その11.テストの犠牲者
次の日の昼休み。
体調は万全。
ボイストレーニングもバッチリ。
わたしは中庭にある花壇の前にいた。
花壇にはたくさんのホウセンカの苗木が腰の高さまで育ってる。
三年になると半年かけて花を世話して『聖歌』によって成長を促す授業があるらしい。
「アニカさんの目の前の花壇にホウセンカの種を埋めてあります。
歌で芽を息吹かせたら合格としましょう」
ダーラ先生は野次馬に聞こえないように付け加える
「まあ、無理でしょうけど」
中庭で昼休み…ワザと野次馬ができるようにセッティングされてるあたり
性格が悪くていらっしゃる。
ルーナの性格の悪さとは違うネチっこいものを感じる。
しかしまあ、なんと楽勝なものをテストに選んでくれたことか。
村では日常的に芽吹かせてましたよ〜。
ルーナが声援をよこす。
「頑張って〜わたくしのアニカ〜」
誰がお前のだ。
クーガも見学に来てくれてる…が、表情が険しい。
あれ?歌を楽しみにしてたのに…
心配してくれてるのかな?
おや、ダーラ先生を睨んでる?
わたしは種を埋めたであろう、盛り上がった土を見る。
「ここに芽を出せばいいんですか?」
「そうですよ。では、はじめ!」
口々に噂していた野次馬が一瞬黙る。
クーガがこちらに歩み寄ろうとしてくるのを首を振って静止する。
大丈夫。テストには合格する。
選んだ『アニソン』は有名な映画の主題歌。
子供とよくわからない生き物…多分妖怪?との日常ふれあいもの。
お散歩したくなるような元気な歌。
ダーラ先生は一向に芽が出ない土に満足げに言った。
「失格ですね。」
わたしは歌い続ける。元気な歌詞で。
野次馬が叫ぶ。
「先生、周り見て!」
どよめきがおこる。
「木が!」
ダーラ先生が顔を上げる。
そして気づく。
中庭のホウセンカが成長して花を咲かしていることを。
「な…これは…アニカが?」
歌い続ける。
ホウセンカの木はダーラ先生の身長よりちょい高く育ってる。
勘の良い生徒が中庭から逃げる。
ダーラ先生はポカンとしているだけだ。
くらえ!
花を散らしたホウセンカがみるみる種をつけ勢いよく弾け飛ぶ。
「ぎゃっ!」
種はダーラ先生の顔に体に命中した。
よっしゃ!
ホウセンカは種子をはじき飛ばす植物だ。
魔法で成長をはやめると種はめちゃくちゃ勢いよく飛ぶんだ〜
村で実験済みだ。
あの時は痛かった。
野次馬にも当たっているが気にしない。
好意的でない会話が聞こえていた事だし。
歌はもう少しで終わり。
わたしの足元に飛んできた種を芽吹かせる。
緑の絨毯が花壇にできたところで歌は終わった。
ダーラ先生は尻餅をついて痛みにうなっている
「ダーラ先生が種を埋め忘れていたみたいなので
仕方なく種をまくところからいたしました。」
ダーラ先生は顔を真っ赤にする。
「言いがかりです!そんなわけ…」
「ではもう一度初めから、テストしますか?」
「ひっ」
先生は中庭から這って出て行った。
「テストは合格ですね?」
クーガが声をかけ悔しそうに肯定するダーラ先生。
お尻が土で汚れて情けない。
「元気な歌だった。
青い空にピッタリだね。」
ニコニコして言うクーガ。
怪我はしてないみたい。
よかった。
「合格おめでとうですわ…」
そう言ってよろつきながら歩み寄ってくるルーナ。
全身にホウセンカを浴びている。
わー!
ごめんよルーナ!
ルーナはなぜか誇らしげに倒れた。




