その13.オースティン警備会社の魔法
ルーナのお屋敷は数回尋ねたことがある。
豪華絢爛な金ピカ門扉、所狭しと置かれる金ピカ美術品。
いわゆる成金趣味だ。
ルーナのお父さんが商家の出の婿養子らしく、やり手だが趣味が悪いらしい。
お母さんはおっとりしていて、旦那さんやルーナの事をいつもニコニコ見守ってる感じだ。
「いらっしゃいアニカさん!
私の娘になる決心はついたかな?」
うーん。ルーナの父だ。
彼は本気でわたしを養女にしたいと提案してきたことがある。
書類まで用意してた。
「残念ですが、お断りします。」
ルーナの父の整った顔がしょぼくれる。
「突然尋ねてしまい申し訳ございません。
クーガ・アリンガム・セレネと申します。」
クーガが優雅にお辞儀をする。
それに応えてルーナの父もお辞儀をする。
見た事ない真面目な顔をしてる。
「お会いできて光栄です。
ノア・ブルワー・オーガストと申します。お見知りおきを」
よそ行きの顔の二人…多分礼儀作法も完璧なんだろう。
ルーナに死神だ、近寄るなと警告したとは微塵も感じさせない。
「世間話は後でなさってください。
アニカには門限がありますの!
さっさと罠を解除してくださいませ!」
ルーナの父はまた、しょぼくれた顔をする。
「だから〜無理だったんだよ〜。
業者も呼んだけどオースティン警備会社の罠は魔法がかかってて
お手上げだって〜。」
罠を仕掛け、倒産した会社はオースティン警備会社というのか…
元社員を探し出すとかは…もちろん数年前にしてるよな。
「本が保管されている部屋を見せてもらってもいいですか?」
「もちろん。どうぞこちらへ」
案内されたのは4階の奥の部屋。
「元はゲストルームだったんだ。そんなに広くないが
罠が十数個仕掛けてあって、部屋の中央に金庫が設置されてる」
「罠に全てかかってみてはどうですか?」
提案してみる。
「大怪我をしてしまうような罠もあるから危ないんだよ。」
「床下を壊してしまうのは?」
クーガは大胆な発言をするなあ。
「魔法で部屋自体を強化していてね。
効力が弱まるまでまだ数年かかるそうなんだ。
さすがオースティン警備会社!」
褒めるなおじさん。その会社のアフターケアが無いせいで
開かずの間ができたんじゃろがい。
にしても、そんな魔法があるんだなあ。
強化できるなんて使い道がたくさんありそう。
クーガがわたしを見る。
なにか考えてるようだ。
あの…ぶしつけに見ないでいただきたい。
「アニカ、協力してくれないか」
「なにをです?」
顔が赤くなってないかな?
会話に集中しよう。
「アニカの『アニソン』で魔法の効力を消してもらいたい」
集中力が足りないせいか会話が理解できない。
「大丈夫。私とアニカが力を合わせればできるはず」
肉球のある手で私の手を包み込む。
反則だ〜。
会話の意味がわからないまま「はい」と返事をしましたとも。




