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ep5.ワレハ地球人ダ




あれから数日、私は相変わらず煤けた広場の真ん中にいた。




ザリ ザリ




そこでただ、穴を掘っていた。

白と赤紫の手に平べったい石を握りしめ、それを地面に何度も突き立て、穴を掘っていた。




別にまた誰か殺した訳でも無い、私は学習能力がある。


落とし穴を作ってるわけでも無い。

誰かを落とす気も無いし、動物を捕まえる気も無い。



どうやら今の体は空腹や喉の渇きを感じないようなのだ。

その証拠に、ここに来てから10日程経っているのに私は一度も食事や水分補給を行っていない。



まともな人間では無い。

というか、普通の人間は炎が体をすり抜けたりしない。

炎に包まれて生還することも無い。

魔法としか言い様の無い超常現象を起こすこともない。


私は自分がなんなのかも分からず、自分探しの旅に出ようとした(モラトリアムだね)。




しかし、第一村人さんの墓前に揺れるユリを見て、せめてこの花が枯れるまではここに居ようと思ったのだ。




少しでも花が綺麗に咲き続けるように、水をやろうと思ったのだ。

ここは乾ききっているから。

だから穴を掘っている。

こんな非効率的な方法で。



魔法(仮)を使えば済むと思われるだろう。

最初は私もそうしようと思った。




しかしいざ水球をイメージし、念じようとするとあの光景がフラッシュバックして集中が切れてしまう。



だから雨水を貯める為に穴を作ろうという訳だ。

ちなみに一度目の雨の時は直ぐに地面に染み込んでしまい失敗となった。



とにかく、私は水球を出す事が出来ないのだ。

逆に風なんかはガンガン吹かせ放題である。



───ビュオォッ



今だって煤を退けるのために風を吹かせている。慣れてしまえばまるで体の一部みたいに扱えてしまう。



とまあそういう訳なのでこの数日は今の体に慣れながらここで過ごしている訳である。

ちなみに雨の日はもちろん寒かったので、早いとこ屋根付きの住まいも欲しいとこである。

我慢出来るから良いんだけどね。




この数日間で新たにいくつかの事が分かった。


まず、この魔法(仮)は想像出来ることは大体出来てしまう、ということ。

冗談半分で布団を作るイメージをしたらそっくりそのまま白い敷布団が出てきてしまった。

嫌な予感がして周りを確認したが、今度は鳥の羽を奪ったりはしていなかった。



これが2つ目に分かった事に繋がる。


私は最初、この魔法(仮)は物理的に周囲のものに干渉するのだと思っていた(だとしても風を吹かせるのと水を集めるのと熱を奪うのとは全て訳が違うだろうが)。

しかし、百合を出した時と布団を出した時は、周囲から何も奪わなかった。もちろん見えないだけで地中やら何やらから奪ったものの可能性もある。


しかし私はもっと別の物から奪ったのだと考えている。

この2回だけに共通して、私は体に脱力感を覚えていたのだ。

ともすればホッとするような、心地よい脱力感が伴っていた。


このことから私は、事象に干渉する魔法1(仮)と、自身の体内の何らかのエネルギーによって何かを生み出す魔法2(仮)があると考えた。



そしてこの2つにはある程度関係がある気がする。

例えば、魔法1(仮)で地面に干渉しようとする。

するとほんの少しの脱力感と共に10cm程の地面が板のように持ち上がる。

対して例えば魔法2(仮)で風を起こそうとすると、ほとんど脱力感を感じず魔法1(仮)と同レベルの風を吹かせることが出来る。



難しいことはよく分からないが、双方共に原理は一緒で、持ってくる場所が違うから燃費に差があるのでは無いだろうか。


ただ何となく、どちらも何かしらの力を使っていると分かると使用に不安を覚えてしまう。

エネルギーだとして回復するのか。

本当に生み出しているだけなのか。



また、魔法2(仮)で水を出そうともしたが、魔法1(仮)と同様にあの光景がフラッシュバックしてしまい、行使することが出来なかった。




そんなこんなで考えもまとまらないまま今日に至る。






そういえば、私の見た目は今どうなっているのだろう。

手がある事は分かっている。

血が通っているようには見えない透き通った真っ白の手。赤紫の火傷跡を鎖のように纏っている腕。

また、手と同様に白と赤紫色を纏った足。

泌尿器や生殖器、臍などの器官を確認出来ない板のような腹。

全体的に細めではあるが骨ばっている訳でも無い。

目線の高さは日本に居た時と変わっていないと思う。



ここまでは良いが、顔や髪がどうなっているのかが分からない。

今までの自分の顔すら分からないのだ、ここではもっと分からないだろう。

目は大きい気がする。

山火事の時に感じた痛みがそれを物語っていた。



というか火傷跡が残ってるくらいだ、髪も燃え尽きてるんじゃなかろうか……。


真っ白いハゲは嫌だ!いくらなんでもゆでたまごすぎる!




水溜まりが出来た時にでも確認するしかあるまい。

それかもしくは布団のように鏡でも出してみるか……





───。





!!!


耳でも頭でも無い、どこかで声を聞いた。

もしくは見た。

聞き取ることは出来なかったが、確かにその声の主はこう言ったと分かった。




「だれ?」

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