プロローグ1
この小説は作者が狸が好きなあまりに衝動だけで書き始めた小説です。
脈絡もストーリー性もたぶん無いので、そのあたりはご了承ください。
狸。
哺乳綱ネコ目イヌ科タヌキ属。
犬の特徴を持ちながらもその姿は犬とは違うし、かと言ってもちろん猫に似ているわけでもない。
肉食で割と何でも食べることができる。
……いや、俺が言いたいことはそんなことではない。目の前にいるそれは確かに狸ではあるのだろうけど、その動物は解説がどうのこうので納得できるものではなかった。
目の前にいるのは狸ではなく女だった。それも俺と同い年ぐらいであろう、少女だったのだ。
二日前 川上高等学校入学式当日
中学校を卒業し、いわゆる中堅校の川上高等学校に無事入学することとなった俺、朝間玄は入学式当日ということもあって普段よりも早めに起き、色々と支度|(といっても高校に入学が決定してから渡された宿題程度しか入っていない鞄を用意しただけではあるが)していた。
制服に着替えるのはまだ良いだろうと判断し、自分の部屋のある二階から一階に降りる。
そして適当に朝食を済ませ、また二階に上がる。そう言えばハンカチを下から持ってこないと。そう思い、後で降りた時に用意すれば良いものまで一回一回順番に用意してしまう。緊張しているのが周りからはバレバレなんだろうな。そんなことを思いながら準備を済ませて家を出た。
高校までそう遠くないので徒歩で向かうのだが、いつもとは違う光景を目にする。
(あれ、狸だ)
なんとはなしに目をやった茂みの中にひょっこりと一匹の狸が頭を出していたのだ。
俺は狸は大好きで動物の中では断トツに好きな生き物だ。そんな狸を朝から見れて嬉しく思うのだけれど、同時に不思議に思う。
(なんでこんな所に?)
この辺には林や森なんかは無く、山はあるけど狸がここまで来るとは思えない。その茂みは少し古い家の庭の一部だった。
狸はその可愛らしい耳をピクピクと動かして周囲を窺っていて、俺の視線に気が付くと少し凝視した後そのずんぐりとした体で茂みの中をかき分け入っていった。俺はその光景に癒されながらだんだん頭は入学式の方に戻っていき、そのまま茂みの方を見つめながら歩き出した。
入学式は思っていたよりも早く終わり、こんなものかと思いながらHRで宿題を提出し、さっさと帰ろうと思ったのだけれど、部活勧誘の大群に巻き込まれ全く帰れる気配がない。
俺は普段から結構運動しているから自分で認めるのもなんとなく変ではあるが体力には自信があるのだ。そんな俺を見てバスケ部やサッカー部等の部員がガンガン勧誘してくる。一瞬でも気を抜くと一気に連れ去られそうだ。
しかし、そんな部員たちの勧誘に適当に反応していると、一つのプラカードを見つける。勧誘用のプラカードなのだがそこに書かれた部活動名に引かれたのだ。
「動物愛護部……」
いったいどんな部活なのだろうか。先ほどの狸だけではなく、動物が好きな俺には気になって仕方がない。とりあえずさっきからずっと俺の隣で勧誘してくるバスケ部員に聞く。なにせプラカードだけ立ててあって誰もいないのだ。
「ああ、その部活は止めた方がいいよ。動物愛護とか言って動物拾ってくるだけの部活だから」
確かに運動部である彼からすれば面白くないかもしれないが俺は違う。要するに部活動の間ずっと動物と接していられるということなのだから、幸せでないはずがないのだ。
とりあえず俺はバスケ部の勧誘を振り切ってプラカードに書かれた活動場所に行ってみることにしたのだった。引かれた理由としては書かれていた活動場所が面白いということもあった。
「……東校舎隣、元倉庫って……どこのことだろ」