第17章 影主への道しるべ
夜の校庭は、昼とはまるで別の顔をしていた。
街灯の光が届かない場所に、
影が濃く、深く、たまっている。
「なんか……この辺、昼間より広く感じない?」
ハルカがきょろきょろと周りを見る。
「影の世界が近づくと、距離の感覚がずれるの」
ユイが静かに説明した。
レンは宝玉を胸元に押さえながら、
昨日感じた“黒い音”を思い出していた。
(影主……
あいつが、クロガネの近くにいる)
■■影主への“ルート”を探す方法
「影主の領域へ行くには、“道しるべ”が必要よ」
「地図みたいなもの?」
ミオが小さく手を上げる。
「似てるけど、紙の地図じゃないわ。
影主は“感情の流れ”に道を作るの」
「感情……?」
レンが眉をひそめる。
「強い願い、不安、後悔……
そういった感情が、影の中で“道”になるの。
そしてあなたたちには――宝玉がある」
ユイは三人の宝玉を指さした。
「宝玉は四神とつながる器。
四神の力を“道しるべ”に変えることができるわ」
ミオが少し緊張した声で言う。
「でも……間違った道を作ったら……?」
「影主の領域は危険よ。
だから今日は“入口を見つけるだけ”。
中には入らない」
レンはホッと胸をなで下ろした。
(いきなり突っこむわけじゃないんだ……)
■■四神の力を“方向”に変える
三人は校庭の中央に立ち、宝玉を掲げた。
「まずは、それぞれの宝玉が感じる“影の流れ”を見つけて」
レンは目を閉じ、朱玉に意識を集中させる。
胸の奥が、じんわりと熱くなる。
(……あっちだ)
心が自然と引っぱられる方向があった。
「レンくん、右の方を見てるよ」
ミオが言う。
「朱玉は“決断の流れ”を示してるのね」
ユイがうなずく。
ミオは青玉をそっと持ち上げる。
「わたしのは……なんか、ぐるぐるしてる……」
「青玉は“気配の集まる場所”を教えてくれるわ」
ユイが説明する。
ハルカは白玉を顔の前で回しながら首をかしげた。
「白玉は……えっと……
あ、なんか……いやな感じが弱い方を教えてくれてる?」
ユイは思わず微笑んだ。
「ええ、大正解。
白玉は“危険の少ない道”を示すの」
「すごっ……
でも、三つとも方向バラバラじゃない?」
ハルカが苦笑する。
レンは少し考えたあと、言った。
「……じゃあ、重なるところを探そう」
■■道しるべが“光”になる
三人はゆっくり歩きながら、
宝玉の反応が強くなる場所を探した。
すると――
「ここ……」
「うん、ここだ……」
「なんか……ここ、変……」
三人が同時に足を止めた場所。
そこだけ影が妙に濃く、地面がひんやりしている。
三つの宝玉が、同時に淡く光った。
朱、青、白の光が重なり、
地面に細い光の線が浮かび上がる。
「これが……道しるべ?」
ミオが息をのむ。
「そう。
影主の領域へ続く“入口の方向”よ」
ユイは真剣な表情で答えた。
光の線は、校庭の端――
古いフェンスの向こうへと続いていた。
■■影主からの“警告”
そのときだった。
地面の影が、ぐらりと揺れた。
低く、重たい音が、空気を震わせる。
――これ以上、近づくな……
「……っ!」
ミオが息を止める。
ハルカはレンの袖をぎゅっとつかんだ。
「今の……影主の声……?」
ユイはうなずいた。
「ええ。
完全な姿じゃないけれど……
“警告”よ。これ以上探られたくないの」
レンは一歩前に出そうになり――
ユイに肩を押さえられた。
「今日はここまで。
これ以上進めば、影主が本気で動く」
光の線は、ゆっくりと地面に溶けて消えた。
残ったのは、重たい静けさだけ。
■■それでも進む決意
しばらく誰も声を出せなかった。
やがて、レンが口を開く。
「……影主は、オレたちが来るのを知ってる。
でも……それでも行く」
ミオは少し震えながらも、うなずいた。
「うん……怖いけど……
クロガネを置いていくほうが、もっと怖い」
ハルカはぐっと拳を握る。
「影主がなんだっての。
三人で力を合わせれば、なんとかなるよ!」
ユイは三人の決意を確かめるように見つめ、
静かに言った。
「なら、次は――
“影主に対抗する準備”を始めましょう」
三人の宝玉が、
夜の闇の中で、はっきりと輝いた。




