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第38章 選ばなかった答え

 朝が来た。


 でも、世界は、

 昨日の続きのままだった。


 影は、

 消えそうで、消えない。


 元に戻れるかもしれない――

 そんな気配だけが、

 空気の奥に残っている。


 神社跡。


 三人は、

 約束しなくても、

 そこに集まっていた。


「……どうする……?」


 レンの声は、

 いつもより低い。


 ハルカは、

 足元の影を見つめる。


「……消したら……

 楽……なんだと思う……」


 ミオは、

 うなずいた。


「……怖さ……

 なくなる……」


 誰も、

 それを否定しなかった。


 風が吹く。


 影が、

 また、わずかに揺れた。


 ――元に戻れる。


 ――選ばなくていい。


 その“誘い”は、

 優しい。


 だからこそ、

 厄介だった。


 レンは、

 ゆっくりと、息を吸った。


「……なあ……

 消すって……

 何だと思う……?」


 ハルカが、

 顔を上げる。


「……なくす……

 こと……?」


「……見ない……

 こと……?」

 ミオが続ける。


 レンは、

 首を振った。


「……違う……

 たぶん……

 “やめる”……

 ことだ……」


 二人が、

 黙って聞いている。


「……考えるのを……

 感じるのを……

 やめる……」


 足元の影が、

 静かに、

 形を変える。


 ハルカは、

 しばらくしてから言った。


「……私……

 影……

 なくなっても……

 また……

 不安に……

 なると思う……」


 ミオも、

 小さく言った。


「……聞こえなく……

 なっても……

 別の音……

 怖くなる……」


 レンは、

 二人を見る。


「……だったら……」


 言葉を、

 選ぶ。


「……消さない……

 っていうのも……

 違う……」


 二人が、

 目を瞬かせる。


「……消さない……

 じゃなくて……」


 レンは、

 はっきり言った。


「……選ばない……」


 その瞬間。


 宝玉が、

 同時に、

 淡く光った。


 でも――

 力は、溢れない。


 結界も、

 起きない。


 ただ、

 “拒否”が、

 世界に伝わった。


 影が、

 静かに、

 揺れを止める。


 消えない。

 でも、

 引き戻そうともしない。


 まるで――

 答えを押しつけるのを、

 やめたみたいに。


 ハルカが、

 小さく笑った。


「……変なの……

 選んで……

 ないのに……

 楽……」


 ミオも、

 うなずく。


「……静か……」


 レンは、

 空を見上げた。


(……これで……

 いい……)


 そう思った瞬間――

 胸の奥に、

 一瞬だけ、

 懐かしい重みがあった。


 言葉はない。


 でも、

 確かに。


(……見てる……)


 世界は、

 完全には、

 元に戻らなかった。


 でも、

 崩れもしなかった。


 中途半端で、

 未完成で、

 それでも――

 続いていく。


 それが、

 三人の答えだった。

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