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ゲヒュール  作者: ルイ
26/53

好き

「ねぇ、蓮。好き」


帰ってきてすぐ、澪は迷いなく蓮に抱きついた。


その腕は強く、離す気がない。


「どうしたんだ……あ、あぁ。この前はごめん。言い過ぎた」


「そんなのいいから」


間を置かず、言葉を重ねる。


「蓮も、抱きしめて」


戸惑いながらも、蓮は腕を回す。


「……あったかい」


澪は小さく息を吐いた。


「嬉しい」


――分かっている。


全員で生きて帰るなんて、幻想だと。


だからこそ、


今、この瞬間だけでも。


澪は顔を上げる。


距離を詰め、そのまま唇を重ねた。


一瞬。


「……蓮からもして」


「……あぁ」


言われるままに、蓮も応じる。


「好き……好き、好き」


言葉が溢れる。


「声も、匂いも、体温も……全部好き」


少しだけ顔を離し、見上げる。


「蓮は、私のこと好き?」


「そりゃあ……好きに決まってる」


その“好き”の意味が違うことを、


澪は分かっている。


それでも。


「……そっか」


ふっと笑う。


「嬉しい」


その笑顔に、蓮は目を細めた。


「澪……やっと笑ってくれた」


それだけで、救われた気がした。


失われたはずのものが、


ほんの少し戻ったように思えた。


「ねぇ……今日は一緒にお風呂入って、そのまま一緒に寝ようよ」


あまりにも自然に、澪は言う。


「え?」


「子供の頃、ずっとそうだったじゃん」


「いや……今は大人だし……」


わずかな躊躇。


その一瞬で、


澪の表情が、崩れかける。


「……駄目?」


蓮は息を飲む。


そして、


小さく頷いた。


「……分かった」


その言葉を聞いた瞬間、


澪は、ぱっと表情を明るくした。


「やったぁ」

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