プロローグ
プロローグで大体の時代の流れ、一話から主人公が動き出します。
VR。それはAR技術の延長に出来上がった画期的な技術だ。ARが言うなれば“今を仮想にする技術”なのに対してVRは“仮想を今にする技術”である。画像を取り込んでゲームをするのではなく、ゲームに取り込まれてゲームをするという特徴を持ったVR技術は全世界のゲーム好きから期待されてゲーム界に誕生した。
誕生当初こそ様々な裁判や議論を生んだVR技術だったが、数十年経った今ではVRの友達、略してV友やVRの自分を意味するVキャラなる言葉が辞典に掲載される程にVR技術は日常の一部となっていた。
そして今、VR技術が新たな時代の流れを生み出そうとしていた。従来のVRゲームであるスポーツゲームや育成ゲーム、VR映画、VRを導入した軍事訓練。様々なVRの技術を集め、国家と企業とコアゲーマー達が総力を結集して造られた、否創られた最新VRゲーム。
VRMMO『Sword And Magic Online』
VRにしか出来ない事を。
新たな現実を。
ゲーム界に新たな波を。
その3つのコンセプトで発表された『Sword And Magic Online』は、ゲーマーであるか否かを問わず多くの人を驚愕させ、興奮させた。そんな世間の反応を見て、大多数の企業がスポンサー入りを発表。それに釣られる様に多くの先進国が協力を発表し、正に地球規模の一大プロジェクトとなった。
そんな『Sword And Magic Online 』略してSAMOは専用のスーパーコンピューターが開発され、従来の性能を遥かに上回る超高性能ダイバーが開発され、更には多数の国家協力の元に1つの人工島が建設された。ゲーム名に因んでSAMO島と名付けられたその島でSAMOのメインサーバーが稼働する運びとなった。
メインサーバーの性能は凄まじく、SAMOに細かい物理法則を導入した上で全世界の人間が一斉にプレイしても何ら問題無い程の処理能力を誇った。
開発元は予想外に大事になった責任を負ってSAMO以外のゲームソフトの開発を後回しにし、SAMOの発売を延期してまでかつてない程のボリュームに仕上げた。
全世界を巻き込んでの発表から2年。漸く発売に漕ぎ着けた『Sword And Magic Online』に地球は歓喜し、狂乱した。発売の催促電話に耐えかねてテスト無しで発売、いきなりの正式稼働となったSAMO。
世界の企業、国家は漸く一段落ついた事で安心していた。SAMO開発に比べたら遥かに楽な通常業務に戻ろうとしていた。だが、それは叶わぬ夢となる。
2050年10月3日。SAMO発表から3年が経ったある日。登録者数500万人突破記念パーティーにて。当時SAMOにログイン中だったプレイヤーとSAMO開発関係者の元に一通のメールが送信された。
『我々メビウスはSAMOメインサーバーのハッキングに成功した。よってSAMOプレイヤーを人質に全世界に要求。SAMO島を我々に明け渡せ。尚、要求の返答に関わらずSAMOはこれより現実となる。』
2050年10月3日午後0時00分32秒。SAMO大型アップデート開始。
2050年10月3日午後0時00分33秒。SAMO大型アップデート完了。
五感の再現率を100%に変更。痛覚の緩和を消去。【中立の騎士部隊】を導入。ログアウト機能を消去。外部との連絡手段を消去。パーフェクトダイブ機能を導入。
2050年10月3日午後0時00分34秒。SAMOが現実となる。
次回、主人公登場。