その6.可愛くなんてないんだからね
学園を案内しながら、教えてもらった。
クーガは19歳。
幼い頃から家庭教師が沢山いてひと通りの教養はあるそうだ。
それならばと授業でわからない事を聞いたら
眉間にシワをよせられた。
「わからなかったら、いいですよ。
数年前の勉強なんて忘れてしまっても…」
「そうじゃない。
…これは低学年の初期に習う基礎だ
今までなにを学んでいたんだ。」
口調が厳しい。
そりゃあ村にも教師はいたし、学校もあったけど
畑優先。酪農優先。
しかもわたしが『アニソン』を歌うと植物の育ちは良いし、牛も良い乳を出してくれる。
そんな言い訳をしどろもどろ…
「あ、でも薬草には詳しいです」
これは胸を張って言える。
『アニソン』は確かに役に立つがコントロールがとにかく難しい。
全回復させるような歌はコントロールいらないが、わたしの体力が無くなる。
なので薬草などの治療で効果を上げるような『アニソン』を歌うのだ。
実践経験で得た知識は身になっている。
「それはすごい」
クーガは素直に褒めてくれた。
少し照れる。
「だが、それは今、役にはたたないね」
「はい」
うなだれる。
ちなみにルーナはわたしよりも成績は良いが頭は悪い。
彼女は一夜漬けの暗記でテストを乗り切り
その後全てを忘れる。
「わたし、そんなに馬鹿ですか?」
泣きそうになりながら聞く。
「いや、言葉がきつかった。謝ろう。
人にはそれぞれ事情があるのだし…
それなら私が教えるのはどうだろう?
弟がいてね。彼には教え方が上手いと褒められていた」
「わあ。クーガさんに似てきっと、
可愛らしい弟さんなんですね!」
言ってしまって、しまった!と思った。
クーガがキョトンとする。
そして顔を背けた。
4才も年下の小娘に可愛いと言われたのだ
気を悪くしてしまったに違いない。
わたしはオロオロと「いや、つい」としか言葉が出なかった。
「そんな事を言われたのは、初めてだ」
おや、恥ずかしがっておられる?
おやおや…可愛らしいですな。
わたしは表情を見ようと、覗き込んだり、回り込んだりしたが
鉄壁のガードで見れなかった。
「提案があるのだが」
少し落ち着くとクーガが言った。
表情はいつものおすましさん。チェ。
「私が勉強を教えよう。
代わりに君の歌を聞かせてくれないか」
「退学になっちゃうのでダメです!」
学習しない猫ちゃんだ。
もう『アニソン』は歌うまいと
昨日寝る時母に誓ったのだ。
「しかし、君の成績では退学になってしまうのでは?」
その通りなんですね〜。
痛いところをブッ刺してきた。
「アニカの助けになりたいんだ」
わたしに目線を合わせて言う。
金色の瞳からは善意しか読み取れない。
うちのワンちゃん達がよく使う手だ。
自分が可愛い事を知ってるな?
「オネガイシマス」
気づいたらそう答えていた。
母よ誓いを破ってすまない。




