表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゲヒュール  作者: ルイ
18/65

滅亡の原因??

フクスは、考えていた。


数百年。


欲望を奪ってから、それだけの時間が過ぎた。


世界は静かだった。


争いは減り、技術は停滞し、人は穏やかに生きている。


少なくとも――滅びには向かっていない。


それは事実だ。


自分の選択は、間違っていなかったはずだ。


……はずなのに。


胸の奥に、微かな違和感が残り続けている。


「……平和、か」


小さく呟く。


その言葉には、どこか空虚な響きが混じっていた。


確かに世界は壊れていない。


だが、進んでもいない。


流れているだけだ。


停滞したまま、ただ続いている。


それを“守った”と言っていいのか。


それとも。


“止めただけ”なのか。


フクスは目を細める。


未来は、見た。


人類が滅びる光景を。


いくつもの分岐を辿っても、そこに行き着く未来を。


だからこそ、選んだ。


すべての欲望を奪うという手段を。


それだけが、唯一“続く”未来だった。


だが――


「……何故、滅びる?」


その問いには、答えがなかった。


未来は“結果”しか見せない。


原因までは、教えてくれない。


欲望が、引き金だったのは間違いない。


だが、それは本当に“原因”なのか。


引き金があるということは、弾がある。


構造がある。


仕組みがある。


「欲望は……きっかけに過ぎないのではないか」


静かに思考が沈んでいく。


もしそうだとしたら。


自分がやったことは――


「……遅らせただけか」


ぽつりと、言葉が落ちる。


世界を救ったのではない。


ただ、滅びの時間を引き延ばしただけ。


そんな可能性が、頭をよぎる。


そして、もう一つ。


さらに厄介な疑問が浮かぶ。


「……なら、戻したらどうなる」


欲望が戻れば。


人はまた動き出す。


作り、競い、奪い、求める。


世界は確実に変わる。


だが同時に――


あの未来に、再び近づくのではないか。


フクスは、目を閉じた。


思い出すのは、あの静かな滅びの光景。


音もなく、ただ終わっていく世界。


「……分からないな」


珍しく、そう零した。


理解しているつもりだった。


欲望というものを。


人間というものを。


だが今、初めて。


自分は“分かっていないのかもしれない”と感じている。


数百年の間、守り続けてきたものが。


本当に正しかったのか。


それすら、揺らぎ始めていた。


「……それでも」


ゆっくりと、目を開く。


視線は遠くを見ている。


「選ばなければならないか」


戻すのか。


維持するのか。


あるいは――別の道を探すのか。


まだ、答えは出ない。


だが。


確実に一つだけ、分かっていることがある。


「……これは、終わっていない」


静かに、確信する。


欲望を奪った時点で終わった話ではない。


むしろ。


そこから、すべてが始まっているのだと。


フクスは、小さく息を吐いた。


その吐息には、わずかな迷いと――


ほんの少しだけの、期待が混じっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ