好き
「ねぇ、蓮。好き」
帰ってきてすぐ、澪は迷いなく蓮に抱きついた。
その腕は強く、離す気がない。
「どうしたんだ……あ、あぁ。この前はごめん。言い過ぎた」
「そんなのいいから」
間を置かず、言葉を重ねる。
「蓮も、抱きしめて」
戸惑いながらも、蓮は腕を回す。
「……あったかい」
澪は小さく息を吐いた。
「嬉しい」
――分かっている。
全員で生きて帰るなんて、幻想だと。
だからこそ、
今、この瞬間だけでも。
澪は顔を上げる。
距離を詰め、そのまま唇を重ねた。
一瞬。
「……蓮からもして」
「……あぁ」
言われるままに、蓮も応じる。
「好き……好き、好き」
言葉が溢れる。
「声も、匂いも、体温も……全部好き」
少しだけ顔を離し、見上げる。
「蓮は、私のこと好き?」
「そりゃあ……好きに決まってる」
その“好き”の意味が違うことを、
澪は分かっている。
それでも。
「……そっか」
ふっと笑う。
「嬉しい」
その笑顔に、蓮は目を細めた。
「澪……やっと笑ってくれた」
それだけで、救われた気がした。
失われたはずのものが、
ほんの少し戻ったように思えた。
「ねぇ……今日は一緒にお風呂入って、そのまま一緒に寝ようよ」
あまりにも自然に、澪は言う。
「え?」
「子供の頃、ずっとそうだったじゃん」
「いや……今は大人だし……」
わずかな躊躇。
その一瞬で、
澪の表情が、崩れかける。
「……駄目?」
蓮は息を飲む。
そして、
小さく頷いた。
「……分かった」
その言葉を聞いた瞬間、
澪は、ぱっと表情を明るくした。
「やったぁ」




