第31章 声にならない問い
その日の放課後。
三人は、再び境界の手前に立っていた。
鳥居の向こうは、
相変わらず静かだ。
「……入らない……んだよね……?」
ハルカが、念を押すように言う。
ユイがうなずいた。
「ええ。
今日は――“呼ばない”」
「……じゃあ……
何を……?」
ミオが聞く。
「聞くの」
ユイは短く答えた。
■■近づかない対話
三人は、鳥居の外に立ったまま、
宝玉を胸に当てた。
目を閉じる。
影は、現れない。
でも――
気配だけが、そこにある。
レンは、息を整え、
心の中で語りかけた。
(……オレたちは……
戦いに来たわけじゃない……)
言葉にしない。
ただ、思いを流す。
(……居場所が……
欲しいなら……
壊す以外の道を……)
その瞬間。
足元の影が、
ゆっくりと、形を変えた。
■■返ってきた“感触”
声はない。
けれど――
胸に、冷たいような、
寂しいような感触が広がる。
ミオが、眉をひそめる。
「……影……
怒って……ない……」
ハルカも、小さく言う。
「……悲しい……
感じ……」
ユイが、静かに補足する。
「影は、
切り捨てられることを、
一番恐れている」
レンの胸が、締めつけられた。
(……クロガネも……
同じだった……?)
■■四神の“意思”
そのとき。
三人の宝玉が、
それぞれ、違う光を放った。
朱玉は、
まっすぐで、強い。
青玉は、
広がるように、柔らかい。
白玉は、
包み込むように、静か。
レンの中に、
知らない“感覚”が流れ込む。
――進め。だが、独るな。
ミオの胸には、
別の感触。
――聞け。すべてではなく、必要なものを。
ハルカには、
やさしく、しかし確かな思い。
――守れ。恐れを消すのではなく、抱いたまま。
三人は、
同時に目を開けた。
「……今……
何か……」
「……うん……
聞こえた……
“声”じゃないけど……」
ユイは、深く息を吐いた。
「それが――
四神の意思の“片鱗”」
■■条件が、見えてくる
レンは、胸に手を当てた。
「……じゃあ……
クロガネは……」
ユイは、ゆっくり言葉を選ぶ。
「クロガネが戻る条件は、
“力”じゃない」
三人が、息をのむ。
「影を排除せず、
四神の意思を受け止め、
そして――」
一拍置いて。
「あなたたち自身が、
迷ったままでも進むこと」
ハルカが、目を見開く。
「……完璧じゃ……
だめ……?」
「ええ」
ユイは、はっきり言った。
「完璧を求めるほど、
彼は戻れなくなる」
レンは、思い出していた。
クロガネの、
不器用で、静かな背中。
(……そうか……
あいつ……
いつも……)
■■次の段階へ
境界の奥で、
影が、静かにうねった。
拒絶ではない。
了承でもない。
ただ――
見守る、という選択。
ミオが、小さく言う。
「……道……
できた……
気がする……」
ハルカも、うなずく。
「……まだ……
怖い……
でも……
前より……」
レンは、
深く息を吸い、吐いた。
「……行こう……
次の段階……」
クロガネは、
まだ戻らない。
でも――
戻る“理由”は、
はっきりしてきた。
影も、四神も、
そして三人自身も。
同じ問いを抱えたまま、
次の章へ進む。




