってんで。

 あ、ちなみに、男性職員はスカートではなく細身のパンツに、上着の丈も長くてまんまフロックコートだから、結構カッコイイよ?


 ちょうど心臓の真上に、リンゴにくるりと巻き付いて噛みつく蛇の紋章が縫いつけられている。

 もうね、完全にどっかの悪の組織の軍服ですわ、これ……。世界征服する気満々ですわ……。


 っつーか、こんな紋章使ってる時点で冒険者ギルドは開き直りすぎだとおもうんだ。どう見ても「目的のためには禁断のリンゴを食すのも辞さず」、と言わんばかりじゃないか。

 ギルド創立者のアルフレッドさんはアメリカ出身だったらしくて、至る所にこう、なんつーの? ソレっぽいモチーフが使用されてるんだよなぁ。


 ベッドに腰掛けて、タイツの上にもう一枚、セレストブルーのニーハイを穿く。制服とお揃いの「絶対に足を疲れさせない」編み上げブーツに足をつっこんで。はぁ、やっと終わった。


 さーて、あとは。

 ハンカチと、タオルと、ティッシュ……は箱ごとでいいか。それからケータイに愛用の枕、ってゆーかもう面倒だしベッドごと持っていくってのはどうだ? やっぱり調子に乗るなって怒られるかな? ついでにタンスとクローゼットも入れちゃいたいんだけど、だめかな?

 …………。

 ………………。

 ……………………。

 

   ぴぴぴぴぴぴぴぴ。


「はっ!」


 アラームの音に正気に返って部屋を見回せば、はじめから備え付けられていた備品以外、部屋中の物が根こそぎなくなっていた。

 え、ナニコレ引っ越し? なんでカーテンすらないの? あ、そっか、大怪我した時に布が必要かもって事か。我ながら用意がいいな! あはははは、はは、は……。


 ……これだから、「暴食」なんて言われちゃうんだなあ。(がっくり)


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