その16.オレンジ色のドレス
部屋の中に鎮座する金庫。
最後の鍵だけはルーナパパが持っていた鍵で開いた。
そこに古ぼけた絵本が一冊入ってた。
「娘同然であるアニカを罠から救ってくれたお礼に差し上げます。」
娘同然かな?
まあ言いたいことはたくさんあるけど
クーガが絵本をゲットできたのでヨシとしよう。
手描きの絵本と言っていたが装丁がしっかりしている。
やはり獣人の王族関係者が描いたのかな?
その場で本を読み出すことなく礼を言うクーガ。
しっかりしてるな〜と感心する。
「いや、しかし。やはり、やられたね」
ルーナパパが落ち込んでる。
どうやら同じ金庫内に入れておいた宝石がないらしい。
「オースティン警備会社の社長が姿をくらました時に
予想はついていたんだけど…
実際に見ると落ち込むなあ」
しょぼしょぼ顔のルーナパパ。
絵本は価値がないと思われ放置されたらしい。
無事でよかった。…が、残り四部屋の金品も盗まれてるのかもしれないのか。
どう声をかけようか考えていると
「ルーナの幼少期のドレスや髪留め…無事だといいんだけど」
うん。別に声をかけなくていいや。
「お父様、宝石には保険をかけてましたでしょう?」
「うん。だけどしばらくは秘密かな」
ルーナパパがチラリとわたしを見る。
「部屋の魔法を解除できることがわかったらアニカの周りが騒がしくなる」
今度はルーナを見て
「ルーナ、喋っちゃダメだぞ」
ルーナパパ、もっと強く言って!
こいつは絶対自慢する!
「もちろんですわ!
わたくしの親友アニカが誰も成し得なかった『オースティン警備会社』の『開かずの間』を解放したなどと
言いふらすはずもございませんわ!さすがはアニカ!」
うーん。不安しかない。
「さてお茶にしようか。
クーガ様には別室を用意します。
お疲れでしょうから」
「ありがとうございます。」
本を読めるよう配慮してくれるルーナパパ。わたしも本を読みたいな〜。
しかしイグルーの存在が知られてないから
今わたしがクーガと一緒に本が見たいと言うことは
二人きりになりたいです。
って言ってるようなもの…それは恥ずかしい。
「美味しいケーキを用意いたしましたの」
ルーナがわたしの手を引っ張る。
「その前に着替えですわね。
髪も埃がついてますわ」
ルーナの自室に否応なしに引っ張られる。
あ、やな予感。
以前からわたしを着せ替え人形にしたがってるルーナ。
ルーナはスタイルがいいから彼女の服を着て惨めな思いはしたくないんだ〜
「そんな埃まみれの制服で学園へ帰っては、叱られますわよ」
「確かに…」
渋々服を着替える。
…すると、まあ。服のサイズがピッタリだ。
「よかったですわ。
アニカに似合う明るい色を選びましたの!」
ニコニコとうれしそうなルーナ。
「この服って…」
「もちろんアニカのために作りましたのよ。
着ていただけてうれしいですわ!」
成長期のわたしのドレスを…着るかもわからないドレスを作っておいたと…
今は助かってるけど、好意が怖いよ?
他に数着引っ張り出してきた服も
わたしの為のドレスかもしれないと気づいたが…怖いので見なかった事にしよう。
深く考えなければドレスは本当に可愛かった。
普段用のレースが少ないドレス。
でも胸と腰に大き目のリボンが付いていて
繊細なレースが淡いオレンジ色のドレスをひきたてている。
ドレスを初体験してみてわかった。
ウキウキする。
人が着ているのを見るのは好き。
でも自分で着るのは動きづらそうとか思っていたけど
動くたびに揺れる布。
制服の何倍の布を使ってるんだ?
サラサラの生地。
楽しい。
「髪も整えませんと!」
ルーナにおまかせします。
おしゃれが楽しいなんて…知らなかったよ。




