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ゲヒュール  作者: ルイ
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支配欲

フクスは、何度も未来を見ていた。


同じ問いを、何度も繰り返す。


――朱音が死なない未来。


分岐を辿り、可能性を探り、何度も確かめる。


だが。


どれも同じだった。


ほぼ確実に、死ぬ。


「……アハハ!!」


思わず、笑いが零れた。


乾いたような、どこか壊れた笑い。


「どうしたのフクス?」


朱音が首をかしげる。


その声に、フクスはゆっくりと顔を上げた。


「朱音、お別れだ。」


「え?なんで。私なんか嫌な事した?」


「いや……」


少しだけ視線を逸らす。


「どうして思い付かなかったんだろうな」


自嘲するように呟く。


「考えない様にしてただけか……我ながら呆れる」


一拍。


そして、はっきりと言う。


「ヴェーラーが狙っているのは私であって朱音じゃない」


「私が朱音から離れれば、朱音は死なない」


静かな確信だった。


「いや……フクスはどうなるの!!」


声が揺れる。


「9割型死ぬが」


あっさりと。


「朱音が確実に助かる」


わずかに笑う。


「安心しろ、ヴェーラーの過半数は道連れにするから」


「なんで……。」


理解が追いつかないまま、言葉が落ちる。


朱音の目から、涙がこぼれる。


「フクスが幸せになれないじゃん!」


その言葉に、フクスは少しだけ目を細めた。


「何を言ってるんだ?」


静かに返す。


「朱音が生きていれば、私はそれだけで幸せだよ」


迷いはない。


だが。


その直後だった。


「嫌だ……」


小さく。


だが確かに、拒絶が落ちた。


「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だフクスの居ない世界なんて要らない。」


空気が、歪む。


「………。どうしたんだ?」


フクスがわずかに眉を寄せる。


理解できない。


今までの朱音なら、こんな言葉は出ない。


「フクス、私から離れないでずっと一緒に居て。」


その声は、静かだった。


だが、どこか逃げ場がない。


「断るが……」


フクスは背を向ける。


去るべきだ。


今すぐにでも。


そう思って、一歩踏み出す。


――はずだった。


振り返る。


いや。


振り返らされた。


「フフッ」


空気が変わる。


「ねぇー私がゲヒュールから好かれる突然変異体なのは知ってるでしょ?」


朱音の声が、わずかに弾む。


「本気で魅了したらさ……フクスは一生私無しじゃ居られない体になるんだよねー」


自分で言いながら、少しだけ首をかしげる。


「あれ?したく無かったししようと考えた事も無かったけど……なんでだろ?」


一瞬の空白。


そのあと、口元が緩む。


「けどさ」


視線が絡む。


「フクスが私に本気で見惚れてるのを見て凄く気分が良いなぁー。」


フクスの目が、わずかに見開かれる。


「支配欲!?」


「フクスは物知りなんだね」


楽しそうに笑う。


「そうなんだ……こういう感情なんだ」


一歩、近づく。


「フクス、フフッお手」


差し出された手。


考えるより先に、体が動く。


前足が、その上に置かれる。


止められない。


逆らえない。


「いい子だねフクス」


優しく、撫でる。


「喜んで尻尾振ってるよ可愛いなぁ」


くすくすと笑う。


「私より圧倒的に強いのに逆らえなくて可愛いな。」


「朱音……なんで。」


理解できない。


理解したくない。


「フクスが死ぬって思ったら壊れちゃった……。」


あっさりと言う。


「自分の物にしたくなっちゃったんだよねぇ。」


「朱音!私と居たら死ぬんだぞ。」


「それが?」


即答だった。


一切の迷いがない。


「口答えしていいの?私に向かって。」


空気が、冷える。


「フクスは私と離れない……良い?」


逃げ道はない。


「返事は?」


「いや……。」


ほんのわずかな抵抗。


だが。


「"はい"が言えない子は要らないんだけど」


柔らかい声で、切り捨てる。


「嫌いになっちゃうよ?」


その一言で。


すべてが止まる。


「……はい。」


言葉が、落ちた。

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