まだマシな未来
「……はい、ギュー」
背中に腕が回る。
逃がさないように、でも優しく。
「澪……?」
戸惑いの声。
そのまま、少しだけ力を込める。
「よしよし」
頭を撫でながら、小さく呟く。
「……これで、たぶん」
腕の中で、蓮の表情がゆるむ。
抵抗が消えていく。
「……成功、かな」
その変化を見て、わずかに笑う。
「ね、キスしよっか」
唇を重ねる。
触れた瞬間、
「澪……澪……」
名前を繰り返す声が、少しずつ甘くなる。
「……あ、やっぱり」
目を細める。
「キスで強くなるんだ」
小さく笑う。
「いいこと知っちゃった」
もう一度、触れる。
今度は長く、深く。
そのまま、離さない。
「蓮はさ」
囁くように続ける。
「もう、一人じゃ何もできないでしょ。右腕も無くなったし腰から下は動かない…あの時の戦いで…。リンクスでも治せなかったし。」
責めるでもなく、
ただ事実のように。
「でも大丈夫」
優しく抱き寄せる。
「私がいるから」
頬を寄せる。
「私の体も変わっちゃったしさ」
少しだけ笑う。
「……そのおかげで、こうして一緒にいられる」
指先で、そっと頬に触れる。
「蓮が私に抱いてるのが、罪悪感と家族愛なのも知ってる」
一瞬だけ、目を伏せる。
それでも、手は離さない。
「だから――」
もう一度、唇を重ねる。
深く、逃げ場を塞ぐように。
「全部、塗り替えてあげる」
静かに、押し込む。
「私を好きって感情で」
額を寄せる。
「蓮は悪くないよ」
優しく繰り返す。
「私は、恨んでない」
そのまま抱きしめる。
「……だから、大丈夫」
胸に顔を押し当てさせる。
「寝るまでこうしてていいよ」
撫でる手は、止まらない。
「よしよし……よしよし……」
やがて、
呼吸がゆっくりと整っていく。
「……寝ちゃった」
小さく呟く。
静かな寝顔を見つめながら、
ぽつりと続ける。
「間違ってるの、分かってる」
視線を落とす。
「本当は、話し合うべきだってことも」
それでも、
抱きしめる腕は緩まない。
「でも……これしかないんだよ」
少しだけ笑う。
「蓮、ずっと苦しそうだったから」
目を細める。
「今日、久しぶりに笑った」
その記憶をなぞるように。
「……嬉しかった」
一拍。
そして、
静かに言い切る。
「ごめんね、蓮」
目を閉じる。
「蓮の為とは言わない」
はっきりと。
「私の為に、壊れて」




