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第8章 四神がざわめく日

 朝。

 空はいつもより灰色がかっていた。


 校門をくぐった瞬間、

 レンの胸の朱玉がふわっと熱を帯びる。


「……また影の気配が濃い……?」


 昨日の“歩く影”のことが頭をよぎる。


 ミオとハルカもすぐに気づいた。

 ふたりの宝玉にも、淡い光が揺れている。


「これ……ぜったい何かあるよ」

 ミオが小さくつぶやく。


 ハルカは周囲をきょろきょろ見渡しながら言った。

「ねえ……今日、学校、なんだか静かすぎない?」


 言われてみれば、

 いつも賑やかな校舎が、妙にひやっとしていた。


 ■■朝の教室──クロガネの席


 教室に入ると、

 レンは無意識にクロガネの席を見る。


 今日も……空席だった。


「……また来てないんだ」

 ミオが眉を寄せる。


「クロガネくん、昨日あんなこと言ってたし……

 どこかに“影を避けて”隠れてるのかな」


「本人に光がないって……どういう意味なんだろ」

 レンは自分の胸の朱玉をそっと握った。

 心の中で朱雀に問いかける。


(ねえ朱雀。

 光がないって、どういうこと?

 あいつには……何が起きてるの?)


 朱玉は淡く光った後、

 落ち着いた声で答えた。


『……いずれ分かる。

 だが、まだ語る時ではない』


(今教えてよ。クロガネに危険があるなら……!)


『危険があるのは“彼だけ”ではない。

 お前たちにもだ。

 だからこそ、焦るな』


 その言葉に、レンは息を呑んだ。


 ■■昼休み──四神からの“同時警告”


 昼休み。

 三人は人目を避けるようにして

 屋上への階段で集まっていた。


「ねえ、私……青龍からちょっと変なこと言われた」

 ミオが不安そうに話す。


「変なこと?」

 ハルカが首を傾げる。


「“水は揺れている。

 黒きものが流れを濁す前に備えろ”って……」


 ハルカも自分の白玉を握りしめて言った。


「私も! 白虎が

 “西の息吹が乱れている。

 お前たちのそばに原因がある”

 って……これって……」


 レンは思わず立ち上がった。


「朱雀も言ってた。

 “お前たちにも危険がある”って」


 三人の宝玉が小さく同時に光る。


 さらにレンの朱玉から声が続く。


『四神が同時に揺らぐのは……

 本来ならありえぬこと』


「ありえないって……どういうこと……?」

 ミオがつぶやく。


『おそらく……“黒宝”の力が動き、

 人の心の影へ影響を広げ始めている。

 均衡が乱れ始めたのだ』


 ハルカが息を呑む。


「じゃあ学校に影妖が出たのって……

 やっぱりクロガネくんの……」


 レンはぎゅっと拳を握った。


「――クロガネを探そう。

 このままだと、あいつ……危ない」


 ■■校内捜索──影の残り香


 三人は授業の合間をぬって、

 校舎の影の濃い場所を中心に探し回った。


 図書室。

 美術室。

 体育館の裏。

 校舎裏の茂み。


 しかし、クロガネの痕跡は見つからなかった。


「どこにもいない……」

 ミオが肩を落とす。


「でも……影の“匂い”みたいなのは残ってるよ」

 ハルカは床の影に手をかざした。

 白虎の力がほんの少しだけ反応する。


 レンは自分の胸の奥に集中した。


(朱雀……クロガネはどこに……?)


『……学校の外ではない。

 だが、視界には映らぬ場所だ』


「映らない場所?」

 レンがつぶやく。


 ハルカがはっと顔を上げた。


「もしかして……

 “影の中にいる”ってこと?」


 三人は互いに目を合わせた。


 それは、あまりにも怖い推測だった。


 ■■夕方──本家からの“気配”


 帰りのチャイムが鳴り、

 生徒たちが次々に校門を出ていく。


 レンたちが昇降口を歩いていると――


 空気が突然、ひやりと張り詰めた。


「え……?」


 ミオが思わず立ち止まる。


 ハルカも宝玉に手を重ねた。


「これ……なにか来る……」


 レンも朱玉が熱を持つのを感じた。


『構えろ。

 “本家の気”だ』


「本家……?」


 その瞬間、

 校門の外から、すっと風が流れ込んだ。


 白い和装に身を包んだ人物が、まっすぐ三人を見つめて立っていた。


 その姿はどこか四神に似た“均衡の気配”をまとっている。


「あなたたちが……四神の宝玉を得た子たちね」


 三人は息を呑んだ。


「え……誰……?」


 その人物は静かに微笑む。


「私は陰陽師本家の使い。

 ――あなたたちに、話がある」


 夕闇の中、

 新たな波が静かに押し寄せてきた。


 四神の揺らぎ。

 クロガネの影。

 そして本家の使者。


 三人の日常は、

 もう完全に“異世界の気配”の中に踏み込んでいた。

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