第24章 それぞれの揺れ
その週は、何事もなかった。
授業は普通に進み、
テストの話題でクラスはざわつき、
放課後には部活の声が校舎に響く。
――表向きは。
でも、レンたちは気づいていた。
影の“質”が、変わってきている。
■■レンの違和感
放課後、レンは一人で帰っていた。
夕焼けに染まる交差点。
赤信号で、立ち止まる。
そのとき――
足元の影が、信号の色と関係なく、わずかに揺れた。
(……今の……)
朱玉が、かすかに熱を持つ。
でも、前のような“警告”ではない。
どこか――探るような感触。
「……様子見、か……」
レンは、無意識にそうつぶやいていた。
クロガネがいれば、
きっと、すぐに答えが返ってきただろう。
その“間”が、
今は、胸にぽっかり空いている。
■■ミオの“聞こえすぎる音”
一方、ミオは自室でイヤホンを外し、
深く息を吐いていた。
「……多すぎ……」
青玉が、机の上で淡く光っている。
最近、音が――
多い。
人の声。
足音。
心のざわめき。
それらが、
以前よりもはっきり“重なって”聞こえる。
「これ……
私が……変わってきてる……?」
怖い、というより、戸惑い。
ミオは青玉をそっと握った。
「……ちゃんと……
選んで聞かなきゃ……」
それが、新しい課題だと、
直感的にわかっていた。
■■ハルカの小さな勇気
ハルカは、夜の公園にいた。
ブランコが、きい、と鳴る。
人気はない。
でも、前ほど怖くはなかった。
「……前なら……
一人で来なかったな……」
白玉が、胸元で静かに輝く。
怖さは、消えていない。
でも――
抱えられる大きさ になっていた。
そのとき。
ベンチの下に、
小さな影が集まっているのが見えた。
「……影……?」
一瞬、足がすくむ。
でも、ハルカは逃げなかった。
「……大丈夫……
今は……見るだけ……」
影は、すぐに散った。
ハルカは、気づかないうちに――
一歩、前へ進んでいた。
■■三人、再び集まる
翌日、放課後。
三人は、いつもの中庭に集まった。
「……そっちも?」
レンが聞く。
ミオがうなずく。
「……音が……増えてる……」
ハルカも、少し照れながら言った。
「……影……
前より……見える……」
レンは、深く息を吸った。
「やっぱり……
何かが動いてる」
そのとき。
風もないのに、
三人の宝玉が、同時に淡く光った。
ユイの声が、背後から聞こえる。
「……ええ。
次の段階に入った、ということ」
振り返ると、
ユイはいつもより少し、真剣な表情だった。
「クロガネがいない今、
四神の力は、直接あなたたちに影響している」
「それって……
いいこと……?」
ハルカが聞く。
ユイは、少しだけ間を置いて答えた。
「……どちらとも言える」
そして、続けた。
「次に現れる影は――
“一人”ではない」
三人の背筋が、同時に伸びる。
「……集団、ですか……?」
レンが聞く。
「ええ。
そして――」
ユイは、静かに告げた。
「今度は、
“迷っている人”だけじゃない」
沈黙。
ミオが、小さく息をのむ。
「……じゃあ……
本当に……敵……?」
ユイは、首を横に振った。
「……それも、まだ決まっていない」
レンは、朱玉を握った。
(選ぶのは……
また……オレたちか……)
三人は、自然と円になる。
欠けたままでも、
前より少しだけ、強く。
物語は――
新しい局面へ、静かに動き出していた。




