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幼馴染が実は吸血鬼らしい

「よし、入って良いぞ」

「お邪魔します」


 放課後、2人だけで真剣に話したいと言われ生蔵人見(なまくらひとみ)山田花子(やまだはなこ)を部屋に招待していた。


「それにしてもなんだ?改まって話したいなんて」

「今から説明するから。隣座って」


 花子は勝手を知るように人見のベッドに腰をかけ、自分の隣に座るように促した。人見も特に躊躇せずに隣に座る。


「………私たちの付き合いってもう随分長いわよね」

「6歳の頃からずっと一緒だからもう10年くらいか。時の速さを感じずにはいらないぜ」

「時の速さより感じて欲しい事があるんだけど……私といて何か感じた事はない?」

「冷たい視線とか?」

「今のような態度を取るからでしょ」

「針の筵に座ってる気分だ」

「言い過ぎよ。そこまでじゃないわ」

「寧ろ座ってみたい」

「変な告白をしなくて良い!本当に分からないの?」

「さっぱり分からん」


 人見の態度に花子は頭を抱えた。幼馴染としてずっと一緒にいるが、人見の勘が仕事をしている事を今まで見たことがない。


「あのね、落ち着いて聞いて欲しいんだけど———」


 花子が覚悟を決める為に大きく息を吸い込む。


「———私実は吸血鬼なのよ!!!!」

「……はい?」


 花子の言葉に人見は首を傾げる。

 吸血鬼。勿論存在としては知ってはいるが、残念ながら此処は異世界ではない。急に吸血鬼と言われても納得出来るはずがなかった。


「現に寝る時はドラキュラマットで寝るわよ」

「ほな吸血鬼か」


 ドラキュラマットとは刺身の下に敷いてあるアレであるが、そうと知らない人見は取り敢えず納得した。


「……と言うかこんなに一緒に過ごしてきてなんで分からないのよ」

「そうは言われてもな〜別に花子から吸血鬼要素なんて感じた事なかったし」

「………要素………でしょうが……」

「ん?なんて?」

「吸血鬼要素ありまくりでしょうが!!!!」


 花子が人見の耳元で大きな咆哮を上げる。


「まず私の見た目!どう思う?」

「……可愛らしいと思います?」

「違う!!私のこの髪と眼についてどう思ってるのかって聞いてるのよ!!」

「ウィッグとカラコン?」

「そんな訳ないでしょ!」


 花子が自身の髪と眼を指差しながら声を張り上げる。彼女の白髪は神々しく輝き、彼女の眼はルビィのような輝きを放っている。


「どう考えても吸血鬼でしょ」

「言われてみれば確かに……」


 滅茶苦茶吸血鬼の見た目であった。

 人見がその事実に肩を落とす。


「てっきり俺は花子がコスプレイヤーの卵かと」

「学校に白髪のウィッグと紅いカラコンをつける生徒なんている訳ないじゃない」

「そうだと思ってコスプレの衣装買い漁ってたのに……」

「例えそうだと思ってもコスプレの衣装は買い集めないで」


 花子が若干引き気味でツッコむ。もしかしたらこの部屋に自分用のコスプレが隠されていると思ったら気が気でなかった。


「あ、それと私の名前山田花子じゃないわよ」

「……マジで?」

「本当の名前はカーミラ・ヴァレンタイン」

「滅茶苦茶吸血鬼じゃん」

「冷静に考えて今のご時世山田花子なんて名前変じゃない」

「へ〜、でもカーミラ・ヴァレンタインって吸血鬼界の山田花子なんじゃ———」

「それ以上言ったら貴方の頭をこのまま潰すわよ」

「ストップストップ!!」

 

 花子改めカーミラが人見にアイアンクローをする。吸血鬼と明かしたらその力も隠す気はないらしい。

 アイアンクローから解放された人見はそっとカーミラから距離を取った。


「今更だけどこの世界って吸血鬼とかアリの世界線だったの?もしかして獣人とかもいる感じ?」

「そんな存在、異世界だけにしてほしいわ」


 そっくりそのままお返しします、と人見は言いたかったがアイアンクローをされたくなかったので黙った。


「お前の存在も十分異世界だろって思ってるでしょ」

「吸血鬼は読心術まであるのか!?」

「そんなわけないでしょ。でも引っかかったわね!」

「痛い!痛い!ちょっとミシミシ言ってるから!ほんとに無理だから!」


 部屋の中に人見の悲鳴が響く。数分後、カーミラの気が澄んでやっと人見の顔が解放された。


「花子お前———」

「カーミラって呼んで」

「カーミラお前どんな握力してるんだよ!」

「手でダイヤモンドが作れる」

「非常に分かりやすい説明をありがとう」


 つまり本気でやろうと思えば人見は即死である。


「ところで、なんか握力以外に特殊な能力とかあったりしないのか?蝙蝠になれるとか」

「特にそう言うのは……一つだけあったわ」

「お、やっぱり」

「ちょっとこっち向いて」


 カーミラが人見の顔を両手で掴むと、お互いの息遣いが分かる距離まで引き寄せる。


「おい何やって———」


 カーミラと人見の唇が触れる。時間としては一瞬だが体感で無限とも思えるような時間が流れて、カーミラがそっと唇を離した。


「………意外と恥ずかしわね」

「……そりゃそうでしょうよ」

「でも!こうすると相手が異性なら何でも言う事を聞いてくれるらしいわ」

「それ誰から聞いたんだ……?」

「?私のパパとママだけど」

「な、るほど……」


 多分吸血鬼の能力とか関係ないな、と人見は理解する。娘愛が生んだ大きな勘違いだった。


「あ、安心してね!今やったのが初めてだから」

「逆に安心出来なくなったよ……」


 今のがファーストキスだった事に人見の頬が火照る。


「どう?私の言う事聞きたくなった?」

「……聞きたくなりました」

「そっか……それなら良かったわ」


 カーミラが情熱的に燃え上がったその深紅の瞳で人見を見つめる。


「ねぇ人見。私の眷属になってくれない?」

「け、眷属?」

「そう、眷属。……私だけのものになって欲しいの」

「三食つく?」

「何を心配しているのよ。生活については困らせるつもりはないわ」

「……太陽光浴びた瞬間に死んだりしない?」

「私自身そんなに強い吸血鬼じゃないし問題ないはずよ」

「よし、一思いにやってくれ」

「……思い切り良すぎじゃないかしら?」


 人間を辞める事。大きな決断だったが、人見には迷いがなかった。


「別に人間に心残りなんて無いしな。俺にとってはカーミラと居られる方が良い」

「何それ……。プロポーズのつもり?」

「先にしたのはカミーラの方だろ。眷属って家族みたいなイメージだったんだけど。違ったか?」

「べっ、別に私はそんなつもりじゃッ!?」


 カミーラが頬を赤くして否定した。


「じゃあどう言うつもりだったんだよ」

「それは……奴隷よ!奴隷にしたいと思って!」

「まさかの奴隷ときましたか」

「毎日3時間私の足を舐めなさい!」

「俺的には構わないが足がふやけるだろそれ」

「じゃあ……じゃあ私とずっと一緒にいなさい」


 カーミラが人見の服をチョコンと摘んで命令する。


「喜んで、ご主人様」


 

 

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