大神と7匹の子ヤギ
むかしむかし、あるところに、やぎの家族がいました。おとうさんやぎと、おかあさんやぎと、7匹の子やぎです。おとうさんやぎは、常に働きにいってましたが、エンゲル係数がたかいために、食費がまにあわず、おかあさんやぎも、週に一度働きに出かけていました。
ある日、おかあさんやぎは、出かける前に子やぎたちに言いました。
「これからね、おかあさんは出かけるけど、おおかみがくるかもしれないから気をつけてね。」
「おおかみ?」
「そう。とってもとっても怖いから。だれかが訪問してきてもドアをあけちゃだめよ。おおかみかもしれないから。」
「わかったー。」
そういっておかあさんやぎは家をでました。
7匹のこやぎたちは話し合いました。
「おおかみ?」
「そうだよおおかみ。」
「おおかみってどんなの?」
「そりゃ、狼っていえば、茶色くて、毛がもさもさで、よだれが出て、牙があって、僕らを食べちゃう奴でしょ?」
「きゃっこわい!」
「じゃあ、手が茶色かったらおおかみってことだよね。」
「そうだよ。それに気をつければいいのさ。」
その時、ピーンポーンとドアホンが鳴った。
「ん?だれだろう。」
「おおかみよ!きっとおおかみ。」
「まあまあ、のぞいてみようよ。」
長男やぎはドアに開いた穴から訪問者を覗こうとしました。だが、いません。だがそのとき三女やぎが悲鳴をあげました。
「見て!みんな見て!」
三女やぎが窓を指差してたので、みんなが見ると、なんと窓の向こうの平原に巨大な白い足が見えました。見上げると白い神と髭の長い巨人が立っていました。それはまるで神様のようです。
長男やぎは悲鳴をあげました。
「あっひゃー、オオカミとおもったら、大神が来た!」
巨人はいいました。
「私は大きな神、略して大神だ!貴様ら愚民に裁きを下す!」
そういって巨人はいきなり手に雷を持って地上に突き落とそうとしたので、長男ヤギが家から出て叫びました。
「待たれい!大神よ!」
巨人は雷を落とすのを待って、長男ヤギを見下ろしました。長男ヤギは言いました。
「何故、我ら愚民に裁きを下すのか?裁きを下されるべき根拠を我らにご教示して下され。」
大神は答えた。
「理由などここにあらず。真理は愚民には理解できぬ。」
「そんなものでは納得できぬ。」
「我に反抗するとは、こうしてやる!」
大神が手を挙げると、長男ヤギはあっというまに空に吹き飛ばされました。大神は言いました。
「さあ!次は誰だ!」
「ワタシよ!」
長女ヤギが現れて言いました。
「大神さん!あなたを決して許さないわ!」
「なんだと?」
大神は手を上げ、長女ヤギを空に吹き飛ばしました。
「ちくしょー大神め!」
そういって、次男三男次女ヤギが現れて言いました。
「おねーちゃんとおにーちゃんを返せ!」
「うるさい!」
三匹は空に吹き飛ばされました。
三女ヤギが現れました。三女ヤギは言いました。
「争いは良くない事よ!大神さん。おねがいだからやめて!」
「・・・・」
「どうしてそんなことをするの?心がさみしいの?」
「・・・・・・・・・」
「なにか悲しい事があったら私が相談にのるわ。」
「うるさいうるさい黙れーーーー!」
大神はそう叫んで、三女ヤギを空に吹き飛ばしました。
さて残るは末っ子のヤギです。末ヤギはこうなったら立ち向かわないほうがいいな、と思い、時計の後ろに隠れました。だが大神は叫びます。
「そこにあと一人いるのだろう!渇っ!」
大きな風が吹き、ヤギの家が次々と吹き飛ばされました。このままでは末ヤギの姿もあらわになってしまいます。思わずさけびました。
「おかーーーちゃーーーん」
そのときです。おかあさんヤギがあらわれました。おかあさんヤギは大神にいいました。
「うちの子になんてことするの!」
そしていいました。
「渇!」
その渇の勢いに押された大神はあっというまに三回宙返りして倒れてしまいました。いつのまにか他の6ひきのやぎも空から降り立ってきてとりあえず平和になりました。とさ。