その15.花びら
天井、床、照明、棚…あらゆるものに物理的罠と、魔法が付与されている。
魔法のおかげで仕掛けが光って見えるのだが
「槍?」
「うん。床の一部を踏むと槍が降ってくるんだ。
魔法の効果で時間がたつと収納されて何度でも罠が発動するんだって、
すごいよね!」
自慢げに言うルーナパパ。
そのせいで困ってるんでしょう…
呆れながら続けて他のロボット勇者の曲を歌い出す。
勇者シリーズでいかせていただきます。
まずは天井の槍…
壊れろ!
わたしの魔法が槍だけを粉々にする。
「細かいコントロールも上手だ。元気で楽しくなる歌なのに
不思議と力強さを感じるよ」
魔法を褒め、歌の感想もくれるクーガ。
えへへ。
張り切っちゃうよ〜。
魔法が見えるおかげで力加減がわかる。
これなら魔力を抑えながら歌える。
ハンマー、鉄球…どんどん壊していく。
殺意が高すぎないか?
壊していくので罠が発動しても大丈夫。
わたしは部屋に入って進みながら歌う。
「アニカダメだ!」
クーガがわたしを押し倒す。
クーガの上を細い針が飛んでいく。
針はドアに突き刺さった。
「油断してはダメだ」
私の視界全部がクーガだ。
ガラス玉のような瞳が近い。
息遣いを感じる。
少し体を起こせばキスできてしまう距離。
「ひゃい!
しゅみません!」
優しく抱き起こされて
服についた槍の瓦礫や、ホコリを払われる。
クーガにお姫様みたいに扱われてボ〜っとなるのと
死ぬところだった反省!と自分を叱咤するので心が忙しい。
「少し休憩するかい?」
わたしを心配して抱きつこうとしてくるルーナを
ルーナパパがホールドしながら聞いてくる。
「大丈夫です。続けさせてください。」
わたしはクーガにお礼を言って、でも目を合わせないようにする。
下心を見透かさせたら死んでしまう。
勇者シリーズの曲を続けて歌う。
あっ確かこのアニメは恋愛要素が多々あった。
魔法の粒が舞う。
全部ピンクだ。
ぎゃ〜やめて〜〜〜
今更止めてもさらに気まずくなりそう…このまま歌うぜ!
光っているところをとにかく
壊す、壊す…でも幸せな気持ちが止まらない。
槍が…花びらに!
ハンマーが…花びらに!
よくわからないけど
わたしの魔法の粒が飛んで行って触れた罠は全部花びらになった。
部屋全体の仄かな魔力も花びらになった。
歌い終わると花びらが舞い落ちる。
「綺麗ですわ」
ルーナがうっとりする。
「芸術的だ!」
ルーナパパが褒める。
「見たこともない美しい魔法だ」
落ちてくる花びらを一枚手のひらに受け止め微笑むクーガ。
花びらの中に佇む彼こそ美しい。
わたしは花が舞う中彼を見惚れていた。




