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ep8.キメラかと思ったら市町村合併だった

森さんとやらが来たのだろう。

明らかに声の主が怒っていると分かる。



私は恐る恐る目を向ける。

そこに居たのは、毛玉だった。

脅かされただけか?

妖精はいたずらっぽいというイメージがあるが、非モテ毛玉もその例に漏れないのだろうか。




「オマエ、オレのこと分かんねぇの?」





また毛玉が喋った。

いや、喋ったのは非モテ毛玉では無い。

感覚的な話になってしまうが別の口が喋っているというか……

何となく別人な気がするのだ。人じゃないけど。

つまりアイツはジキルとハイド的なやつ?

キメラ毛玉?




「シカトキメるたァいいご身分だな?」




「すんません。」




思わず謝ってしまった。なんかガラが悪いというか乱暴というか。

森ってもっと母なるナンタラみたいなイメージなのだけど……。

でも木こりはオッサンのイメージ強いし合ってるのか?




「謝るのはいいがオマエ、オレのモン返せよ」




返せって、返すってことですかい?何も取ってませんが……




「何を返せばいいんです?」




「決まってんだろ!テメェが変な草置いた場所だよ!」




まさか百合のことを言ってるのか?

確かに人様の敷地の植生を勝手に弄るのは良くないことだろうが……




「あの白い花を抜けば良いのですか?」





「それでオレにあそこが返ってくんのならな?」





さっきから奪っただの返るだの、そっちの常識で喋らないで欲しい。それに花が生えたから奪われたってどういう事だ?



「とりあえず花を抜いてきますよ。それで問題が解決するなら良いです。」





気分はあまり良くないが、現地住民を怒らせるよりはマシだ。

私は墓に向かって歩き出す。




パサパサ




毛玉は毛を羽ばたかせて追いかけてくる。それ一個一個動くんだ。

正直に言ってクダクラゲみたいで気持ち悪い。

私の気持ちを知ってか知らずか毛玉は羽ばたくのをやめて転がり出した。

それはそれで西部劇の回転草みたいだ。

私は私でティン○ーベルなので人の事を言えた話では無い。




そんなこんなで訳の分からない2人組(3人組)は墓の前に着いた。



「これがオマエのタネか」




「何を仰ってるのかよく分かりませんがとりあえず抜きますよ。」




そう言って私はモリの目の前で百合を抜いて見せた。

意外にも球根が大きい。

毛玉は何も言わないので百合の根を眺めていると、




「返って来ないじゃねぇか!!!」




「そんなこと言われましてもあなたから何か奪った自覚無いですし……」




「もう辛抱ならん!オマエが本当にモリを返すまで痛めつけてやる!」




ちょっと、いくらなんでもそんなことってある?

こんな謎存在が言う痛めつけなんてロクなもんじゃ無さそうだ。

会話も成り立ちそうに無いし……



「やめなさい。」



「あァん?」



非モテ毛玉もといヤマがモリを静止する。

あれ?あなた()()()()()だっけ?




「あの者は嘘をついていない。それに森は言葉足らずすぎる。新参者には伝わらない。」




「チッ……」




よく分からんが助かった。

ついでに今でヤマ”さん”に話を聞いておこう。




「あの〜ヤマ?さん?私が奪ったと言うのはなんのことなんでしょうか?」





「オマエはオマエで分からないなら分からないと言え。」





「す、すみません」




説教されてしまった。

全く同じ体もとい舟に入っているのにここまで性格が違うとは……。



「そもそも、ワレワレの魂はモノに根付いてる。ヤマはヤマに、モリはモリに。ヤマとモリはどっちもだからどっちも。」



?分かるようで分からん。さっきは見直したがやっぱりダメかも知れない。



「あーあのだな、オレらは土地なんだ。んでもって土地はオレらなんだ。ヤマはそう言ってる。」



モリ!?

もしかしてお前以外と世話焼きなのか……?



「あーそれと、その、なんだ。さっきはすまなかったな。オマエ見た感じ、オレらみたいになったばっかなんだろ?たまに居るんだよ、最初から我が強い奴。」



えっ、モリさん!?

さっきまでの雰囲気はどこへやら。




「モリの兄貴!すると私はあなたの一部を奪ったっていうのは、土地にある何かを奪ってしまったってことですか?」



心当たりはある。あれだけ水やら炎やらでめちゃくちゃにしてしまったのだ。森そのものが怒るのも納得だ。



「あ、兄貴だあ?へへっ、誰がお前の兄貴だいコノヤロ。それとお前が奪ったのは、土地そのものだ。といってもオレもどうやったのかよく分からないんだけどな。お前も分かってないんだろ?」




照れてるのはどうでもいいとして、土地を奪うというのは森が森ではなく私の物になったということか?

というか




「それじゃあなんでヤマさんとモリの兄貴は一緒の体……舟に入ってるんですか?」



「それは舟がふた「要は土地が俺たち山だし森〜って思ってんだよ。」遮らな「オレたちは土地だが、土地は土地のものでもあるんだ。分かりにくいだろうが、そういうものなんだ。だからどれだけオレたちの物になっても土地のものなんだ。」…………つまり魂は普通重なるものなのだ……」




愉快な奴らだこと。

まあ何となく話は分かった。

「話を被せるな」

A町とB市が合併してB市A町になるようなもんだろう。

ただ、土地の境界が何なのか、「モリが先に被せた」もしかしたら私たちと同種の存在なのかもしれないし、「お前の説明が下手だからだ!」それともまた別のシステムなのかもしれない。

「なんでそんな酷いことを言うのだ……大体モリは……」

謎が解決しても謎ばかりが増えていく。




「それで、結局私はどうすれば……」




「「今それどころでは(じゃ)無い!!」」

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