第18章 四神の試練
影主からの警告を受けた翌日。
三人は放課後、ユイに呼び出され、いつもとは違う場所に連れてこられていた。
「……ここ、学校じゃないよね?」
ハルカが不安そうに周囲を見回す。
そこは、街の中にひっそり残された小さな神社だった。
コンクリートのビルに囲まれているのに、
この場所だけ空気が澄んでいる。
「ここは“四神の気配”が集まりやすい場所よ」
ユイは鳥居の前で立ち止まった。
「影主と向き合う前に、
あなたたちはそれぞれ、自分の四神と“ちゃんと話す”必要がある」
「話す……?」
ミオが青玉を見つめる。
「これまでは、宝玉を通して力を借りていただけ。
でも次は――
四神の“性質”を理解しないといけない」
レンの胸が、どくんと鳴った。
(クロガネを助けるため……
本気で向き合う時が来たんだ)
■■四神の試練は“バラバラ”に始まる
「三人とも、同じ修行はしないわ」
「えっ?」
三人が同時に声を上げる。
「四神はそれぞれ性質が違う。
朱雀、青龍、白虎――
求める答えも違うの」
ユイは一人ずつ、静かに指をさした。
「レン。あなたは朱雀の試練」
「ミオ。あなたは青龍の試練」
「ハルカ。あなたは白虎の試練」
「べ、別々!?」
ハルカが目を丸くする。
「心配しないで。
同じ場所にいるけれど、見えるものが違うだけ」
ユイが手を合わせると、
神社の境内にやさしい光が広がった。
■■レン ――朱雀の試練「迷いを選べ」
レンの前に現れたのは、二つの道だった。
一つは、まっすぐで明るい道。
もう一つは、影に覆われた細い道。
『……選べ』
朱雀の声が、胸の奥に響く。
『迷わぬ道か。
迷いながら進む道か』
「……」
レンは唇をかみしめた。
楽な道を選べば、怖くない。
でも――クロガネがいるのは、きっと影の中だ。
「……オレは、迷う方を選ぶ」
『なぜだ』
「迷いがなきゃ……
誰かの不安にも、痛みにも気づけない」
影の道へ一歩踏み出した瞬間、
朱玉が熱く輝いた。
『よい。
朱雀は“覚悟を決める心”を好む』
道は消え、レンは境内に立っていた。
■■ミオ ――青龍の試練「すべてを聞け」
ミオの周囲には、無数の音が流れていた。
笑い声。
怒り声。
泣き声。
頭がくらくらする。
『……どれを選ぶ』
青龍の声は静かだった。
「え……選ぶ?」
『すべて聞くことはできぬ。
だが、背を向けることもできる』
ミオはぎゅっと青玉を握った。
「……全部、聞く」
『なぜ』
「だって……
聞かれなかった声が、影になるから……」
一瞬、音が止んだ。
そして、青玉がやさしく光る。
『青龍は“受け止める心”を選んだ』
音は静かに消え、ミオは息をついた。
■■ハルカ ――白虎の試練「恐れを認めよ」
ハルカの前には、大きな影が立ちはだかっていた。
足がすくむ。
「……こわい……」
『逃げるか』
白虎の低い声。
「……逃げたい」
正直な気持ちだった。
『ならば、逃げよ』
「……でも!」
ハルカは顔を上げた。
「怖いって思ってる自分を、置いていきたくない!」
影が、ふっと小さくなった。
『白虎は“恐れを認める強さ”を尊ぶ』
白玉が、まぶしく輝いた。
■■試練の終わりと、新しい力
光が消え、三人は再び境内に立っていた。
「……戻ってきた」
「夢……じゃないよね?」
ユイは三人の宝玉を見て、深くうなずいた。
「成功よ。
これであなたたちは、四神の性質を理解した」
レンは胸の奥に、前より強い“芯”を感じていた。
「これで……影主に近づける?」
「ええ。でも――」
ユイは少し表情を曇らせる。
「影主は“元・人間”よ」
「……え?」
「強い感情に飲まれ、
影の世界に取り込まれた存在。
だからこそ、クロガネもそこに縛られている」
三人は息をのんだ。
「影主を倒すだけじゃ、救えない。
向き合い、選ばせる必要がある」
レンは静かにうなずいた。
「……じゃあ、オレたちがやることは一つだ」
「うん」
「一緒に、連れ戻そう」
三つの宝玉が、同時に強く輝いた。
影主との対決は――
もう、すぐそこまで来ていた。




