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9話「外の人」

本日は、春子を知っている人が現れます。よろしくお願い致します。




表から叫んでいた人の事を忘れた辺りで、私は嬉しかった事を思い出していた。


母さんは私の頭を撫で、「春子ちゃんが世界一大事。きっと、犯罪者になったってそれは変わらない。世界一大好きよ」と静かに言う。


その言葉だけを思い出している。そうしていれば私は生きていける。過去の記憶しか支えがないなんて、惨めかもしれないけど。




七星君が起きた。らしい。俺は春子の様子を聞く。


「七星君、春子は…」


彼は俺の部屋を見渡し、一度首を振った。


「今は寝てるよ。苦しくもないみたいだ」


「そうかい…本当に、死んだりしないんだろうね?死にたいと言っていたけど…」


俺が知らず知らず前のめりになってそう聞くと、正面に腰掛けた七星君は顔を顰めた。でも俺は、春子が死んだら生きていけない。彼は俺の妻なのだから。


「きっと、今は死んだりしないさ」




その後俺は、響子に会った。響子にも春子の事を聞いてみた。響子と七星君は、春子と話が出来るから。


「彼女の望みは、死ぬ事だけよ。私はそれを知っているもの」


ばっさりと俺の道が切って落とされたような感覚がした。落下していこうとする自分を引き止める。そんな。そんなはずない!


「でも、俺は春子に幸せに生きて欲しいんだ…少しでも、楽に…」


響子はそれ以上話をせず、俺の元を去った。一体どうやれば春子を幸せに出来るのだろう。


俺は、春子の望む物ならなんでも用意しようと努力してきた。でも春子は、「死にたい」と口にする。まだ足りないのかと思ってどんどん手渡す内に、春子は遠慮をするのにくたびれ、謝るだけになった。


その内に春子は、俺と会話をしてくれなくなった。たまにしてくれても、それは演技だともう解ってしまう。


一体誰が悪かったんだろう。春子を虐待したという彼女の母だろうか。春子を理解してやれない夫である、俺だろうか。


〝俺はどうすればいいんだ。どう…ああ、頭が痛い。少し休まないと。その間、春子は寂しい思いをしないだろうか。彼女はどうして、喋ってくれなくなってしまったんだ…加減でも悪いのか…俺には何が出来るんだろう…〟


考えても解らないのに、春子からは何も言われていないのに、どんどん追い詰められていく。彼女から拒否されるなんて有り得ない。結婚までしたんだ。


〝どうしてこんな事になったんだろう…しっかり考えないと…〟


俺はベッドに一人で入って、目を閉じる。春子の為に休まないと。午後は春子の食べ物を買いに行きたい。





お読み下さり、有難うございました。

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