第21章 心がぶつかる場所
影主――黒崎カナタの背後で、
影が“かたち”を持ちはじめていた。
それは獣のようで、
壁のようでもあり、
まるで彼の心そのものが、外にあふれ出たかのようだった。
「……近づくな……」
低く、震える声。
「ここは……
オレの……居場所なんだ……!」
影がうねり、
クロガネを縛る鎖が、ぎしりと音を立てる。
『……っ……!』
「クロガネ!」
レンが叫ぶ。
ミオは必死に耳を澄ませていた。
「……聞こえる……
カナタの声……怒ってるけど……
その下で……泣いてる……」
ハルカは一歩、前に出た。
足は震えている。
それでも、止まらなかった。
「……居場所、だったんだよね。
ここが……」
カナタの目が、わずかに動く。
「……だったら……
壊しに来たわけじゃないよ」
影が、一瞬だけ静まった。
■■影主の“怒り”が襲う
「……うそだ……」
カナタが叫ぶ。
「どうせ……
どうせ最後は……
いなくなる……!」
影が一気に押し寄せた。
地面が割れ、
黒い波が三人に向かってくる。
「来るよ!!」
レンが叫ぶ。
「ミニ結界――!」
ハルカが反射的に叫んだ。
三人の宝玉が同時に光り、
結界が広がる。
――が。
影の波は、
今までとは比べものにならない重さだった。
バキッ!
「っ……!」
結界に、ひびが入る。
「このままだと……!」
ミオの声が震える。
ユイの声が、遠くから響いた。
「レン!
今よ――四神を“ひとつ”に!」
■■四神、初めての融合
レンは歯を食いしばった。
(決めるんだ……
オレが……!)
「ミオ!
聞こえる全部を、オレに渡して!」
「ハルカ!
怖さも一緒に……引き受ける!」
二人は一瞬驚いたが、
すぐにうなずいた。
「……うん!」
「……まかせた!」
青玉が、音を集めるように輝く。
白玉が、恐れを包み込むように光る。
それらが、朱玉に流れ込んだ。
レンの胸が、
焼けるように熱くなる。
でも――
不思議と、苦しくなかった。
(これが……
三人で立つってこと……!)
光が、ひとつになる。
朱・青・白が溶け合い、
やわらかく、強い“金色”へ変わった。
■■“攻撃”ではない力
金色の光は、
影の波を押し返す――
のではなかった。
包みこんだ。
影が、ゆっくり静まっていく。
「……な……に……?」
カナタの声が、揺れる。
ミオの声が、金色の光に乗って届く。
「……聞いて……
あなたの声……
ちゃんと……ここに……」
ハルカの想いも、重なる。
「……怖かったよね……
一人で……」
レンは、まっすぐカナタを見た。
「……居場所がほしかったんだろ。
オレたちは……
奪いに来たんじゃない」
影が、少しずつ形を失っていく。
■■クロガネが、消えかける
そのとき。
ズ……ッ
クロガネの体が、
急に薄くなった。
『……レン……!』
「なっ……!?」
ユイの声が飛ぶ。
「影主の心が揺れている!
結びつきが不安定になってるの!」
「このままだと……
クロガネが……!」
カナタが、愕然とした表情でクロガネを見る。
「……ちが……
そんなつもり……」
影が暴れ、
光とぶつかり合う。
レンは叫んだ。
「カナタ!!
選べ!!」
「このまま……
一人で影に残るか!」
「それとも――
一緒に戻るか!!」
影の世界が、
大きく揺れた。
クロガネの姿が、
今にも消えそうになる。
■■決断の“直前”
カナタの手が、震えながら伸びる。
光へ。
そして――クロガネへ。
「……オレ……
まだ……」
言葉が、途切れる。
影と光が、
ぶつかり合い――
世界が、白く染まった。
次の瞬間、
すべてが静止した。
誰も、動けない。
レンの耳に、
ただ一言――
小さな声が届いた。
『……たすけて……』
それが、
誰の声だったのかは――
まだ、わからなかった。




